September.30,2001 キッチン・イナバのオフ会ランチ

        インターネットを始めてから2年。すっかりその面白さにハマッてしまった私だ。特に今年に入ってからは落語関係の文章を書くようになって、自然とそっちの方面のサイトに遊びに行くようになり、ネット上での知り合いもできた。すると不思議なもので、オフ会をやろうじゃないかというムードが高まってくる。この夏、そんな落語関係サイトのオフ会に行ってきた。

        日曜日の昼に集まってランチを食べながら、アレコレと好きな落語の話をしようというのである。場所は、都営地下鉄浅草線本所吾妻橋を降りて、地上に上がったところの交差点にある、[キッチン・イナバ]。ここは落語ファンの間で人気のある柳家さん喬師匠の御実家である。さん喬師匠は、この家の次男。長男にあたる人が店を継いでいたのだが、その長男はすでに他界されていて、今は三男がシェフとして店を切り盛りなさっている。下町の洋食屋として、ちょっと知られた人気店なのだそうだ。

        東京の落語ファン。それもネットをやっている人となると、その世界は、どうもそれほど広くないのかもしれない。会場になった[キッチン・イナバ]に着いてみると、すでに顔見知りらしい人たちが談笑している。結局当日集まったのは20人前後。小学校6年生の男の子もいたが、ほとんどは30代〜40代の男女。20代以下だとまだ経済的に余裕がなくて、落語にパソコンどころではないのか? また50代以上ともなるとパソコンを積極的に趣味に使おうという意欲のある世代ではないのか? 案外、私あたりが最年長の部類だ。

        自己紹介を聞きながら、「ああ、あの人があのハンドル・ネームを使っている人なのかあ」と頭の中で確認していくのは楽しい。案外、自分の頭の中でイメージしていたのとそんなに違わないのが不思議。文章って、その人の性格や風貌を、案外表わしているものらしい。抽選会なども行いながら、初めて会う人たちと、共通の話題で盛り上がった。なんて面白い時代になったんだろう。共通の趣味を持った仲間同士が、こんなに簡単に知り合えて友達になれる。しかも落語という狭い世界だと、寄席や落語会でまたお互いがバッタリなんてこともあるのである。

        前置きが長くなってしまった。このコーナーは食べ物の話題だった。参加者が好きなものをそれぞれ注文するという方式ではなく、コースのようになっていて次々とテーブルの上に持ってきてくれた。まずはオードブル。続いてポタージュ・スープ。これから後のラインナップからするとポタージュは重いのだが、洋食屋の定番はポタージュだろうというさん喬師匠の提案から、ポタージュになったそうな。う〜ん、ここは軽くコンソメにして欲しかったなあ。とはいえ、このポタージュ・スープ美味しかったのだ!

        洋食屋定番ハンバーグ。肉がとてもジューシー。ハンバーグにかかっているソースも、とてもいい味だった。

        エビフライとクリームコロッケ。特にこのクリームコロッケは、普段はメニューにないそうだ。以前は出していたのだが、仕込みに時間と手間がかかるので、止めてしまったという。シェフがそのレシピを教えてくださったが、なるほどそれはタイヘンだ。クリームを作るのにオーブンに付っきりで見ていなければならないのだ。たまに今でもランチで出すこともあるそうだが、それは前日が暇だったときとのこと。仕込みの時間がとれるからだと言う。この日に当たった人はラッキーだと言っていい。で、そのコロッケですが、さすがに手間がかかっているだけある。私はこんなに旨いクリームコロッケを食べたことがない!

