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ミッシング ID /
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Abduction /
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Identidad secreta /
Identité secrète /
Enlevèment /
Identidade Secreta /
Sem Saída /
Abduction - Riprenditi la tua vita

John Singleton

USA 2011 106 Min. 劇映画

出演者

Taylor Lautner
(Nathan/Steven Price - 高校生)

Jason Isaacs
(Kevin - 父親)

Maria Bello
(Mara - 母親)

Dermot Mulroney
(Martin Price - 腕利きのエージェント)

Elisabeth Röhm
(Lora Price - マーティンの妻)

Lily Collins
(Karen - 高校生、向かいに住んでいるネイサンの幼馴染)

Allen Williamson
(Billy - カレンのボーイフレンド)

Denzel Whitaker
(Gilly - ネイサンの親友)

Sigourney Weaver
(Bennett - 心理分析医)

Alfred Molina
(Burton - CIA)

Michael Nyqvist
(Kozlow - ロシアのエージェント)

Radick Cembrzynski
(コツロフの手下)

見た時期:2012年4月

要注意: ネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

Abduction などと言う物騒な原題だったので、日本では《失われたアイデンティティー》といった風に変えたようです。Abduction という言葉は当分の間特別に取っておくのがいいと思います。そして筋を追って行くと実は現状は Abduction とは言えず、むしろ邦題の方がストーリーに近いのではないかとも思えます。

★ 期待が外れた

割引で3本借りた DVD の中の1本で、実は1番期待していなかった作品です。ところが見てみると1番良かったです。期待が悪い方向に外れたのはセットアップThe Guard。 良い方向に外れたのがミッシング ID

正直なところ主演の青年俳優の顔があまり好きなタイプでなく、冒頭若者の無軌道な行動、つまらなそうなパーティーが出て来るので、始まっても暫くは期待度ゼロ。

ところがここはディア・ハンターの結婚式のシーンのように、いかに平凡な日常生活を送っていたかを強調するためのシーンだったのです。何しろそこが終わると急転直下、アクションとミステリーのジェットコースター状態に飛び込みます。

★ あらすじ

冒頭危ない車の走らせ方をする無軌道なティーンエージャーが数人登場。向かった先は高校生が親に内緒で催すハウス・パーティー。ネイサンはしたたか飲んで次の日芝生に裸で寝ているという体たらく。そこへ「トレーニングだ」と言う父親ケビンが乗り込んで来て息子を家に連れ帰り、ボクシングの練習。

ちょっと厳し過ぎる父親と取っ組み合いで喧嘩のようなトレーニングが続き、母親マーラからは家を抜け出して徹夜で飲んだくれていたため、謹慎を言いつかります。「なるほど、ちょうど反抗期で活発な青春時代を送っている息子が出て来るのだから、Trespass の一人娘みたいな一人息子か」と思っていると、間もなく全く違う展開になります。

向かいに住んでいるかわい子ちゃんカレンがちょうど折り良くボーイフレンドのビリーと喧嘩別れ。ネイサンは虎視眈々と彼女を狙っていた甲斐あり、「宿題を一緒にやれ」と学校の先生から仰せつかったことをこれ幸いと大喜び。初の打ち合わせでまじめそうなカレンがネイサンを訪ねて来ます。

ところがせっかくルンルンの数日になりそうなのが、一瞬にして状況が変わります。高校の宿題のテーマとして手をつけ始めたのがインターネットの誘拐された子供を捜すサイト。子供の頃の写真を使って10年後、15年後子供がどういう顔に変化するかを予測する写真が載っています。そこでネイサンの写真を発見。最初は偶然だろうと思っていた2人。しかしネイサンは地下室へ行って、子供の時着ていたシャツを取り出し唖然。写真に映っているシャツと染みに至るまでそっくり。と言うことは「僕は誘拐されて来たんだ・・・」。

その夜これまで母親だと思っていたマーラと話をする機会があり、マーラから「実子ではない」と明言されます。ネイサンに「申し訳ない」とは言いつつやましい様子は無く、「養子に貰われてきたのかも知れない・・・」という余地が残ります。ところがそれ以上ゆっくり話している暇はありませんでした。

