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HK 2012 90 Min. 劇映画
出演者
黄秋生/Anthony Wong Chau-Sang
(盧峰/Lo Fung - 職人的に車の運転の上手い交通課の警察官、署内の隱形戰車のベテラン隊員)
Michelle Ye Xuan
(盧峰の妻)
余文樂/Shawn Yue
(阿翔/Chan Cheung - 車の名手になりたい交通課の警察官、隱形戰車の新米隊員)
林家棟/Gordon Lam Ka-tung
(莊/Chong - サーと呼ばれる覆面パトカー部隊の主任)
郭暁冬/Guo Xiaodong
(蒋薪/Jiang Xin - 誘拐犯を助ける犯罪者側のプロのドライバー)
徐熙媛/Barbie Hsu (嘉怡)
羅泳嫻
(嘉怡の友人)
何超儀/Josie Ho
(マダムと呼ばれる警官)
李光浩/Li Guangjie
(Tan Yi - ギャングのボス)
李海濤/Li Haitao
(黄中/Huang Zhong - 服役中のマフィア)
李光潔 (譚)
郭暁冬
劉浩龍
林師傑
見た時期:2012年8月
★ 不作の中の佳作 - 香港の面目
全体に不作、アジアの作品も大凶作の中、チラッと光ったのが車手です。今年のベストの中には入れなかったのですが、私自身は「うわっ、凄い」と感心しながら見ました。下のランクに入ってしまった理由は、ストーリー。香港映画にはもっとおもしろい作品がたくさんあります。犯罪物としては「大したこと無い」レベル。
車手のおもしろさ、凄さは車にあります。焦点がはっきり車に絞ってあり、モーターレースのファンや、車が重要な位置を占める作品に興味のある人には満足が行くのではないかと思いました。警察の話なので、もしこれに加え犯罪捜査の面でももっと凝っていたら凄い作品になったと思います。
好感が持てるのはタイトルの通り車のシーンですが、その横で先輩刑事が若手のきかん坊刑事を我が子のように厳しく、愛情を持って育てようとするシーンが昨今の殺伐とした世の中にあってほっとします。極端にメロドラマ風にならず、大甘になる直前で引き、しまりのいい作品に仕上がっています。
プロデューサーはジョニー・トウ。アメリカなんかが目をつけてすぐリメイクをするのかなと思いますが、フランケンハイマーのグランプリ以後見たどの車の映画より撮影がいいです。撮影のメイキング・オブがあるようですから、DVD を買った人はそちらも楽しめるかも知れません。
日本ではこの作品に目をつけてバイヤーが権利を買ったようですが、なぜかいきなり DVD 発売に飛ぶことになっていたそうです。ところが話が変わって劇場公開もするそうです。車が高速で突っ走るのを見るのが好きな人や、ドライビング・テクニック、あるいは車のシーンの撮影法などに興味がある方は是非劇場で見てください。
先日ご紹介したドライヴ他その辺の車の出て来る映画が雑魚に見えます。
★ あらすじ
中心になるのは警察で車を使う部署と、犯罪者の追いかけっこ。警察側では覆面パトカー大先輩の盧峰と若手の阿翔が中心に進みます。
阿翔は若い警官で香港警察の隱形戰車という覆面パトカー隊に所属しています。高速道路で法律に触れる出来事を追いかけるのが仕事。この部署の隊員は車の運転にかけてはミヒャエル・シューマッハーとニキ・ラウダにも負けない腕前です。車のチューンアップやメカにも強い人たち。
ドイツやスイスではなく、あのせせこましい香港、高速道路も時には2階建てになっている香港のどこにこんな部隊が活躍する場所があるのだろうと冒頭突っ込みを入れながら見ていましたが、それでも結構そういう場所はあるようです。あるいはそういう場所が少ないので、あの程度の人数で足りるのかも知れません。精鋭部隊ではありますが、大勢ではありません。
同じ隊には先輩の盧峰もいますが、盧峰は穏やかな人物と言うか、阿翔の目には臆病にも映り、苛立ちと軽蔑を感じています。盧峰は間もなく引退の予定。阿翔は若さに任せて高速道路上で大活劇を演じる事もあり、上司の莊ににらまれてしまい、レーダー・ガン・オペレーターに格下げ。
