■paralel■
ZORO■
H         S
Y         A
P         N
E         J
R         I
■LOVE■








■2■
狙撃

 

11月11日。
ゾロはいつものように目覚めた。
変哲もないビジネスホテルで朝食を済ますと外に出た。
とうていビジネスマンには見えない。
だが数多存在する無個性な旅人の一人として扱われる。
今は存在しない人間として存在する。

かすかな昔の記憶。
誰かが抱きしめてくれた。
誰かがhappy  birthdayといった。
全ては過去に置いてきたもの。
過去など必要無い。
なのに今日はどうしてだか、存在を無くしたような過去が意識の中に浮き上がる。

その日のヒットは密輸王の幹部、バギーの予定だった。
ゾロは情報通りにその部屋に向かう。
いくら大物といえども、いつもいつも自分の完全に守られたテリトリーの中に入る訳ではない。
時にはそのテリトリーに潜入してヒットすることもある。
だが、今回はバギーはテリトリーの外に出ていた。
バギーには変わった趣味があった。
仮装が好きなのだ。
人の多く通る雑踏や市場で奇妙なピエロのような恰好で楽しそうに歩くのだ。
屈強なボディガードもまた奇妙な仮装をして護衛する。
ゾロはバギーの様子を確認し、ベストポイントに来た時、引き金を引いた。
コンマ1秒のミスも許されない世界。
ゆっくりとバギーの体が崩れ落ちる。

おかしい。
少し、早い。
誰だ。
確実な死を確認しながら、対面のビルを見る。
そこには同じくこちらを見る白い顔があった。
ボディガードが大声で指示を出している。
ゾロは素早く脱出口へ駆け出した。
地下の工事用の通路。
走るっていると、誰かが飛び出してきて、危うくぶつかそうになった。
「アブねえな!!」
暗闇の中、そいつは、道ばたでぶつかりかけたような態度で言った。
まともな人間は生涯通らないような場所。
カンで分かった。
さっきの男だ。
「てめえ、オレより先に撃ったろ!!」
「おめえがトロいんだろ!!」
何故か言い争いになった。

この非常時に・・・。
殺し屋は、殺し屋という雰囲気で無い程、いい。
ゾロを育てた男はそう言った。
拍子ぬけした感じで、それでもゾロは走った。
隣の男も走る。
ゾロは体力がある。
普通の男ならついてこれない。
だが、その男はゾロに離れずついてきた。
同じ抜け道を選び、同じように走り続けた。
二人はほとんど追跡不能な位置まで辿り着いた。

お互いに意識しながら少し離れた場所で休む。
「なあ、てめえ、泊まるとこあんのか?」
暗闇の中から急に話し掛けられた。
カチッと言う音がして、明りがともされる。
なんだ、コイツ。
タバコに火をつけてやがる。
「あァ?あるさ」
「泊めてくれ」
「あァ? 」
その時、どうして断わらなかったのか。
いつものゾロなら・・・。
いや、そういう言葉は初めてだったから。
今となっては何故かも分からない。
 
 

■3■
■地下食料庫■
■厨房裏■