ANNIVERSARY

11月11日

Zoro's  Birthday

tuesday



 
 
 
 
 
 
 

その夜、ゾロは眠れなかった。
サンジのものであろう料理の本をじっと見た。
本の埃をはらい、黙ってページをめくる。
つまらない、料理。
そう思っていたけれど、想いがこもっていることもある。
そう言えば、誕生日には「寿司」食ったこともあったな。
遠い遠い、幻のような記憶。
オレが非力なガキで、夢に全然追いつかない役立たずだったころ。

誕生日なんて、どうでもいいのに。
バカだな。
サンジは黙って料理の研究をし、黙って料理を作り、黙ってオレが食わなかったことを許した。
晩飯はいつものように振る舞っていたウソップ。
サンジもそうだ。
特に変わったところはなかった。
オレはどうすりゃいいんだ。

だって、もう、食い物はねえんだから。
知ってたら、食ったか。
照れくさくて食えなかったかもしれねえ。
はは、バカだなオレも。

本気だった、ウソップ。
「嘘だ」って言ったのが本気の証だ。
サンジが他の奴のモノになると思ったら、すげえムカついて、殺すしかねえかって思った。
あのウソップをオレは殺そうとした。
オレは本気だった。
アイツも本気だった。
だから、絶対にゆずれねえ。

船に一つしかない時計を見る。
もう、次の日になっている。
まだ寝室に帰ってこないサンジ。
ルフィとウソップの寝息が聞こえる。

ゾロは静かに部屋を出た。
サンジの本を手にして。
月明りの元でサンジは煙草をふかしていた。

「なあ、てめえの本だろ、コレ」
ゾロは背後から声をかけた。
「もう、いらねえ。そんな本・・・」
サンジは振り返らない。
ずっと水面を見つめたままだ。

「悪かった」
ゾロが詫びの言葉を口にしてもサンジは振り返ろうともしない。
「別に。オレが勝手に作ったんだし・・・。
オレ、よく食いたくねえもん作っちまってるみてえだけど」
ゾロは返す言葉もない。
メシがまずいからじゃねえ。
お前を大事に思ってねえからじゃねえ。
「悪かった」
言葉足らずの気持ちを表現出来ずに繰り返し、あやまる。
オレは誕生日なんてどうでもいい。
オレはメシなんてどうでもいい。
それよりも、てめえの方が大事なんだ。
この気持ちをどう言えばいい?

「オレのメシなんてどうでもいいくせに」
「どうでもよくねえ」
ゾロは即答した。
いや、本当はメシはどうでもいいんだ。
けど、サンジはどうでもよくねえんだ。

「旨いって言わねえし・・・」
「うるせえ!!オレは旨いなんて言わねえ!! メシよりてめえが好きなんだ!!」
驚きにサンジが振り返る。
お互いの視線がぶつかり、一瞬の沈黙。
「聞こえたか!!このバカ!!」

サンジの表情が変わる。
そして悪戯っぽい笑みが。
「あア、聞こえねえなあ」

サンジの言葉にゾロは苦笑した。
静かに近づき、耳元で囁く。
「てめえが好きって言ったんだよ」
サンジは微笑みながら言う。
「聞こえねえよ、そんなじゃ」
「メシよかお前の方がイイ」

やがて至福の時が訪れる。
どんな料理よりも、
どんなプレゼントよりも、
大切なものがここにあるから。
 
 
 
 
 

寄り添う二つの体。

「一番食いてえものを食わせてくれ」
ゾロは思う。
一番食いてえものが一番の御馳走じゃねえか。

「了解、世界一偏食な剣豪殿」
サンジはあきらめたように言った。
作る必要のない食い物。
まあ、いい。
コイツに食わせてやろうじゃねえの。
ちょっと思ってたこととは違うけど。
減るもんじゃねえし。
でも料理されるのは、オレかな、やっぱ。
まあ、いいか。
二日遅れの誕生祝いって事で。
 
 

happy
happy
happy  birthday  Zoro
 
 
 
 
 
 


ANNIVERSARY(ゾロの誕生日)
火曜日「反省するゾロ」編です。
ゾロサン、しかも甘甘で終わる。

そして
★ANNIVERSARY3月2日★
へと続きます。

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