コラアゲンはいごうまん・春風亭一之輔二人会 2015年5月29日 横浜にぎわい座のげシャーレ オープニングの挨拶で、一之輔がコラアゲンはいごうまんに、「いいことがあったんですよね」と話を振る。「はい、私、婚約しました」との答えに会場から驚きの声と暖かい拍手。知り合いにはメールや電話で報告したそうだが、「一之輔さんにメールしたら、返って来た返事が『お相手はコラアゲンはいごううーーまんさんですか?』」「ネタで使わせていただいている組長さんに電話したら『早く孕ませろ。女は孕ませたら、こっちが刑務所入っても逃げることは無い』」。もうネタに入ってるよ。アハハハハ。 今日は、先に春風亭一之輔が二席やって、トリがコラアゲンはいごうまんという構成。一席目は、館林である会で『館林』をやってくれと言われ、持ってなかったので習ってはみたものの、あまり面白くない噺なのでどうしようかと思っているので、ここでやってみると言って『館林』。先日、三遊亭兼好でも聴いたばかり。とにかく変な噺なので、演じ手が少ないが、徐々にこの噺を演る人が増えてきたようだ。まともに演ったんでは「なんだこりゃ」という噺にしかならないのだが、キャラクターを素っ頓狂な男に作ることに成功すれば面白い噺になる。一之輔のちょっと毒のあるキャラクター作りは、うまく成功している。この噺、案外、一之輔に合っているのかもしれない。 二席目はネタ出ししてあった『鰻の幇間』。一之輔の一八は、酒が出てきても、しんこが出てきても鰻が出てきても、世辞で「うまい」とは言わない。酒は口の中でポンと弾けると言うし、鰻は上から押さえると跳ね返る。箸で切ろうとしても切れない。あとから「まるでゴムホースみたいだ」というのには爆笑してしまった。一八がひとしきり文句を言ってからも、一之輔の新しい工夫を入れた笑いは続いて行く。薬味の正体もすごかった。本来、草履のくだりで下げるのが普通だが、そのあともある。このサゲは空前絶後。このサゲにはやられた。 コラアゲンはいごうまんの、体験ノンフィクション漫談は、五つの候補から会場の拍手で『宗教団体の集会に潜入』に決定。これは三年前の社会教育会館、やはり一之輔と一緒に出た『第40回特撰落語会』で聴いている。この縁が元で、にぎわい座での二人会が始まったようなものだろう。このネタについては、そのときに書いたものを、お読みになってもらうことで足りそうだから、リンクを張っておく。 客席放浪記 第40回特撰落語会 今回は自由席だったので早めに行って前の方の席に座ったから、以前とは迫力が違う。コラアゲンはいごうまんの汗だくの顔が見える。教祖様(?)になりきったコラアゲンはいごうまんが、客席の一番前に座った女性に集中攻撃をくらわす。ツバと汗が客席にまで飛んでくる。中にはチラシの束で顔をガードしているお客さんもいる。見ているうちに、急に、コント山口君と竹田君の竹田高利を思い出した。短髪で汗だくで演技する竹田君。「15年お笑いをやって芽が出ません」と教祖に打ち明けるコラアゲンはいごうまん。一生懸命さが、笑いに繋がるかどうかというのは微妙な所。竹田高利は相方がいたから、うまく引き立った。最近ではピン芸人の、あばれる君がこのタイプか。あばれる君は、あの一生懸命さを、良質なギャグのアイデアとペーソスで、笑いに繋げて行った。コラアゲンはいごうまんは、まさに体当たり体験取材での、対象相手とのやり取りを再現してみせることで笑いに持って行った。芽が出るかどうかはわからないが、この人の芸は広い会場ではなく、狭い会場でやる、いわば密室芸。こっそりこの人の体験談を聴いている気持ちになるのが楽しいんだなぁ。 エンディングトークで、次回の予定も決まったことを発表。「付いて行きます」と握手を求めるコラアゲンはいごうまんと握手をした一之輔、熱演で汗を拭いたビショビショの手を気持ち悪がりながらも、まんざらでもなさそう。いいコンビだよね。 5月30日記 静かなお喋り 5月29日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |