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客席放浪記

2012年10月4日立川志の輔独演会(エポックなかはら)

 開口一番、前座さんは立川志の太郎『牛ほめ』。頑張ってね。

 立川志の輔一席目は、オリンビックのマクラから、競技の判定の話。それに比べて、笑いというものは人によって面白いと感じるものが違うから難しいというお得意の展開に持ち込み『買い物ぶぎ』
 志の輔の面白さは、この『買い物ぶぎ』もそうだが、『みどりの窓口』、『ハンドタオル』、『親の顔』といったように、世間の常識から逸脱した人間が登場すると、どんどん世界観が狂っていくという構成のときに最大限に発揮されるのかもしれない。今回も頭の中を引っ掻き回される思いでケタケタ笑っているうちに終わってしまった。

 仲入り後は、アコーディオン弾き語りの遠峰あこ。ああ、この人、6月の『面白音楽祭』に出ていた人だ。『シウマイ旅情(崎陽軒のCMソング)』『春はうれしや』『百万円』『(プッチーニ)私のお父さん・京浜東北線バージヨーョン』『東京節』

 立川志の輔の二席目は、英訳された宮本武蔵の『五輪書』が外国人観光客に売れているというマクラから『柳田格之進』。志の輔版は、ほかの誰よりも長いんではないだろうか? 真面目で面子を重んじる柳田格之進を固唾を飲ませる迫力で演じ切る。そこには正に武士がいる。
 あらぬ罪を被せられ、切腹を覚悟する柳田の思い。それを思う娘。一番の友を無くすことになる大店の主。店のことを思い、思い切った行動に出てしまう番頭。それぞれの思いが錯綜し、人気ドラマが生まれる。
 なかでも分が悪いのは番頭。消えた五十両は主人にとっては、遊びに使った程度の額だろうが、自分の立場からすれば大金。思わず格之進に問い質すことをしてもおかしくない。やってはならないことだったのだけれど。
 そして主人。五十両の金を置き忘れるというのはありえないように思うが、案外歳とともに忘れっぽくなってしまったのだろうということは、わかるような気がする。
 この噺を聴くと、つくつづく人間って悲しいなと思う。そして金より大切なものが人間にはあるんだよとも思う。

10月5日記

静かなお喋り 10月4日

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