September.12,2005 ゾンビ猫との再会

        この半年をどれだけ楽しみに待っただろうか。以前は春秋の墓参りが苦痛だったというのに、秋のお彼岸を心待ちにするようになっていた。それもこれも霊園に住み着いている猫に会えるからだ。毎回、お彼岸は混雑するので、早めに済ませてしまおうというのが私の習慣。いつも持参する草取り用の鎌、線香に火を点けるためのライター、ゴミを持ち帰る袋などをカバンに詰め込み、今回はそれに加えて、パック入りの鰹の削り節と、蟹風味蒲鉾も買い足す。

        ご先祖様のお墓を参拝して、霊園の入口に戻る。猫の姿を懸命に捜す。盛んに「ニャーン、ニャーン」と鳴いてみたが反応なし。目を凝らして見回したら・・・・・いた! 日陰のベンチの下に動く物体。猫だ! 痩せこけた猫が一匹座っているではないか。近づいていきながら、例のゾンビ猫はいないだろうかと、辺りをさらにキョロキョロ。憶えておいでだろうか、ゾンビ猫については半年前に書いた。

        いた! あのときのゾンビ猫がいた! なんと、もう一匹の猫がいたベンチの上で、長々と寝そべっているではないか。暑い日だった。暑さにバテて眠っているらしい。近づいて、さっそく持参の削り節を取り出す。手のひらに削り節を乗せて、二匹の猫に与えた。猫の舌が手のひらを舐めてくすぐったい。そうしたら、ベンチに座っていた女性が紙容器を差し出すではないか。この女性はそれまでこの容器にキャットフードを入れて、この猫たちに与えていたらしい。「どうもすみません」とお礼を言って、この容器に削り節を入れる。痩せこけた猫は猛烈な勢いで食べ始めた。ゾンビ猫の方は、下半身は倒れたまま。削り節はほとんど無くなったので、ここで蟹風味蒲鉾を取り出す。そうするとゾンビ猫の顔つきが変わった。立ち上がると猛烈な勢いで食べ始めた。その結果、また指まで咬まれた。



        どうやら、この女性は毎日、ここの野良猫に餌を与えに来ているらしい。ここには計4匹の野良猫が住み着いているそうで、今日はあとの2匹は姿が見えないとのことだった。それにしても、このゾンビ猫、不思議な柄をしている。「最初にここに来たときは、もっとキレイだったんですよ」 

        夏バテぎみのゾンビ猫に別れを告げて駅へ戻った。また半年後に来るからね。


このコーナーの表紙に戻る

ふりだしに戻る