ある日高速で走る蒋薪を追いかけ始めます。蒋薪はやくざ側の凄腕ドライバー。言わばトランスポーターのフランク・マーティンのような仕事をしていて、後ろ暗い仕事中心。この追い掛け中に2人の間には決定的なライバル関係が生じます。蒋薪の車の運転技術が非常に高度だという事に阿翔が気づいたからです。
その後も何度か高速道路で2人は対決。蒋薪対阿翔の戦いは大陸対香港の対決の様相を呈して来ます。自分の今の力では不足と悟った阿翔はこれまで反発していた盧峰に教えを乞うことにします。2人の間には最初葛藤が生じます。盧峰は蒋薪に車の技術だけを教えるのでは無鉄砲で命を落とす危険を感じ、対立しながらも車の運転、捜査とは本質的にどういうものかを教えて行きます。
蒋薪が現在関わっているのはマフィアのボスの依頼で服役中の黄中を脱獄させる仕事。蒋薪は覆面パトカーに自分を追わせ、逮捕させます。そうやって豚箱に入り、そこから黄中を逃がす計画。
この先、信じられないような細い袋小路に入り込んだり、車ファン大喜びのカー・チェースが始まります。この後の展開はゲルマンの言い伝えや欧州の伝統と真逆、いかにもアジア的、日本的なショーダウンに向かいます。
★ 車のファン向き
近年カー・チェイスを盛り込んだ作品は色々ありますが、スタントを使って実際に撮影する作品は減っています。私はジョン・フランケンハイマーのグランプリのファンで、当時何度か見ました。その理由はストーリーに実話をややアレンジしたエピソードがいくつも盛り込んであったこと、ロケが実際のグランプリと同時進行し、現場の雰囲気をそのまま盛り込んであったこと、そして当時としては画期的なレースシーンの撮影が行われたことです。
当時の私は車の専門誌を購読し、グランプリで誰が現在何点取っているかを追いかけ、大金持ちになったらグランプリにくっついて1年間旅行がしたいなどと思っていました。車の構造の見取り図などが雑誌についていると切り抜いて壁に貼ったり、ま、早い話が車オタクだったわけです。身内に実際の車に詳しい者もおり、いずれラリーに出ようかなどとマジで考えていたこともありました。ただ私は免許を取ればそのままスピード狂になりそうだったので国内で免許は取りませんでした。
ドイツに来てからも高速道路に速度制限の無い国なので、これでは私はそのまま走る凶器になってしまうとの自覚があり、暫く免許を取ることは考えていませんでした。ある時巡り会わせで自動車教習所に行くことになり、初日から坂道発進に加えて時速160キロ走行。間もなくスポーツカーで夜間走行。道路はがら空きなので、何キロ出してもいいという環境。結局教習所のコースは全部終え、筆記試験にも受かったのですが、実技で突発した事故を防ごうと急ブレーキをかけたため落第。同じ年にまだ1、2回再試験のチャンスがあり、教習所を変わって受けてもいいことになっていたので、ベルリンで再開。今度は雪が積もって道路の車線が見えなくなった中でのアイスバーン運転。これがまた楽しくてルンルン気分で練習。後ろ向きの車庫入れはなぜか子供時から自動車のモデルを使って遊んでいたので理屈がすぐ理解でき、一発で合格。
しかし2度目の試験は仕事のスケジュールが混んでいたために結局受けませんでした。2度目の試験までの時間的余裕は十分あった上、全く知らない田舎と違い、私は町の道路を良く知っていたのですが、そしてベルリンの歩行者の方が田舎の歩行者より交通規則を守るので、受かる見込みは十分だったのですが、色々考えた末取りませんでした。恐らく車と私は相性が良過ぎるが故に、真実は相性が悪い(危険な)のではないかと思います。
実際私の興味は自動車で物や人を運ぶ事ではなく、車の使い勝手、運転の技術などで、誇大妄想的な夢を言えば、閉ざされた空間(レース会場など)で思いっ切りぶっ飛ばす事なのです。公道でちまちま走ると気分が滅入りそう。
と、まあ、こういうメンタリティーの人にはお薦めの作品です。
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