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007 スカイフォール /
Skyfall /
Sky Fall /
007 - Skyfall /
007 - Operação Skyfall /
007: Operación Skyfall

Sam Mendes

UK/USA 2012 143 Min. 劇映画

出演者

Daniel Craig
(James Bond - MI6 のエージェント)

Judi Dench
(M - ボンドの直接の上司)

Ralph Fiennes
(Gareth Mallory - 諜報保安委員会の議長)

Naomie Harris
(Eve Moneypenny - ボンドの相棒)

Ben Whishaw
(Q - 備品係)

Rory Kinnear
(Bill Tanner - MI6、特に M のアドバイザー)

Ian Bonar
(MI6の技術担当)

Ola Rapace
(Patrice - フランス人傭兵)

Javier Bardem
(Raoul Silva/Tjago Rodriguez - サイバー・テロリスト、香港勤務の MI6 エージェント、M の元部下でスパイ交換に使われる)

Berenice Lim Marlohe
(Sévérine - マカオの売春婦、セヴリンに救われ、現在はセヴリンの命令で古美術商の所に出入りしている)

Dave Wong (古美術商)

Albert Finney
(Kincade - ボンド家の長年の知人)

Tonia Sotiropoulou
(失踪中のボンドの恋人)

Helen McCrory
(Clair Dowar - 審問会の国会議員)

見た時期:2012年11月

要注意: ネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ 本編が始まる前

ベルリン(ということはドイツ)で2番目に設備の整った映画館のクーポンを貰ったため、これから何ヶ月か映画がただ、あるいはただ同様の値段で見られることになりました。実はこのクーポンは500円ぐらいに相当するので、映画の日に行くと差額150円ほどを払ってロードショーが見られる事になっていました。ところが番狂わせ。クーポンを渡したら、そのまま入場券を手渡され、差額の請求が無かったのです。それに気づいてすぐトンズラはせず、暫くそこにいたのですが、「あの、もしもし」と言われる事もなく、「楽しんでください」と言われたので、手違いで計算間違いをしたのではなさそう。その日は映画の日だったのですが、作品は140分を超える長さ。なので超過料金を要求されてもおかしくなかったのですが。行って見るとホールはガラガラ。私の席の列に数人、後ろに数人、前に誰も座っていない状態。この映画館で1番人の入るホールだったのですが。クーポンならある程度誰かがお金を払っているので、四の五の言わないということなのでしょうか。良かった。ありがとう。

久しぶりに映画館のコマーシャルを見ました。インターネットですとつまらないコマーシャルが多いのですが、映画館のコマーシャルは時々映画に近いぐらい質の良い撮影をしたものもあり、楽しめます。テレビが無いので、「へえ、こんな商品を売っているんだ」と知識を広めるにも役立ちます。こんな風に一生懸命コマーシャルを見る観客はスポンサーや CM 制作者からは感謝されるだろうなあなどと思いながら見ていました。ニッサンの車の宣伝なんか SF 映画を見ているようで良かったです。

その後お楽しみの予告編。次に見る作品を見定めるのは映画館の予告編が最高。インターネットのモニターだと雰囲気が伝わりません。2本ほど良さそうな作品を見つけました。

そしていよいよ本編。最近の近代的な映画館にはアイスクリームを売りに来る人はいません(笑)。

★ フレミングの奇妙な人生

原作はイアン・フレミングのスパイ小説。1953年のカジノ・ロワイヤルに始まり、フレミングは ボンド・シリーズ長編12作と、1960年から短編8作を残して1964年に死亡。(ボンド・シリーズは別な作家が引き継いでいます。5人という話があります。)

フレミングが生まれたのは1908年で、あまり長寿ではありませんでした。小説家になる前は小説の主人公のボンドと同じく SIS 勤務。フレミング誕生とほぼ同じ頃に SIS という組織も生まれています。30歳ぐらいの頃、軍の学校を終えて民間の仕事に就いた後、SIS に入ります。民間の仕事は身内のコネとも言える職場。家族に強要されたこともあったようです。

