■paralel■
ZORO■
H         S
Y         A
P         N
E         J
R         I
■LOVE■













■4■
制裁

サンジは人の気配に目を醒ました。
動こうとした体を男の腕に引き寄せられる。
見ると緑頭の男は熟睡していた。
胸には尋常でない傷が斜めに走っている。
指先でゆっくりとその傷をなぞる。
いつも殺しの後は熟睡できない。
だから、酒を飲んだり、誰彼なしに寝る。
寝たって、いつも後味が悪い。
だけど、今日は、ぐっすりと眠っていた。
夕べの記憶はほとんど無い。
だが、体には情事の後がはっきりと残っていた。
抱き締める腕をゆっくりと引き剥がし、サンジは男の側を離れた。
静かに服を身に着ける。

身支度を終え、ドアに向かう。
満足そうに眠り続ける男を振り返るとサンジは静かに部屋を出た。
 
 

ゾロはキモチよく寝ていた。
・・・・。
目がさめる。
んあ?
ああ、ホテルの部屋か。
あれ、昨日・・・。
アイツは誰だ。
不意に蘇る記憶。
肉体の感触。
乱れたベッドが昨日の記憶が本当の事なんだと告げる。
あれは、何だったんだ。
あいつは、何だったんだ。
茫然と立ちつくす。
恐らく、二度と遭うこともない相手。

一瞬の火花が散ったような情事。
刺激的すぎる肢体。
 
 
 

ゾロは無言でテレビをつけた。
昨日のヒットの事はどのニュースも流していない。
ギャングの抗争として闇に葬られていくのだろう。
幹部ですらそうだから、殺し屋の生死なんて誰も気に止めない。
 
 
 
 

不意に、忘れていた記憶が蘇る。

「失敗には死を」
その男は言った。
「女子供なら奴も油断するかと思ったが、このような不始末をしでかすとは」
ヒットに失敗したくいなが輪の中にいた。
「殺せ」
無表情に興味もなさそうに言い捨てるミホーク。
オレ達は殺人集団として訓練されていた。
成功には報酬を。
失敗には死を。
報酬?
来る日も来る日も殺しの方法しか考えない殺し屋が一体何を買うのだ。
命の価値など一瞬に失われることを誰よりも知っているのに。
何のために生きる?
何のために殺す?
同じくらい答えをもたない行為。
「誰が殺る?」
しばらく沈黙が落ちた。
誰もが年若い少女に手をかけたくなかった。
ある意味家族のような存在。
「オレがやる」
ゾロの声に誰もがはっとしたように振り返る。
親友のような二人。
ライバルであり共に戦う仲間。

ゾロはゆっくりと足をすすめた。
くいなの目の前まで行って銃を構える。
ゾロは知っていた。
くいながこのヒットを成功させないであろうということを。
秘かに調べた自分たちの出生。
それぞれが彼等の父や母の名を発見した。
くいなの項に書かれていた名と同じヒットの相手。
自分を捨てた相手。
集めた情報の中の映像で微笑むくいなにそっくりな少女たしぎ。
幸福につつまれた少女。
存在も捨てられ、顧みない父親。

ヒットはヒットだ。
いつものように引き金を引けばいい。
だが、くいなはそれをしなかった。

どうして。
違う道を選んだ。
ゾロはくいなの目を見た。
静かな瞳だった。
こうするしかないの。
心の声が聞こえた。

ゾロは迷わず引き金を引いた。
くいなはゾロを見たまま崩れ落ちた。

「それでいい。失敗には死を」
再びミホークの声がした。
ゾロは無表情で立ち尽くしていた。

同じだ。
死は平等のはずだ。
誰が誰を殺しても。
病気で死ぬのも、事故で死ぬのも。
死ぬものにとっては同じことなのだ。
それが早いか、遅いか。
いつか来るその日を誰も選ぶことはできない。
くいなはそれを選んだのだ。
生を拒否したら死しかない。
裁きはどこにもないのだ。

それからゾロはミホークの組織を抜けた。
あるヒットで失敗して死を偽装した。
ミホーク側のデータ上は死んだことになっている。
抜けてミホークと敵対するシャンクス側で今は働いている。
「魔獣ゾロ」
知る人ぞ知る、100%のヒットで誰もが名を知る殺し屋。
狙われたものは誰も生きることはできない。

ゾロは新しい酒を一気にあおると静かに目を閉じた。
 
 
 

■5■

■地下食料庫■
■厨房裏■