愛って言ってイイデスカ *1* |
ゴーイングメリー号は今日も快調に海を走る。
もうすぐ陸も近い。
新しい港が近づき、船員の気分も高まってくる。
「野郎共、メシだ!!」
サンジの声がすると、皆が一斉にキッチンに集まる。
「うおお、肉だ。山盛りの肉だ!!」
ルフィは言うやいなやガツガツと食い始めた。
「へえ、おいしそうじゃない」
ナミの言葉に目をハアトにしてワインを注ぐサンジ。
「ささ、ナミさん、どうぞ」
「んん、ありがと」
「いけるぞ!! うめえ!!」
ウソップも肉にかぶりつく。
「コラ、ルフィ、オレの分を食うな!!」
サンジがルフィの頭をどつく。
「だってサンジの皿にいっぱいあるだろ。うめえから、少しくれ!!!」
涙目になりながら、肉を食うのをやめないルフィ。
「長っパナのを食え!!」
サンジはためらいもなくウソップの皿を指さす。
「冗談じゃねえよ!! コレはオレんだ!!」
皿を守ろうとするウソップ。
肉を奪おうとするルフィ。
いつもと変わりない日常。
ゾロは離れて呆れながら、肉を食っていた。
確かにうまいけどよ。
毎日毎日・・・。
よく飽きずに同じことができるな。
こいつらアホだな。
毎日この三人は落ち着かない。
いつもこんな調子だ。
ゾロはその様子を見ていた。
「ねえ、誰見てるのよ」
近くで同じく3人の様子を見ていたナミがニヤリと笑う。
ゾロは視線をそらした。
「誰ってことねえよ」
ごまかして言う。
やべえ。
ナミはカンがいい。
オレは今、何となくサンジを見ていた。
怒鳴るとことか。
笑うとことか。
どうしたんだ、オレ。
最近、何故だかサンジを目で追っている。
「ああ、来たみたい」
ナミはそういってワインを飲んだ。
誰が、とは言わない。
近づいて来るのは黒いスーツに金髪のコック。
「ナミさん、いかがでしょうか?」
「おいしいわ。でも、私もうデザート食べたいわ」
「かしこまりました。ただいまっっっ!!」
サンジはそう言ってからゾロに瓶を投げてよこした。
「何だよ、コレ」
「てめえの好きな酒だろが。明日、港に着くからな。飲んでよし!!」
そう言うと踵を返し、ナミのデザートを取りにいった。
後ろ姿をゾロはずっと見ていた。
すげえムカツクけど、いいトコもある。
それに、何より・・。
はっ、オレ今、サンジの事考えてなかったか?
何で・・・。
我に返るとナミがゾロの方をじっと見ていた。
「見てたでしょ」
駄目押しで言う。
「うるせえ。このアマ・・・」
図星だったから、ゾロは余計にいたたまれなくなった。
「オイ、レディになんて態度だ!!」
見上げるとサンジが険悪な雰囲気で立っている。
こうなると売り言葉に買い言葉だ。
「知らねえな」
「あんだと、コラ!!」
そしてこれもまた日常化しているケンカが始まる。
「蹴るぞ!!クソ腹巻き!!」
「斬るぞ!!バカコック!!」
二人がじりじりと間合いをつめる中・・・。
「ラッキー。ゾロの肉もらい!!」
ルフィは嬉々としてゾロの食べかけの肉を食っていた。
「あー、オレもとばっちり食う前に昼寝しよう」
ウソップもそう言うと船室に消える。
ゾロとサンジはひとしきり、ケリと剣を交わす。
飛び散る汗。
高まる鼓動。
緊張の瞬間。
アレ?
サンジが我に返ると周りにはもう誰もいない。
皿にあった食いものは食いつくされている。
ゾロもそれに気づいた。
ルフィのヤツ、残さず食いやがって。
「あんの・・・クソゴム」
サンジの怒りは今度はルフィに向けられる。
「オイ・・・」
サンジの眼中には何か言おうとするゾロの姿はもう入っていない。
大股で昼寝をしているであろうルフィの方へ向かっていった。
部屋の中から聞こえる物音。
「いいじゃん・・・」
ルフィの弁解が聞こえる。
ドゴッ。
蹴る音。
「いてぇぇぇ」
ゾロは呆れてその場に立ちつくす。
ついていけねえぜ、全く。
空っぽになった皿。
だが、酒瓶が残っている。
デッキに腰をおろし、酒を飲む。
うめえ。
サンジは船員の好みを良く知っている。
いつの間にかゾロの好みの酒やつまみが準備されている。
いいコックだ。
生意気で憎たらしいヤツだが。
いや、黙って立ってるとサマになるし。
何でああゆう性格なのか。
それで、何故かケンカしちまう。
気づくとケンカだ。
何でだか。