SIS は2006年からはこともあろうに新聞広告などでエージェントを公募していますが、ちょっと前までは、政府が有能な軍人、ジャーナリスト、その他必要な分野の人材に直接話しかけてリクルートする方法が取られていました。この組織は後に MI6 と呼ばれるようになり今日まで実在しています。MI6 は課の名前らしく、SIS という名前も残っている様子。MI5 とは仕事の分担があり、6 は海外諜報係。

フレミングの MI6 での任務はスパイ。ボンドの活躍はその時の経験を取り入れて書かれています。とは言うものの諜報活動は当時から必ずしも体を張った冒険ばかりではなく、丹念に情報を集めて分析するような仕事の方が多く、フレミングも実際にどこかに忍び込んで人を殺すような仕事はしていなかった様子。

無論本格的なスパイ活動をしていたとしても本人が認めるわけは無く、雇い主が公表するはずも無く、闇の中でオトシマイがつくはずなので、私たちが真実を知る機会は無いものと思いますが。いずれにしろ終戦の頃実務から手を引き、西インド諸島に家を買って事実上引退(・・・ということになっています)。

小説の出版は1953年からで、遺作は1964年。作品のほとんどはボンド・シリーズ(例外的に子供向きの話を1つ書いています)。なので自作がショーン・コネリーで映画化された事は知っています。フレミングが撮影現場を訪ねた写真が残っています。変わった噂のある女性とスパイ稼業引退後に結婚。結婚した年に息子を得ています。俳優のクリストファー・リーとはかなり近い親戚。息子は長生きせず死亡。フレミング夫妻は両方とも結婚という制度をあまり真面目に考えていなかった様子で、かなりずぼらな話が残っています。

引退して作家になったはずのフレミングは実は、南米に逃亡し身分を隠して住んでいると思われていた有名なナチの残党の誘拐計画に参加していました。空いた時間を使って小説を書いていたらしく、引退という言い方が正しいのかは不明。SIS だの NATO だの UNO だのアルファベットの略語で有名な組織に属している人たちには、部署によりますが特殊な任務を行うスキルがあるので、引退した後も相談役だの、嘱託だの何かと理由をつけて現役の手伝いをする事はあるようです。

フレミングたちの計画に沿って誘拐されるはずだった軍人は実は終戦時にドイツで死んでおり、遺体はドイツに放置されていました。終戦のどさくさできちんと死亡の確認が取れておらず、当時は遺体無しと処理されていました。

本当に南米に隠れていて、後で誘拐されて裁判になった別な有名な残党、内輪で E と呼ばれていた男が捕まった後、「あいつも南米に潜んでいるよ」というような証言を行ったため、この男を本当に探す人や国がありました。

時期的には
→ その男 X は終戦の頃ドイツで死んでいた。(1940年代中頃)
→ 探す側から E と呼ばれていた男が南米に逃れて、身分を隠して住んでいた(1950年頃)
→ フレミングたちが X を誘拐する計画を立てた(同じ頃)
→ E が南米に逃れている事が捜査側に知れる(1950年代後半)
→ E 国外に誘拐され裁判になる(1960年頃)
→ E が「X も南米に潜んでいるよ」と証言(同じ頃)
→ X の死体ドイツで発見、確認(1970年代前半)
という順序になります。なのでフレミングたちは1950年代に、もうこの世の人でない人物を誘拐する計画を立てていたことになります。こういう形でスパイ小説と実話がクロスします。ま、フレミングは警察を退職して犯罪小説家や映画監督になるケースと似ていますが、扱う事件が普通は表に出ない国家機密なので、読者の興味が特にかき立てられます。

ボンドの小説、映画の特徴は、お酒、食事、車、衣類などへのこだわりで、ショーン・コネリー以降小説やビデオの売り上げに加え、こういった商品の売り上げもかなり上がったようですが、この部分は美食家だったフレミング自身の色彩が濃いです。

