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Colombiana /
Em Busca de Vingança

Olivier Megatons

USA/F 2011 108 Min. 劇映画

出演者

Beto Benites
(Don Luis - 麻薬の大ボス、コロンビア在住)

Jordi Molla
(Marco - ドン・ルイスの子分)

Jesse Borrego
(Fabio - カタリアの父親)

Cynthia Addai-Robinson
(Alicia - カタリアの母親)

Zoe Saldana
(Cataleya Restrepo - 小学生)

Amandla Stenberg
(Cat - 10 - 成人してからのカタリア)

Cliff Curtis
(Emilio Restrepo - カタリアの叔父、シカゴ在住)

Michael Vartan
(Danny Delanay - 芸術家、カタリアの恋人)

Lennie James
(Ross - FBI)

Callum Blue
(Steven Richard - FBI に情報を渡さない CIA)

Ofelia Medina (カタリヤの祖母)

Sam Douglas
(William Woogard - 大金をごまかした犯罪者)

Affif Ben Badra
(Genarro Rizzo - コロンビアの犯罪者、米国にいる)

Graham McTavish
(Warren - リッツォを連行してきたマーシャル)

見た時期:2011年1月

★ ポートマンが降りた

背景にリュック・ベソンが絡んでいます。脚本はベソン。元々はナタリー・ポートマンを使って、レオンの続編を作る企画だった様子。なのでタイトルもマチルダと予定されていたそうです。ところがポートマンがドタキャン。監督の他の作品を見て不安を感じたそうです。加えて会社同士の争奪戦が起き、企画は破談。

ブラック・スワンを見ていない私としては、ポートマンごときに腕を信用しないと言われたメガトン監督が気の毒ですが、類似の新企画は技術的な面(撮影、アクション、俳優、ロケなど)ではポートマンが降りたことを悔やむのではないかと思えるほどの出来です。美的ですらあります。

★ 企画のやり直し − プロットに穴

文句が出るのは筋の方。レオンの要素を取り入れつつも、レオンの続編ではなくなったため、筋の変更は仕方ありません。そうなるといくつか矛盾が生じ、例えば マチルダが両親を失ったいきさつ、レオンに出会ったいきさつは一切使えなくなります。新たに似たような境遇の少女カタリアを作らなければならなくなります。で、やってみましたが、プロットに穴が生じます。

成人した確信犯マチルダにロマンスの要素を加えようとしたのもちょっと無理があります。加えてもいいですが、唐突に見えないようにうまく筋に溶け込ませてもらわないと。どうもロマンスから綻びがが生じるというプロットだけが先行し、感情の描写がうまく溶け込まなかったようです。そのためここまで鍛えられたプロのヒット・ウーマンという面と、脇が甘くなり抜けている面が同じ人物の中に入っていて、やや見ていると消化不良を起こしてしまいます。元々脇が甘い人物ならこういうこともありと納得しますが、それにしては他があまりにも完璧。

主人公の経歴の一部は先日ご紹介したハンナと共通するところもあり、年端も行かない子供をキラー・マシーンに仕立て上げます。他方ハンナと全く違い、レオンのマチルダと共通するのは本人の意思でヒット・ウーマンになることを選び、喜んで訓練をしている点。ここはまあ両親を目の前で殺されるという事情を見るに、ストーリー矛盾はありません。

矛盾がその場でぱっと出ず、徐々に胃の中で醸成されていくのは、家族関係。両親を失った後、父親が死の直前に娘にしっかり言い聞かせた通りにして、米国の叔父の所へ転がり込みます。まだ小学生のカタリアは「すぐに殺しを教えろ」と叔父に迫りますが、叔父からは「きちんとした判断力を養うためにまずは普通の学校へ行け」と言われます。納得したカタリアはまず学校に行き、ティーンになってから殺しの訓練を叔父から手ほどきしてもらいます。そして立派なキラーに成長。コロンビア人の役ですが、エチオピア近辺のタイプの体系の女性で、非常に優雅です。それもそのはず、後半を演じている女優は元々ダンサー。

叔父はカタリアの復讐心を良く理解していますが、1つにはプロのヒット・ウーマンとしての振る舞いを要求、もう1つは家族の1人として非常に彼女の行動を心配しています。ここがカタリアのあまりの完璧な仕事ぶりのため観客の頭に矛盾を生み出します。あそこまできっちりした仕事ができるなら、変に情にほだされるわけもないし、感情が高まって危険が見えなくなることもないはず。ところが彼女が行く所死体の山。新聞に報道されてしまいます。この部分、描写を変えればすっと頭に入ったのか、元々組み合わせるのが無理な2つの性格を1人の人間の中に描いてしまったのかまだ判断がつきません。この点だけを取ると、ジェーソン・ステイサムのメカニックの方が、なぜあれほど完璧な孤高のヒットマンが、相棒を採用し、結果ドジを踏むのかは良く説明されています。

