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The God / A Deusa

Konstantin Bronzit

Russland 2004 4 Min. アニメ

登場キャラクター

蜘蛛

阿修羅像

見た時期:2012年7月

★ 阿修羅のごとく

主要な出演キャラクターは興福寺の阿修羅像によく似た守護神の像と、虫2匹。興福寺の像と違うのは炎の輪に取り囲まれて、一本足で立っていることと、顔が1つだという点。炎の輪と体のポジションだけを見るとシバ像と思えないこともありません。ただ、シバですと片手に武器を持っていなければならず、もう1本の手には太鼓を持っており、目は3つあるはず。時には四面四臂になることもあるようです。私はこういった仏像や神の像に詳しくないので、アニメの中でどうなっているかを書きます。

The God の像は
 ・ シバ像のような炎の輪の中に立っている。
 ・ 足は2本で、片足で立っている。
 ・ 手は3組、6本
 ・ 顔は1面。日本にある仏像や神の像によくある穏やかな表情。調和の取れたイケメン。
 ・ 目の数も含み顔は普通。
 ・ 手には何も持っていない。
 ・ 手足、指は細め。
 ・ 頭にはヘルメットのような冠をかぶっている。
 ・ 金属製で、動くと鈍い音がする。
 ・ 埃をかぶっている。
 ・ 手も足も動かせるが足は4分中半分ぐらいは動かさない。
 ・ 後半足でカンフーのような動きをする。
 ・ 手の動きは虫の動きより若干遅い。
 ・ 悲鳴を上げることができる。
 ・ ぶつかると痛みを感じるらしく、顔をゆがめる。
 ・ 片足でジャンプができる。

★ 蝿のごとく

4分中ほとんどの間ブーンと音を立てながら動く虫。私には蝿に見えます。阿修羅像は最後虫との戦いに敗れ、炎の輪を残して墜落。阿修羅像のいなくなった炎の輪に蜘蛛が巣を張ります。どうやらその蜘蛛の作った巣に蝿がつかまって、蜘蛛に食べられてしまのが結末のようです。

★ 宗教観

監督はロシア人で、東京オリンピックの直後に生まれ、ソ連時代に美術学校を卒業。人形を使ったアニメーションの世界に入り、教育アニメを制作しているので、キャリアだけを見るとまるでソ連版ジム・ヘンソンのようです。監督デビューはベルリンの壁が崩れる直前。美術科卒業の少し後です。まだソ連という国は存続していました。ソ連崩壊後ロシアで引き続き仕事を続けながら、脚本の書き方や演出を勉強。着実に作品数を増やしています。

子供時代も学校を卒業してからも暫くはソ連だったためか宗教観がドライで、神の像を主題に使ってしまうようです。自分がそれほど信心深くなくてもどこかの国で神や仏とされているキャラクターをおちょくるのに私ならためらいを感じますが、そういう点は元東側の人はわりとあっさりクリアしてしまえるようです。

★ あっさりしたアイディア - 少ないことはいいことだ

宗教テーマに片目をつぶるとおもしろい作品です。

登場キャラクターは2者に絞られ、話は非常に単純。それでいて観客はすぐ阿修羅像の気持ちに入って行け、くすりと笑いが漏れるような作りになっています。もし自分が昼寝をしていて、周囲に1匹蝿が飛び回ったら、神経に障るだろうなあなどと身近な話に置き換え易いです。

ただ単純に阿修羅像は蝿が邪魔。追い払いたい。それで普段は動かない自分の体を色々な方向に折り曲げたり伸ばしたり苦労しながら、叩き潰そうとします。悲しいかな普段体を動かし慣れていないため、一瞬遅い。繊細な指では面積が狭過ぎて蝿にすり抜けられてしまいます。手のひらで叩こうと思いつき、6つの手で集中的に襲おうと思っても、蝿の逃げ足が速い。いたちごっこの末負けるのは阿修羅。私の解釈に間違いが無ければ、そうやって勝ち残った蝿も蜘蛛に食われてしまう・・・。

ロシアの作品、しかもロシア崩壊前に教育を受けた監督の作品なので、深読みすることができるかも知れません。無理して深読みすると、宗教はもう埃をかぶった存在。動きが鈍く、何をやっても一瞬遅い。小回りが利かず、自由に大きく動くこともできない。それが小さな事(例えば蝿)で立場を失い、転落してしまう・・・大きな神とも仰がれる像を転落に追いやった蝿も、まもなく蜘蛛の巣に引っかかって食べられてしまう・・・なんて解釈を狙ったのでしょうか。もしかしてと作者は古いソ連の体質をこういう形で表わしたのかも知れません。宗教にしろ、政治にしろ、長く続いたものはいつか機能不全に陥るという深読みもできるのかも知れません。私は見て、アハハと笑い、その後で、よその国の神様をあんなふうにおちょくったらバチが当たるよ・・・などと単純な解釈をしました。

ユーチューブにタイトルか監督名で検索を入れるとすぐ見つかります。

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