★ 今年のボンドの位置

フレミングはスパイになる前ロイターなどで仕事の経験があったため、スパイ稼業を辞めてから小説家に簡単に移れたようで、ボンドを主人公とした小説を合計20ほど残しました。英国が国家事業としてボンド映画に力を入れたため、50年後の今年はもうフレミングの小説で使える筋は全部使い尽くされ、途中からは新しいストーリーを考え出さなければならなくなりました。リメイクは特殊な例を除いてやっていません。

おもしろそうな筋はほとんどショーン・コネリーで映画化されています。コネリーを初代映像ボンドと言いたいところですが、その前に1つテレビ・ドラマが作られていますのでコネリーは2代目。長編劇映画ではコネリーが初代。元々はパトリック・マグーハンが候補で、本人が辞退しなければ彼がボンドになっていました。マグーハンはちょうどその頃スパイ物のテレビ・シリーズで成功していたこともあり、この仕事を断わって代わりにコネリーを推薦しました。もしマグーハンが引き受けていたら、ボンドはフレミングの小説に近いキャラクターになっていたと思われます。

今年はボンド映画が始まってから50年目で、23作目になります(テレビ・ドラマとへんてこりんなカジノロワイヤルは除いて数えています)。2年に1本に近いテンポで作られています。プロデューサーのブロッコリの功績が大きく、制作は現在もブロッコリーの家族が引き継いでいます。

★ 歴代ボンド

国策映画と言えないことも無く、ボンド役を引き受けるのが誰かは常に話題になりました。コネリーは例えばスコットランド人。2人目のレーゼンビーはオーストラリア人。なぜか俳優でもなく、英国のアクセントでなかったため、すぐ首。

3代目、英国人のロジャー・ムーアは7本に出ており、俳優としては大成功。とは言うものの私には彼のはまり役はセイント 天国野郎(テレビ)のサイモン・テンプラーだと思います。当時の彼は若く、水も滴るいい男。彼のかもし出す洒落た雰囲気が原作とぴったりかみ合い、すばらしい伊達男に仕上がっていました。

それに比べるとボンドとしては線が柔らか過ぎて、時には死闘をするというキャラクターに合いません。グルメで車や衣服にうるさい男という点も、ムーアにあまり意固地になってこだわる雰囲気が無く、国のために血を流しても戦うというイメージ同様しっくり来ません。ボンドとしてなぜこんなに長く持ったかと言うと、フレミングが当時テレビに出ていたムーアを推したから。ムーアは複数回候補に挙がり、スケジュールの都合で断わっていました。かなり年数が経ってから引き受けたためか、最後の方では年齢的な衰えが目立ちました。

4代目は若返り、ダルトン。彼は英国人とアメリカ人の子供で、アイルランド、イタリア、英国系。ボンドの役を1番良くこなした人。しかし契約などでごたつくのを嫌って2本で終わり。

次が4本撮ったアイルランド人のブロスナン。彼はイメージとしてはロジャー・ムーアの洒落た面を持ち、年齢的にはぴったりで、時には命を張って戦えそうと思える面も持った折衷俳優。まあ良い線を行っていました。私は彼がボンドになる前子供向きの作品を見ていましたので出世を喜びました。ムーアでややマンネリ化し、ダルトンは渋過ぎたため大ブームに至らなかったのですが、ブロスナンでボンド映画はまた息を吹き返します。しかし俳優として幅広く仕事をしたかったため、一定の数をこなした後は降りるつもりだったようです。実際皮肉っぽい役も、ばかばかしいコメディーも、地味な家族物も演じられる俳優で、この世界では珍しく自分の潮時をわきまえている人です。全く違う役で再ブレークもあり得ますし、主演も脇役もできるので俳優としてはまだ伸びるでしょう。ボンドとしては1番売り上げを伸ばしたとのことです。