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まずはコロンビアの首都の様子。欧米の景色を見慣れているとびっくりするような町です。そこは家族が幸せに住むにはあまりにも麻薬抗争が多く、主人公カタリアもその犠牲になってしまいます。麻薬の大ボスの一の子分、ボスのやばい仕事を片付けていたファビオがカタリアの父親で、裏切りを理由に子分ごと粛清されてしまいます。出入りの直前「危ない」と悟ったファビオはカタリアに今後の事をしっかり言い聞かせて死んで行きます。母親も殉死。なにしろ1時間しか時間の余裕がありませんでした。

頭のいいカタリアは、どうにか逃げおおせ、アメリカ大使館を通じて、米国移住も決まり、入国許可が下りたとたんにトンずらして叔父エミリオの所へ転がり込みます。すぐ「殺し屋になりたい」と言ったカタリアに、「まずはちゃんと学校へ行け」と言う叔父。言われた通り学校に行き、その後殺しの技術を完璧にマスター。エミリオが周旋してくれる殺しの仕事をこなすまでに成長します。仕事は必ず1人で片付けます。

年頃の娘カタリアは一仕事終わると恋人の画家の所へ。しかし身元も本名も明かさず、外出して映画を見たり、レストランへ行くことはまったくありません。恋人は徐々に不満を抱き始めます。

カタリアは本職の依頼された殺しの他に、時々両親殺しの復讐を始めます。あれから15年が経っており、ニューオルリンズに移住して来た大ボスのドン・ルイスを最終目標として狙っています。そこに至るまでにいくつもの殺人事件を起こし、新聞に出るような事件にしてしまいます。それが FBI の目を引いてしまい、ここから彼女の人生が狂い始めます。ここでも手口はジェーソン・ステイサムのメカニックの方が巧みです。新人子分がドジでうまく行かなかったとはいえ、元々は毒殺なども手口の1つに入れてあり、できるだけ捜査当局の目を引かないように考えてあります。もっともカレリアは堂々と殺して、それをドン・ルイス宛のメッセージとしている面があるので、ばれた方が良かったのかも知れませんが、ここで冷静な頭を持っていれば、妙なメッセージ無しでも次々ドン・ルイスの舎弟が死んで行けば十分ドン・ルイスを震え上がらせることはできたと思います。

ドン・ルイスのアメリカ移住を許可するに当たって、CIA はドン・ルイスにアメリカ国内でも多少の麻薬取引はお目こぼしし、代わりにシンジケートの情報を提供するということで取引が成立しています。多少の取引と言っても、ドン・ルイスがそんなに遠慮しして小さな取引で終わるはずはありません。かなり羽振りはいいです。

この CIA は15年前以上からドン・ルイスとは顔見知りで、15年後カレリアの連続殺人を追う FBI が情報提供を求めても、そっぽを向きます。なので FBI の捜査は進みませんが、それでもかなり捜査の範囲は狭まり、先入観から犯人は男だと思っていたのが、女だということもばれています。

FBI にかなり詰め寄られた CIA はドン・ルイスを訪れ、「やったのがお前で無いなら、自分で犯人を突き止めろ」と言います。FBI は現場に残されたカタリアとうい花の絵に注目。やがてこの花がカタリアの故郷にしか生息していないことまで突き止めます。

★ 似て非なる作品

後半は FBI とカタリアの追いかけっこになります。ドン・ルイスをどうしても仕留めたいと思いつめた結果尻尾をつかまれることにもなり、恋人から情報が FBI にもれてしまいます。このあたりから話が軽くなり、レオンに比べると見劣りがします。ポートマンが出て予定通りに行けば、違ったストーリーになっていたと思われ、 Colombianaレオンの続編とみなすことはできません。レオンをヒントにした亜流と言うべきでしょう。私はレオン以外のポートマンがあまり好きではないので、是非ベソン・ポートマンでレオンの続編が見たいと言うわけではありません。こちらはあまり有名でない俳優のアンサンブルが良く、アクションもベソンの関わる他の作品を思わせる楽しさがあり、美学も感じられるので、大ヒットのA級作品とは違いますが、満足しました。

ストーリー運びからすると、この続編を作った場合さらに軽い話にならざるを得ませんが、この作品は見て損をしたという印象ではありませんでした。

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