渋谷らくご/しゃべっちゃいなよ 2017年度創作らくご大賞発表 2017年12月12日 Euro Live 始まる前に、まずは渋谷らくご大賞の発表。 今年の、おもしろい二ツ目賞には、瀧川鯉八。 そして、たのしみな二ツ目賞に立川寸志。 寸志は45歳で談四楼に弟子入りして、現在50歳だそうだ。この会のプロデューサー役の彦いちよりも二つ上。遅れてきた大器か? 私は今年の3月に『将軍の賽』という珍しい噺で一度だけこの人を聴いたことがある。もっとこの人を聴いてみたくなってきた。 『しゃべっちゃいなよ』は新作落語の発表の場。今日は今年発表されたものの中からのセレクション及び年間大賞を決める日でもある。 林家つる子のは『ストロベリー・フィールズ・フォーエバー』。 別れ話を持ち掛けられるらしいと察した男が、相手の女と会う場所として指定したのは、なんとメイド・カフェ。男はここの常連らしくて、そのことにも女は呆れかえるが、実は男にはもっと深い事情があったという噺。ふたりん゛が話している場所がメイド・カフェといのがわかるまでに少し時間を置き、実はメイド・カフェという意外性にびっくりさせられたが、さらにその先の展開は、さすがに予想をはるかに超えていた。もう発想の勝利。 立川吉笑は、株式投資関連の会社からの依頼で新作落語を作ったときの体験をマクラにして、そこからある遊園地の経営に関する噺『コンプライアンス』。 お化け屋敷が怖いだとか、絶叫マシンが怖いだとかいう本末転倒なクレームに対応して、どんどんアトラクションをつまらないものにしてしまう経営陣というありえない話しながらも、ひょっとしてという経営陣のことなかれの姿勢は滑稽。最後にマクラが結びつくという構成も上手い。 鉄道マニアで、鉄道落語も多く作っている古今亭駒次は『10時打ち』。 全国の、みどりの窓口で発売日の10時から一斉に発売される前売キップ。人気のブルートレインのグランクラスを取ろうと、鉄道マニアが東京駅のみどりの窓口に殺到する。端末は10時0.1秒前に押しても無効になってしまうし、0.2秒あとでもほかに取られてしまう。東京駅と上野駅では、この10時ジャストにボタンを押す名人駅員同士の対決になっていた。 私は鉄道マニアではないから、こういったことには疎いが、落語会のチケット争奪戦でインターネット参戦することはよくあるから、気持ちはわかるなぁ。 玉川太福(曲師・玉川みね子)は、『地べたの二人〜おかずの初日〜』。この噺は私が今年5月に聴いて『おかず交換しない』編というのだと思っていた噺。審査員のひとり美保純が「映画的だ」と解説してみせたが、実にテクニックの効いた手法で引き込んでしまう噺。別に何が起こるわけでもない噺を面白く聴かせてしまう。彦いちに言わせると「ずるい」そうだが、やはり一枚上手。 瀧川鯉八の『人生あやとり』を聴くのは、私は三回目。これはよくできている噺だと思う。途中で「貴乃花親方の好きな言葉は、誇り。嫌いな言葉はプライド」と入れた時には大笑いした。 林家彦いちは、この偶数月に行われてきた会で、毎回一席ずつネタ下ししてきた。そのなかから『という』。 面白い体験談を聞かせようとして実は作り話だった。というパターンが連なっていく噺で、オチを含めていかにも彦いちらしい。 審査員による協議の結果、今年の渋谷らくご・創作らくこ大賞は古今亭駒次。来年の真打傷昇進へのいい弾みにもなった。 12月13日記 静かなお喋り 12月12日 静かなお喋り このコーナーの表紙に戻る |