        これだけ食べれば、もうお腹いっぱい! 洋食2食分いただいてしまったようなもの。これ以上は無理というものなのだが、まだあるのだと言う。なんと、さらにはオムライス! 少し小さめのサイズにしたとのことだが、いやいや、これは十分に大きいですよ! 半分くらいの人が、もう食べられないとお土産にして包んでもらっていたが、やはり出来たてを食べなくてはとの思いから、私はその場でいただくことにした。

        ふわー、くっ、苦しい! もうこれ以上はどうやっても食べられない! コーヒーを飲みながら、今度はカキフライが食べられる時期にまた集まろうと話し合って、[キッチン・イナバ]を後にした。


September.19,2001 肉じゃがの肉

        今年の3月のこのコーナーで、私は肉じゃがについて書いた。そのときに私は、牛肉で作るか豚肉で作るかの議論があることを紹介し、私は断固、豚肉派であること書いたのを憶えておいでだろうか。あれからもう半年かあ。

        二週間ほど前の朝のことである。私はいつものように、このホームページ用の文章をパソコンで書いていた。モニターにはミニテレビを出して朝のワイドショウをチラチラと見ていたのだ。すみません、相変わらず真面目にホームページだけに取り組むということができず、ナガラ書きをしているのです。興が乗ってキーボードを叩いているうちに、ワイドショウの方では話題に肉じゃがを取上げているのに気がついた。それも肉じゃがの肉についてである。なんでも関東では豚肉、関西では牛肉なんだそうである。へえー、地域差でそんなことがあるのか。私はこの問題は、各個人の好みの問題だとしか思っていなかった。

        そこで番組は何をやっていたかというと、東と西に分れて、調査隊が東海道をそれぞれ進み、肉じゃがの肉に何を使って訊ねて歩き、どの地方で豚肉と牛肉が入れ替わるかを調査しようという企画である。なにしろナガラ視聴だったから、どこで切り替わったかは聞き逃してしまったが、唖然としてしまったのは名古屋。たしか居酒屋さんだったと思うのだが「ウチでは鶏肉を使ってます」だって! これ本当かなあ。おそらく、たまたまこの店だけが鶏肉の肉じゃがで、名古屋のほとんどの店は違うと思うのだけど・・・。

        鶏肉だと、サッパリしすぎちゃう気がするなあ。まあ、名古屋コーチンで有名な名古屋だから、鶏肉の肉じゃががあってもおかしくはないのだが・・・。そうだ、以前、鴨肉で作ったことがあったっけ。あれはけっこう脂があって旨かったなあ。

        それとね、番組の中で「ウチでは合挽き肉を使ってます」というところがあって、なあるほどと思ってそっそく先週作ってみたんですよ。合挽き肉とメイクイーンと玉ねぎと、それに干しシイタケを戻して刻んで鍋に入れ炒めてから、汁を入れて煮たんです。挽き肉だと下に沈んじゃうから片栗粉でトロミをつけようかと思ったのだけれど、大量に作りすぎて、ちょっとトロミどころじゃなくなっちっゃたので、トロミは断念。これ、けっこうイケました。


September.10,2001 ゴーヤチャンプルー

        NHKの朝ドラ『ちゅらさん』の影響もあるらしくて、今年は東京のスーパー・マーケットでもゴーヤが山と積まれて売られている。きっと、この夏は東京の多くの家庭でゴーヤチャンプルーが食卓に上ったに違いない。我家では以前から、もう夏になるとゴーヤチャンプルーは定番。夏バテ気味だと、「今夜はゴーヤチャンプルーにするか」ということになる。そうそう、何年か前、後藤さんが自宅の庭で栽培したとかいうゴーヤを宅配便で送ってくれたっけね。あのときは、ご馳走様!

        沖縄に行った時にタクシーの運転手さんに聞いたのは、ゴーヤのことを訊いてみた。「ゴーヤって、ゴーヤチャンプルー以外にどんな料理法があるんですか?」 「うーん、まあ普通はゴーヤチャンプルー以外はあまりやらないんじゃないかなあ」 「ゴーヤって苦いじゃないですか。子供は食べないでしょうねえ」 「そんなことないですよ。沖縄の子供は、小さいときからゴーヤチャンプルー食べますよ」 「ゴーヤと、豆腐と、モヤシとかニラ、それから豚バラ肉を炒めるわけですよね」 「うーん、ゴーヤと豆腐が基本。あとは野菜を入れたり入れなかったり、その家庭によってまちまちでしょうね。それと豚肉のかわりに、シーチキンとかランチョンミートの缶詰を使ったりする」 「えっ! ランチョンミートですかあ?」

