風雲電影院

ザ・ヴァンパイア〜残酷な牙を持つ少女〜(A Girl Walks Home Alone at Night)

2015年9月27日
新宿シネマカリテ

 アメリカのイラン人女性監督が撮った、架空の都市を舞台にした映画。台詞はペルシャ語。イランにロケしたのかアメリカで撮ったのかは私はわからない。イラン在住経験のあるUtamさんならわかるかもしれない。
 今年の春のベルリン・ファンタでも上映されていて、ベルリンさんも観ていると思う。

 モノクロ画面がいかにもインディーズという感じだが、無声映画時代の名作といわれる『吸血鬼ノスフェラトゥ』を意識したのかもしれない。少女(名前はない)は、とてもキュートな女優さんが演じていて、普段はまったく怖くない。それが人を襲うところになると、いきなり怖くなる。最初の犠牲者に近付いて行って、油断している相手の人差し指を噛み切るシーンは本当に怖かった。この少女が襲うのはダメ人間に限られる。ジャンキー、売人、娼婦、高利貸しなど、こいつは殺してしまってもいいと判断した相手だけ。変なモラルを持っているんだよね。

 女性が作った吸血鬼ものだというのは、やがてこの吸血鬼少女、いかした男の子を好きになっちゃう。少女はあまり意思表示しないんだけど、作り手が男の子目線じゃなくて、この少女の側に立っているというのが、なんとなく感じられる。その辺が私なんかにはレディースコミック風の味付けが感じられて、ちょっと付いていけない感じ。

 そこそこスプラッターではあるのだけど、作り方がやはりインディーズで、娯楽映画を作ろうとしているわけじゃない。インディーズといえば、画面は耽美的というのかゴシックな味わいなのに、音楽の使い方がマカロニウエスタン風だっり、いかにもなインディーズ・ロックだったりというのがチグハグなのだけれど、どうもそれを狙っているフシもある。またここで使用された曲は知らない曲ばかりだけれど、みんな面白い曲ばかり。サウンドトラックCDが出ているので、ちょっと欲しくなってしまった。

 男の子は猫を飼っているのだけど、この猫が実にいい動きをする。もちろん演技じゃない。ラストのクルマのなかでのシーン。偶然なんだろうけれど、猫が、ほんとにいい具合の位置で落ち着かないそぶりを見せる。撮影している人間たちにストレスを感じているだけなのだろうけれど、もう猫だけを眼で追ってしまった。

 猫くん、お疲れ様でした。

9月28日記

静かなお喋り 9月27日

静かなお喋り

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