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リゴル・モルティス 死後硬直 /
殭屍 /
Geung si /
Geung si - Rigor Mortis / Rigor Mortis - Leichenstarre / Rigor Mortis

Juno Mak/麥浚龍

HK 2013 105 Min. 劇映画

出演者

Anthony Chan Yau/陳友
(Yau/阿友 - 食堂の親父兼道教のゴーストハンター)

劉沛謙 (阿友、子供時代)

馮國成 (阿友の父親)

Chin Siu-Ho/錢小豪
(Chin Siu-Ho/錢小豪 - 落ちぶれて自殺寸前の元大スター)

林慧倩 (小豪の前妻)

劉澤成 (小豪の子)

Chung Fat/鍾發
(九叔 - 悪魔と手を結んだ道教のゴーストハンター)

Richard Yiu-Hon Ng/呉耀漢 (冬叔/Tung おじさん - 硬直死体)

Nina Paw/Paw Hee Ching/鮑起靜 (梅姨/Mui おばさん - 夫を失ったお針子、冬叔の妻)

Kara Wai/Kara Hui/Wai Ying Hung/惠英紅 (楊鳳/Yeung Feng - 主婦)

Ko Chun Man/高俊文 (阿文 - 楊鳳の夫)

Morris Ho/何光鋭 (小白 - 楊鳳の子、白子)

Lo Hoi Pang/盧海鵬 (燕叔/Yin おじさん - アパートの管理人)

何康汶 (小妹 - 双子の妹)

何健汶 (大姐 - 双子の姉)

Billy Lau Nam-Kwong/樓南光 (山西佬)

曾波 (肥大嬸)

見た時期:2014年3月

2014年春のファンタ参加作品

要注意: ネタばれあり!

見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

ストーリーの説明あり

ストーリを紹介しますので見る予定の人は退散して下さい。目次へ。映画のリストへ。

★ 井上さん、助けて

どうやらこの作品は香港映画マニアが良く知っている作品のオマージュか、リメイクらしいのですが、私は元ネタを知らないのです。知っている人が見ると大喜びするようなキャストらしく、あちらこちらに宝物のようなオマージュが隠されているようなのですが、私にはさっぱり分からないのですよ。

どうやらキーワードは霊幻道士とキョンシーのようなのですが、井上さん、何か知ってる?

★ 道教を知っていると役に立つか?

登場するゴーストハンターが道教の信者らしいです。中国ではインドから来た仏教、孔子が始めた儒教、漢系中国人の土着宗教とされる道教が重要だそうです。暫くは欧州発の共産主義で国を経営していたため、こういうのはダメという事になっていましたが、香港は英国に属していたため、香港映画では宗教問題で当局と揉める事は無く、自由に映画にも取り入れています。ドイツでもダオイスムと呼ばれ、凝っている人がいます。

仏教が仏になることを良き事とするとすれば、道教は仙人になる事が良き事のようです。文革の影響を免れた海外の中国人社会ではそのまま残り、本土では文革に隠れて何とか民間で生き延び、現在は当時ほど取締りが厳しくないようです。

道教自体の実態は私には理解しにくかったです。随分色々な物が混ざっており、仏教や儒教ほどすっきりしていないのです。イメージとしては様々な土着の信仰や民間療法などが次々と加わって行き、誰かが何かの思想を言い始め、教義ができて・・・という発展の仕方で、誰かを中心に1本の筋が通ったタイプではないようです。

参考になりそうな物を読んでも結局何も分からなかったというのが結論ですが、作品中にはその摩訶不思議さは良く出ています。

★ 多彩な監督

歌手、音楽プロデューサー、俳優。この作品が監督デビュー。デビューとは信じられないぐらいいい出来です。俳優歴は2007年からの4本、制作歴は2011年からの2本で、2002年頃からの歌手歴よりずっと新しいです。

それにしてもいきなり第1作にこんな作品を作るのはただ者ではありません。

★ 西洋語の字幕を見ながらだと追いにくいあらすじ

普段はファンタ開始前にある程度ストーリーや背景などのチェックをするのですが、今年はそんな暇も無く、何も分からず見ました。唯一のアジアからの参加なので、必ず見るつもりにしていましたし、春のファンタは作品をとばす必要が無いので、見ることは分かっていましたが、結構内容が詰まっているので、少し予習しておけばもっと楽しめたと思います。

しかし予習無しに見ても美的な撮影、親しみ易い雰囲気、香港らしさなどが出ており、そこに清水スタイルもうまく溶け込んでいて、その雰囲気だけでも自分もこのアパートの住民になった気分になれます。呪いのかかった幽霊屋敷に住みたくないと思う方もおられるでしょうが、香港に暫く行った事のある人なら、ああいう食堂に座って暇つぶしするのが楽しいかも知れませんし、ああいう食堂のご飯がおいしいのを知っているかも知れません。

私は冒頭のシーンにまず美的に感心しました。監督には美術に対するいいセンスがあると思います。元歌謡スタートは思えない!まずは男のが死んでいるシーン。それから貧乏アパートに(日本なら長屋でしょうが、香港は土地が少ないので長屋でも上に伸びます)似合わないような高そうなトランクを持った俳優小豪が引っ越して来ます。管理人風の男がちょっと世話をし、間もなく男は1人に。早速自殺の準備を始め、首尾良く首を吊れたかなと思った時にアパートの人が飛び込んで来て危ういところで助かります。

実はこの男かつては大スター。何があったのか、今は落ちぶれ、妻子にも去られたらしく、財産も全部失い、仕事は全然なさそう。残ったのはかつての衣装ぐらい。彼が入居した部屋はいわくつきらしいのですが、明日まで生きているつもりも無い俳優には関係ない。 ところが彼は出て来た幽霊のおかげで助かってしまったような形になります。

自殺志望の小豪は知らないのですが、この高層アパートには2種類のゴースト・ハンターが住んでいます。1人はヤウで仮の姿はこのアパートの1階の食堂の親父。そっと食堂に来る客を救っています。

もう1人は悪魔と手を結んだガウ。ちょうどガウは夫を失ったムイを助けて夫を再生しようと試みている最中。落ちぶれ俳優の入居直後、ガウの試みは少し成功の兆しが見えて来ます。

妙な妖怪がうろつきまわられては困ると考えるヤウと生きる希望を失っていた落ちぶれ俳優小豪は組んで悪魔の手先を退治しようという事になります。

やがて小豪には妙齢の女性の姿が見えるようになります。この女性と、一卵性の双子のもう1人の女性は不条理な運命に翻弄され、悲劇に見舞われました。もうこの世の人ではないのですが、成仏はできていない・・・。その上鳳という女性が白子の息子を連れて徘徊。この2人は生きているのですが、運命は2人に優しくない・・・。しかもお針子のおばさんにも何かいわくがありそうで・・・。

てなわけで話は結構複雑です。

★ ユーモアは残った

いくつかの解説を読むとこの作品からはオマージュの元になった作品にあったユーモアを取り除いていると書いてあったのですが、私には行間からユーモアがにじみ出ているように思えました。「ええ、何、これ」と思える一呼吸外した愉快さが所々にあります。一つは香港語の間延びした発音のせいかも知れません。関西弁に似たのんびりした印象があり、私はそこに親近感も感じました。中国語はあまり興味が無いけれど、香港語なら習ってもいいかと思えるようなのんびりさがあり、他の映画でギャングが大喧嘩していても、まあまあと仲裁したくなってしまいます。

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