その次が現在のボンド。彼は3作のつもりでおり、スカイフォールが3作目。私はクレイグをドイツのスター女優の恋人として知っていました。このスター女優は元々テレビ司会者で、映画界に打って出たものの自分の演技力に疑問を持っていたらしく、きちんとした学校で勉強したいと思ったようです。他のドイツの若手スターがハリウッドやニューヨークの学校へ行った中、彼女は英国を選んだので、目が高いと思っていました。もっとも彼女演技がその後特に良くなったというわけではありません。

彼女の事が報道されると必ず名前が出ていたのがクレイグ。ところがある日2人は別れたという報道があり、彼女がドイツに戻って来た直後クレイグがボンドに抜擢されました。2人の間に醜い争いがあったという話は全く無く、静かに別れたようなのですが、ボンドと言えば国を代表する役。その彼にドイツ人の恋人や妻がいると都合が悪かったのかなと思ったりしました。別れた真相は不明。

英国人は時々芸能人にひどいバッシングをするのですが、クレイグがボンドになった時は、ルネ・ゼルヴェーガーがブリジット・ジョーンズになった時と同じぐらいの騒ぎになり、誹謗中傷が飛び交いました。なぜ英国人が英国人の役を演じる英国人にあれほどひどい事をしたのかは今もって謎ですが、クレイグのボンドは結果として大成功。いつの間にか3本と言う話は延長になっているらしく、あと1、2本はクレイグ・ボンドが見られそうです。

彼は容姿はともかく、ボンドとしてははまり役で、戦うシーンがよく似合っています。傷つき易さと強さの両方を持ち、時々暴走するので上司も手に余ることがあるといった筋書きにも良く合っています。確か原作のボンドはここまで暴走はしませんでしたが、結婚を強行した時には脱線します。ああいうところも上手くクレイグと重ねる事ができます。

もう原作を映画化し尽くし、今後は独自に話を作って行かなければならないのだとすれば、クレイグのイメージを上手に生かしながら行くのがいいと思います。

★ 006

もう1人ボンド役に合いそうだったのがショーン・ビーン。時代劇や変な映画にも誘われる俳優ですが、本格的な演技力を持つ人で、やれと言われればボンドもこなせます。スポーツも結構行けます。私生活でちょくちょく揉めるためか、ボンドの役は来ず、代わりに 006 の役が来ました。006 も良い役で、ボンドを裏切る逆スパイ。俳優としては悪役の方がやり甲斐があるかも知れません。彼も容姿ではボンドに負けないかっこ良さ。

★ さて、スカイフォール

スカイフォールというのは後半出て来る屋敷の名前です。ただそれだけのこと。無理に言えば高い所から落っこちるシーンが2箇所ほどあるので、空を切って下に落ちるから「スカイ + フォール」と言えなくもありませんが、レベルの低いこじつけ。

スカイフォールで唯一文句を言うとすればオープニング・クレジットのシーン。ショーン・コネリー世代にはスカイフォールの冒頭は安っぽく見えます。コネリーの時代は音楽も洒落ていましたし、映っている美女もゴージャス。そこへタキシード姿で出て来るボンドのかっこいいことと来たら。それに比べると3流といった感じです。

なので期待感がガクッと落ちたのですが、本編が始まるとその良さに感激。アクション映画の面目を保っているどころか、人に自慢して歩くに十分な力量を持っていました。しかもそれが1回切りではなく、中盤、後半にもちゃんと別なアクションが用意してあるのです。

冒頭はトルコらしく見えないトルコでボンド、エヴァがある男を車やオートバイを使って追いかけています。最後は列車の屋根で格闘になり、一緒に追いかけていたボンドの相棒エヴァがボンドを撃ってしまいます。追っていた男は逃げおせ、ボンドは滝に呑み込まれて行方不明。

エヴァは「射程内で安定してボンドの敵を狙えない」と M に報告したのですが、M に「撃て」と命じられ、弾はボンドに当たってしまいます。ボンドは死亡と見なされ、公式の弔辞が出ます。

