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客席放浪記

粋歌の新作ベストコレクション

2017年9月15日
内幸町ホール

 開口一番前座さんは、春風亭朝太郎『子ほめ』。そろそろ二ツ目という位置の人だけど、上手いなぁ。言い間違いが一個所あったけど、落ち着いて対処できている。

 三遊亭粋歌の新作落語のなかから、広瀬和生が選んだ三席をやる会。

 一席目は『卒業』これは私も『粋歌新作コレクション2014冬』で聴いていて、面白かったと書いている。カワイイと思った女の子ではなく、なんとなく興味を思っただけの女性を17年間ストーカーして、その女性の痛い人生をのぞき見して、「もうストーカーは卒業します」と言われた三十路女の気持ちとは、いかがなものだろうか。これは女性でないと、いや、粋歌でないと出てこなかった発想かもしれない。
 百栄だとしたら、この男はもっと嫌な男になったに違いない。また喬太郎だともっとすっ飛んだ男。粋歌の位置は、また独特な切り口になる。

 ニ席目は『二人の秘密』。認知症になってしまったおとうさん。妻には遠に先立たれていると思い込んでいるが、奥さんは健在。その奥さんを自分の身の回りの世話をしてくれている女性と勘違いしている。やがておとうさんはこの自分の本当の奥さんにプロポーズする。
 「いい噺だな」と思うのは男目線。女目線だと「冗談じゃない」ということになるらしい。粋歌は、もうひとりの登場人物である娘の目線から語るようにしているとのこと。なるほど、この噺がどこか冷めた風に感じられるのは、そういうことか。

 三席目『影の人事課』。サービス残業に休日出勤を繰り返すOLさん。それを横目に、接待と称して毎晩会社の金で飲み歩く上司に、ちっとも働かない男性社員。そんなOLさんが、落語の『大工調べ』に夢中になり、いつか啖呵を切ってやろうと思っている。そしてそのときがついに訪れる。
 会社員経験のある者なら、よくわかる世界。それを笑いに変えてぶつける粋歌は落語をわかっている。
 いつもランチタイムで入った飲食店で、会社の人の悪口を話しているOLさんたちに遭遇することがあるが、そんな話を聞かされていると、もっと他の捌け口はないのかと感じる。少なくともそんな話が隣から聞こえてくると、メシがまずくてしょうがない。

9月16日記

静かなお喋り 9月15日

静かなお喋り

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