外国から誘拐された子供のサイトを操っていたロシアのエージェントが瞬く間にネイサンの居所を察知。早速ロンドンからアメリカに乗り込んで来ます。同時に CIA も活動開始。ネイサンの家には2人のエージェント風の男が「お宅の息子に用がある」と公僕を装って押し入って来ます。危険を察知した細身のマーラは馬鹿力を発揮して恰幅のいい男たちと格闘。「えええっ、これが高校生の母親の主婦?」と呆れるような強さを発揮しますが、相手が2人では勝ち目は無く、あっけなく戦死。

異常な物音を聞きつけて来たのは2階にいたネイサン、一旦引き上げて、すぐまた来ることになっていたカレン、駐車場にいた父親のケビン。父親はマーラの死を確認するとネイサンに「すぐ逃げろ!」と叫び、自分は男と格闘。ネイサンはピストルを手に賊と戦う父親を見てただ事ではないと察し、ちょうど居合わせたカレンと共に何とかしようと思います。しかし父親も討ち死に。頭に来たネイサンは残った1人を撲殺しようとしますが、直前に男が「ここに爆弾を仕掛けた」とのたまう。残り時間は数秒。とっさにカレンを連れてプールに飛び込んだため爆風にやられずに助かります。ここまでにすでにかなりのアクション・シーンがあります。

一夜にしてマーラが実母で無いと聞かされ、直後に両親とされていた2人を失い、家は爆発と火災で瓦礫と化し滅茶苦茶。ネイサンとカレンはヘルメットもかぶらずオートバイに乗って一目散に逃げます。とは言っても行くあてがありません。取り敢えずは負傷したカレンを病院に。

ここまで見ると冒頭の平凡な青春謳歌シーンが生きて来ます。ネイサンは両親が命がけでネイサンを救ってくれているので、誘拐犯と考えるのは筋が違うと考え始めます。襲いに来た男たちがおり、家に爆弾まで仕掛けているので、父親がトレーニングだと厳しく言っていたのはこういう時に備えていたのだと考えるぐらいの頭はありました。一夜にしてガラッと家族関係が変わり動転しながらも謎が残されている事はしっかり理解。

カレンの治療中にネイサンが両親が殺されたことと家が爆発したことを警察に届けようとしたところ、その電話回線は CIA に迂回されてしまいます。相手はネイサンの名前まで知っています。「なんじゃ、これは」というのでネイサンは慌てて病院を去ろうとします。しかしすでに追っ手がついていました。

そこへなぜか風船をたくさん持ったネイサンの心理分析医ベネットが登場。監視カメラに顔が見えないようにしながらネイサンに近づき、着いて来るように言います。ネイサンが「カレン抜きでは嫌だ」とがんばったので2人はカレンを連れに行きますが、追っ手に気づかれそうになり、そこから怒涛のカーチェース。

一体なぜここに自分の精神分析医が現われたのかも分からず、戸惑うばかりのネイサン。彼女はこれまで若さに任せてすぐ切れそうになるネイサンに物事を冷静に見るように指導していました。

今は追っ手をまくのが大切。ベネットはネイサンに最低限必要な情報、特に隠れることのできる場所を教え、ネイサンとカレンを車から走行中に追い出し、自分は追っ手を引きずってそのまま突っ走って行きました。車から転がり落ちたネイサンとカレンは遠くでベネットの車が爆発するのを見ます。

遅くともこの時点までに「やばっ、命がかかっている」と察した2人はベネットの言うアドレスへ。そこは高級アパートで、豪華な部屋。金も十分あり、車もガレージに用意されています。そして残されていた写真からアパートの持ち主がネイサンの実の親ではないかということになります。

不用意にもカレンが叔父に安否を知らせようとして携帯を使ったため即座にロシアのエージェントと CIA に居所を察知され、またしても2人は逃亡を余儀なくされます。目指すは家にあった写真の住所。そこにネイサンの母親が住んでいると考えますが、行ってみるとそこは墓場。母親は死んでいました。誰かが花を供えているのに気づき、墓場の受付に花の贈り主を教えてもらいます。次に目指すはその住所。他の州です。