ボンドたちが追っていた男は MI6 のハードディスクを盗み出しており、NATO のエージェントの身元がばれてしまいます。ボンドたちが追っていたのはテロリスト側のエージェントで、ボンドと180度逆の立場。

ハードディスクを奪った男の雇い主は NATO のエージェントのうちの5人の身元をインターネットで公開。そのため死者が出ます。今後も毎週5人公開すると相手側から宣言されてしまったので、M の責任問題に発展し、マロリーという諜報安全委員会の議長から「今のうちに栄光に包まれて引退しなさい」と勧告を受けます。「なんなら勲章を与えても良いから早く出て行ってくれ」と言われる始末。M は「自分の責任だから問題の処理を自分にさせろ」と言って M の地位に居座ります。

テロリストの次の攻撃目標は MI6 の本部。M がマロリーに怒られてこれから本部の事務所に戻ろうとしている最中に交通止め。車を降りて目の前を見ると MI6 本部が大爆発を起こします。少なくとも8人のエージェントが死亡。このテロは M を殺すためではなく、M に建物が破壊され、部下が死ぬところを見せるために引き起こされました(最近実際に MI6 の建物が攻撃された事があったようですが、被害はこれほどひどくなかった様子)。

滝つぼに落ちた後命が助かったボンド(現代版シャーロック・ホームズか?)はこれ幸いと恋人を作って気楽な毎日。色々能力があるので毎日の生活に必要なお金はすぐ作れます。ところが酒場にたむろしている時ふと目に入った報道番組。MI6 の建物が襲われたニュースでした。こりゃまずいと思って自主休暇を返上して M の元に現われたボンド。

暫く現役から退いていたため精神状態、健康状態、運動能力などのテストがあり、ほとんど全部落第。しかし MI6 は大勢のスタッフを失い、今はボンドに休めと言っている場合でないと判断した M は合格した事にして早速上海に送り込みます。エヴァがサポート兼お目付け役でついて行きます。

問題の敵エージェントが引き受けた仕事は、向かいのビルにいる古美術商を狙撃する事。雇い主は若い女を古美術商の所へ送り込んであり、窓ガラスの側に座っていた古美術商をエージェントが射殺。その様子を見ていたボンドはエージェントの仕事の直後を襲い、格闘になります。結局ボンドは勝ちますが、敵エージェントは雇い主の情報など一切言わずに死んでしまいます。

その男が置いて行った荷物から手がかりを得て、ボンドはカジノに出向きます。そこでチップを渡すと、大金が支払われます。どうやら古美術商暗殺の謝礼のよう。カジノにあるバーでボンドは暗殺時古美術商の横にいた厚化粧の女に出会います。話していると2人を監視している男たちがおり、女も怯えて何も言いたがりません。ボンドは彼女に「ボスを殺してやるから」と話をつけて翌日会う約束をします。カジノでも格闘があり、エヴァの助けもあって無事脱出。その足で約束の場所で厚化粧の女と再会。

楽しんだのもつかの間、2人は彼女のボスの命令で捕まってしまい、ある島に連れて来られます。そこは一夜にして住民が全員逃げ出した無人島。敵エージェントのボスであり、厚化粧の女のボスでもあるシルバがそこを根拠地にしてテロを仕掛けていました。

シルバには M を攻撃する理由がありました。悪人の屁理屈ですが、かつて彼は M の部下。本職のスパイの他に中国相手にサイドビジネスを始めたことがバレ、M はスパイ交換の時に彼を置き去りにします。6人の英国側エージェントを助けるために1人の裏切り物を犠牲にした形。中国側に捕まったシルバは拷問を受けますが、英国の機密をばらして売国奴になる事を嫌い、歯に仕掛けたシアンカリを呑み込もうとします。ところがこのカプセルの調子がおかしく、死ぬ事ができません。口の中から消化器までを焼き尽くします。そのため現在は口の中は真っ黒に焦げており、人工の声、総入れ歯、食事も普通に取れません。外から見ると普通ですが、体はモンスターのようになってしまっています。それ以来シルバは M を恨み続け、復讐街道まっしぐら。