        そういえば、沖縄ではコンビニに入ってもランチョンミートの缶詰が置いてある。東京ではまずスーパー・マーケットへ行ったって、そんなものはまず置いてないだろう。アメ横あたりにいくと輸入雑貨の店先なんかに置いてある。沖縄の場合、戦後にアメリカ軍の影響で食べるようになったのだけれど、私は、そんなものがあるというくらいの知識があっただけで、食べたことがなかった。さっそくランチョンミートを手に入れ、ゴーヤチャンプルーを作ってみた。・・・・・・・・・・う〜ん・・・・・・・・・・まあ・・・・・・・・なんというか・・・・・・・・・・私の口には合わない・・・・・と言いますか・・・・・・・・。

        ちなみに、写真は沖縄で売っていたゴーヤドリンク。飲んでみなかったけど、どんな味がするんでしょうね。源ちゃーん、今月沖縄に行ったら飲んでみてね。


September.6,2001 島らっきょう

        沖縄へ行ったのはゴールデン・ウイークだから、もう4ヶ月も前のことになる。そのときに買ってきた調味料、唐辛子を泡盛で漬けた[島とうがらし]が無くなってしまった。なにしろ、すっかりこの調味料が気に入ってしまい、どんな料理にでも振りかけて食べるものだから、買ってきた小さな瓶は瞬く間にカラ。そんなときに、新宿伊勢丹で[大沖縄展]という催し物があったのだ。よし、ここへ行って買ってこよう―――というわけで、日曜日の午後、私は伊勢丹の6階催し物会場へと向かった。

        伊勢丹というところは、このところ地方の物産展に燃えているようで、この[大沖縄展]のあとにも、[大九州展]、[大北海道展]と続いている。物好きと言われそうだが、このあとのふたつの物産展も私は行っている。毎回タイヘンな混雑で、特に臨時に設営される地方の料理を出す食堂は、毎回列が出来ている。[大北海道展]の小樽の寿司屋なんて30分以上待たされていたようだ。あんなに並んで、しかも落ちつかない場所で食べる気には、私は到底なれないのだが・・・。

        ええっと、[大沖縄展]である。こちらも、けっこうな混雑ぶりであった。列が出来ているコーナーがある。食堂ではない。何かと思ったら、[ゴーヤマン・グッズ]の販売コーナーだった。NHKテレビの朝ドラ『ちゅらさん』に出てきたゴーヤマン人形がバカに評判を呼び、キャラクター・グッズとして売られていた。このコーナーだけは入場制限をしないと混乱が起きそうなので、長い列になっている。恐るべし、NHK朝ドラ!

        目当ての島とうがらしの大瓶を手に入れ、大混雑の会場を出ようとしたら、[島らっきょう]を見つけてしまった。これも沖縄の市場で見つけて買ってきたっけ。本土のものに比べると長細いらっきょうで、一晩塩漬けにするらしい。キムチ漬けにしたのもあるが、あれだとらっきょう本来の味が薄まってしまう。やっぱりノーマルな塩漬けがいい。ご飯のオカズでもいいが、これはやっぱりサケのツマミ。それも、ビールや日本酒、ウイスキーやワインといったものではなく、絶対に泡盛! 不思議なもので、どういうわけか泡盛に合うんですね。味はエシャレットに近いが、臭いが強烈。嫌う人もいるかもしれない。

        というわけで、この島らっきょうも買って帰宅の途についたのだが、地下鉄に乗って気がついた。この島らっきょうが発する臭いがバッグの中から漏れている。バッグをギュッと抱きかかえるようにして、なるべく人のいない空間にたたずんで帰ったが、ちょっと恥ずかしい思いをした。

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