遠いのですが、飛行機を使うと監視カメラからばれるので鉄道を使い、高校の友達に頼んで偽の ID カードを用意してもらいます。しかしすでにロシアのエージェントはそれも突き止め同じ列車に乗り込んで来ます。2人は襲われ、何とか撃退するものの鉄道から逃げざるを得なくなります。しかしヘリコプターまで動員して追って来た CIA に捕まってしまいます。ところが CIA は2人を殺そうとはしない。

中のバートンという男がネイサンに事の次第を説明。ネイサンは本当は腕利き CIA エージェントの子供。父親のマーティンはある時、ロシアのエージェントからアメリカで国を売っている人物のリストを盗み出すことに成功。ロシアのエージェントが暗躍しているのはそのリストを取り戻すため。ネイサンの母親は殺されており(ネイサンは前後の事情が分からないままそのシーンだけ記憶していて、悪夢に悩まされ、そのために精神分析医にかかっていた・・・はずでした)、危険を感じた実父はネイサンを友人に託して表舞台から姿を消していました。託された友人がマーラとケビンで、ずっと実子のように育てていました。ケビンがネイサンに厳しくボクシングを教えていたのは何かあった時に備えての準備。そう言えば養父もネイサンに「ただ相手を殴るのではなく、冷静に状況を見ながら戦え」と言っていました。血はつながっていなくても、僕を守ろうとしたんだ・・・クスン。

察しのいいネイサンはそのリストの中にバートンの名前もあるのではないかと考え始めます。今皆がネイサンを追っているのは、ネイサン → 実父マーティン → 売国奴リストとたどるため。気が遠くなるような長い時間をかけロシアのエージェントはネイサン、マーティンを探し続け、罠の1つが誘拐された子供のサイト。ネイサンはまんまとその罠に引っかかったことになります。

ベネットから「やたら人を信じるな」と注意されていたネイサンはバートンに警戒心を抱きます。ちょうどその折りロシアのエージェントが近づき、CIA の見張りを次々倒して行きます。ネイサンがアパートから持ち出して来た実父の携帯に売国奴リストが入っているので、ネイサンはその場からトンズラ。車で逃亡中にロシアのエージェントから電話が。「リストを渡さなければこの先もネイサンの大切にしている人を次々殺すぞ」と脅しが。ネイサンは怖じ気ず、自分の方から会う場所を指定します。

リストを渡してもタダでは納得しないつもりのネイサン。一計を案じ、またもや学校の友人を呼び出し野球の観戦チケットを用意してもらいます。指定の場所に相手が現われる前にカレンがばっちり男の写真を撮影。

予定の席に現われたのはネイサンの母親を殺した男。野球を見てもさっぱり意味の分からない男は観客が沸いてもなぜか分からなかったりし、映画の観客の笑いを誘います。とは言え、深刻な話の最中の2人。ネイサンは男を脅すために持っていたピストルを逆に奪われてしまいます。それでもネイサンはリストを渡すのを拒み、改めて追いかけ合いになります。会場にはネイサン、ロシアのエージェント、遅れて駆けつけた CIA、駐車場にはカレンと学校の友達、そしてどこからか父親マーチンが電話をかけて来ます。

マーチンはネイサンに広場へ逃げろと指示。ネイサンに着いて来たロシアのエージェントを遠くから撃ち取ります。お父ちゃんは優秀なエージェントだっただけでなく、優秀なスナイパーだったんだ・・・。悪漢は死に、残ったのはネイサンたちと CIA。しかしまだ問題が残っています。バートンはネイサンにリストを手渡すように言いますが、バートンの名前もリストにあると察したネイサン。そこへ折り良くバートンの上司が現われ、バートンはお縄。ようやくネイサンの危険は去ります。

しかし家を失くし、育ての親を亡くし、実母はずっと前に死に、実父は姿を現わさない・・・どうしよう・・・としょげていたら、現われたのが精神分析医。「高校を卒業するまでうちに住みなさい」だって。都合のいいハッピーエンドですが、間がスリル満点だったので、こういう時は納まるべき所に納まって終わってくれる方が良いです。

若者向きご都合主義のハッピーエンド映画ですが、隅々に教育的配慮があり、たまにはこういう優等生的な作品もいいでしょう。

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