厚化粧の女はそこで射殺されてしまいますが、ボンドは相手を倒し、シルバを逮捕、英国へ連れ帰ります。

ところがその前にシルバは準備をしており、MI6 のコンピューターがハッキングされ、彼を閉じ込めてあった部屋の鍵も開いてしまいます。MI6 は爆弾攻撃の後古い地下室に居を移していましたが、そこから地下鉄に逃れシルバはまんまと消えてしまいます。

M は今回の一連の失態の責任を追求されるために審問会の最中。シルバはそこへ乗り込んで来て M を殺そうとしますが、失敗。かろうじて死を免れた M をボンドは本部へ戻さず、車を乗り換えてスコットランドのスカイフォールへ連れて行きます。その間に本部に残った Q たちは、シルバが M たちの行動を見張っている事を承知でこっそり偽の足跡をコンピューターに残し、シルバをスカイフォールという建物におびき出します。その作業をやっている最中にマロリーにばれてしまいますが、マロリーは見ない事にしてくれます。

スカイフォールでボンドは古い知人と再会。この男もど根性で、四の五の言わずにボンドたちと一緒に戦う準備をしてくれます。ボンドは子供の時に両親を事故で失い、その頃この男がボンドの世話をしてくれています。3人は少ない武器と知恵を使ってシルバ到来に備えます。Q が作るような気の利いた武器は無いので、すべてがオールド・スクール。この落差が楽しいです。

シルバは傭兵を10人ほど送り込んで来ますが、それはうまく倒す事ができます。しかしその後ヘリコプターと機関銃で襲って来ます。シルバは今度ばかりは本気を出し、スカイフォールの建物は火の海。ボンドは老人2人を地下通路から外へ逃がし、1人で暫くシルバの相手をします。ヘリコプターをガスボンベで倒すと、自分も地下通路から脱出。

こういう建物や地下通路は日本で考えるとフィクション、メルヘン、ご都合主義に見えますが、実は欧州には時々あります。中世、近世に立てられた砦式の城にはよくこういった脱出口がついています。壁の後ろの隠された通路なども本当にあります。領主や大金持ちは戦略的に家を建てたのでしょう。

戦いの最中に M は弾を受け大出血。ボンドの知り合いが彼女を助けてどうにか教会にたどり着きますが、シルバが追って来ます。シルバは M と直接対決。無理心中をしようと銃を頭に突きつけます。そこへおり良くボンドが到着し、ナイフを投げ、命中。しかし M も出血多量で死亡。

M もデンチもちょっと長居し過ぎたので、この辺で幕を下ろしたようです。デンチは最近視力障害になり、文字が読めなくなったため、間もなく女優を引退するかも知れません。尤もこの病気は慣れてしまえばどうということも無く、また、片目だけの患者も多い上、一部は手術で改善するので、女優はできるかも知れません。台詞は秘書にでも読んでもらって暗記すればいいことですし。舞台は脚本全体を一日で演じなければ行けないので難しいかも知れませんが、映画はシーンごとにバラバラに撮るので、その日の出番の部分だけ覚えればいい上、最近のデジタルですと簡単に撮り直しができるので、私は今後も大丈夫かも知れないと思っています。ただ、稀には悪化して失明する事もあるので、そろそろ引退するのもいいかも知れません。私自身はデンチが持ち上げられ過ぎに思うので、そろそろ潮時と思います。

2時間を越える作品ですが、変化に富み、出来のいい悪役を据えてあったので退屈しませんでした。クレイグが続投するとしてもあまり撮り急がず、ゆっくり時間をかけて脚本を書いてくれればと思います。

次回は新しい秘書、上司、技術屋さんでリスタートとなります。

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