■paralel■
ZORO■
H         S
Y         A
P         N
E         J
R         I
■LOVE■








■18■
聖夜

 
 
 
 

深夜。
ゾロはミホークが出たのを確かめて部屋に帰った。
部屋に入って驚いた。
部屋中の明かりが全てともされ、ろうそくがともされている。
クリスマスの電球が眩しく点滅し、料理が所狭しと並べられている。
小さなテーブルの隅にサンジが座っていた。
コートを羽織ったままで、髪の先まで濡れている。
顔色は真っ白。

どうしたっていうんだ?

ゾロが近寄ろうとした時だ。
「メリークリスマス」
サンジが静かに言った。

ゾロは、どう反応していいのか分からなかった。
サンジの全てを拒絶し、全てを受け入れるような瞳。
ああ、この眼は知っている。
あの時のくいなの眼だ。
同じだ。

「メリークリスマス」
ゾロは初めてその言葉を口にした。
嫌悪感はない。

サンジはワインをついでゾロに渡した。
「最後の晩餐だ」
そう言って微かにわらった。

びしょぬれのままのサンジ。
ゾロは微笑んだ。
「そうだな」
そう言って、料理を食い始めた。
サンジは黙って微笑んで見ていた。
幸せそうな笑顔で。

メシを食わせる。
たったそれだけの願い。
クリスマスを祝う。
たったそれだけの願い。

「クリスマスなんて初めてだ」
ゾロは静かに言った。
「オレはバラティエ以来だ」
サンジは静かに答えた。
もうそれで充分だった。
言葉に出来ない思いの全て。
この空間だけが全て。

こんな行為に意味なんてねえ。
だけど。
どうしてだか、やってしまう。
愚かな行為だ。
まるで心ある人のような。
そんなもの、オレには必要ねえ。

ゾロは食事を平らげるとサンジに近づいた。
サンジの体は冷えきっていた。
ゆっくりと服を脱がす。
サンジの冷えた心。
それはもう暖かくなる事はない。
でも、知っているのか。
お前は機械のようなオレに心があることを知らせてくれた。
憎しみがあるということを知らせてくれた。
不安があるということを知らせてくれた。
後悔することに気づかせてくれた。
誰かを愛するということに気づかせてくれた。
たった一人を愛しく思うということに。
誰かを暖めたいと思うことを。
知らなかった自分があることを。

サンジの冷えた体を暖めるようにゾロは愛撫を繰り返す。
やがてサンジの口からは官能的な吐息が溢れだし、体温が上がる。
サンジの無表情な顔が羞恥と快楽に赤くそまる。
時に優しく、時に乱暴にゾロはサンジの体に触れる。
「・・・ゾロ!!」
サンジを覆っていた殻が外れ、心の欲するままにゾロを求める。
夜の続く限り。
音もなく降り積もる雪。
室内では熱い抱擁が続いていた。
 
 
 

■19■

■地下食料庫■
■厨房裏■