■paralel■
ZORO■
H         S
Y         A
P         N
E         J
R         I
■LOVE■














■20■
運命

 
 
 

新年の鐘が鳴り響き、あちこちでいっせいに爆竹の音が上がる。
ミホーク邸では新年のパーティーが開かれていた。
かなり雪の積もった庭。
ウソップは新年とともにスイッチを入れた。

これで撹乱して、視点をそらすんだ。
オヤジの仇だ!!
最初、話を聞いたときはビビったけど・・・。
あいつら、死ぬ気だ。
いくら方法がなくたって!!確かにこれで精一杯だけど!!チクショウ!!
流れおちる涙が止まらなかった。
オレは死にたくないから、逃げるけど・・・。
お前らのことは忘れない。
命がけでオヤジの仇をうってくれた。

「泣くな!!」
側にいたナミが怒鳴った。
ルフィが逃げる時の手助けを頼まれていた。
ミホークを倒せば全ての敵が消える。
これでもう苦しむことはない。
ココヤシ村の仇がうてる。
ゾロ・・・。
あたしはあんたがミホークの息子だってことは知っていた。
だから、シャンクスはあんたを選んだ。
なんて運命なの。
ミホークは「知って」生かしていた。
どうしてなの?
自分を裏切ったゾロを。
自分を殺そうとしていたゾロを。
ミホークの力をもってしたら、ゾロを消すこともできたでしょうに。
 
 

館のあちこちでいっせいに火花が散る。
「おお!!今年はひときわ素晴らしい!!」
真昼のように雪の庭を照らしだす花火に幹部たちが感嘆の声をあげる。
顔色を変えてかけだすガードマンが叫び声をあげ崩れおちる。
突如、庭中に御気楽な音楽が響き渡り、スピーカーから一斉に声が流れ出た。
「やあ!! ミホーク!!!オレの名はモンキー・D・ルフィ!!」
血相を変えて飛び出していく男たち。
ミホークは舌打ちをして緊急避難通路のスイッチを押した。
地下の一室に足を踏み入れる。
 
 

「ナミ!!!」
飛び込んで来るルフィを乗せると車を急発進させた。
「うまくいってるわ、今のところ」
泣き続けるウソップを無視してナミはルフィに話かけた。
ルフィは無言で館の方を見ていた。
・・・サンジ。
お前は、本当にこれで良かったのか?
どうして、そんなに死に急ぐ?
オレ、待てたのに・・・。
だけど、オレ、お前が好きだから、お前に頼まれたから、やっちまった。
こうするってことはお前が死ぬってことだって知ってたのに。
オレ、シャンクスに逆らってでもお前には生きて欲しかったのに。
オレはミホークを越える男になる。
オレはシャンクスを越える男になる。
だけど、お前はいない。
サンジ、お前は一人しかいない。
代わりなんて誰にもできやしない。

オレは、もうすぐこのボタンを押す。
あの部屋ぐらいは吹っ飛ばせる。
全てを壊す。
ミホークの証も。
ゾロの証も。
サンジの証も。
そしたらサンジは大好きなバラティエに還るんだ。
サンジの大好きなゼフのもとに。
ゾロと一緒に。
オレとは違うところに、行く。
ルフィの見開かれた眼から涙がこぼれた。
手もとにはサンジの体につけた爆弾のスイッチ。
 
 
 
 
 

ミホークの強みは一人で行動することだった。
ボディガードや側近を必要としない自衛力と強い精神力。
ミホークしか知らない部屋にいる男を見つけても、驚きの表情すら浮かべなかった。

「やあ、死にぞこないのロロノア・ゾロ君。それとうちの男娼のサンジ君」
無言で銃を構える二人に笑みさえ浮かべる。
「他の男のモノになったってわけか」
ドアの向こうから、足音が聞こえてくる。
もう一刻の猶予もない。
チャンスは今しかない。

絶対絶命のはずなのにこの余裕はなんだ?
ゾロとサンジにかすかな動揺が走る。
喋らせたら、負けだ。
ミホークが銃を抜いた。
二人の銃がいっせいに火を吹く。
ドアが開けられ、ボディガードがつっこんでくる。

やった!!!
サンジは確信した。
ゾロも確信した。
崩れ落ちるミホークの体。
間違い、ない。
サンジの体に鋭い痛みが走る。
ゾロの体にも鋭い痛みが走る。
ゾロはサンジの笑顔を見た。
サンジはゾロの笑顔を見た。
 
 
 
 
 
 
 
 

視界が閉ざされ、やがて全ては真っ白になる。
音も消え、光も消え、闇も消え。
怒りも憎しみも消える。
すべてが消え、白に還る。
 
 

最初から始まる白に。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

end

■あとがき■
■地下食料庫■
■厨房裏■