■paralel■
ZORO■
H         S
Y         A
P         N
E         J
R         I
■LOVE■










■5■
記録

 

「今度のヒットはクリークよ」
死のメッセンジャー、ナミが言う。
ゾロはデータを受け取った。
ナミはシャンクスの子飼いの女だ。
常に冷静で、的確な指示を出す。
最近、抗争が激化している。シャンクスの幹部もヒットされた。
シャンクスはクリークの周りの幹部を順に消すようにしているらしい。

ゾロはディスクをマシンに入れ、情報を見る。
ヒット相手のクリークの行動・生活・趣味。
あらゆるデータを分析する。
毎日、そればかり繰り返していると側にいて寄り添うような感じすらするから不思議だ。
長時間かけてクリークのデータを見る。

見終わると違うディスクをかけた。
ナミに依頼しておいた、この前の男のデータ。
画面にはメガネを掛けた映像が出ている。
名は「サンジ」。
フリーの殺し屋。
殺しより体のほうがよく売れる。
だが寝た相手は殺される。
データはごく僅かだった。
別のディスクに手を伸ばす。
「すごいマニア男のお宝画像集からコピーしたの。本人が居るって言ったら、絶対アイツ、犯りにいくわよ」
何枚もあるディスク。
ゾロは眉をひそめた。
ディスクの中には暴力的なセックスシーンが映し出されている。
画面の中で男達に好きなようにいたぶられ、犯されているのはサンジだった。
男娼どころか性奴隷という雰囲気だ。
「未確認情報だけど、この子はバラティエ惨劇の生き残りで、フリーになったのは抱え主のクロを殺したかららしいわ」
ナミの言葉を思い出す。

バラティエ惨劇。
10年程前にミホークが名をあげた有名な事件だ。
当時、かなりな顔役であったバラティエのゼフ以下、幹部全員を彼等の店、バラティエで皆殺しにしたという事件である。
裏の世界ではミホークの残酷さを物語る時、必ず話題に上がる。
残虐非道な手口に事欠かないミホークの「逸話」の中の一つだ。

ゾロは無表情に画面を見つづけていた。
残酷な場面は見なれている。
画面のなかで悲鳴をあげる少年を見ても哀れみの感情すらうかばない。
何千人といる犯される子供の一人だ。ヒット対象を調べる時に数多く見る淫行の画像。それと何ら変わらない。
男好きする肢体や仕種。娼館に行けばこんな子供だらけだ。
かなり上等な部屋だ。だが部屋がいいからってそこにいる人間が優れているとは限らない。
まともな人間なら正視できないような行為を喜々としてやっている。
サンジに乗っている男を見て記憶を辿る。
ああ、この男・・・。もう死んでるな。ミホークの幹部の一人だった。

人はどんなことをしても生きるものだ。
生きようとする意志があれば生きられるし、意志がなければ生きられない。
「クロ」という男はデータ上知っている。
名調教師だったらしい。男を仕込み、男娼館を仕切っていた。
元はミホークのタイプの男を仕込む仕事をしていただけだが、その才覚でのしあがった。
だが、2年前、急に誰かに暗殺された。

「サンジ」が殺したのか。
自然にそう思った。
やはりアイツは敵じゃなかった。
ミホークに怨みを持っているのだろう。

だったらオレたちは似たもの同士だ。

だが、知って?
知って何になる。

ゾロは再びデータに目を落とした。
 
 
 
 
 

■6■
 
 

■地下食料庫■
■厨房裏■