ゴーングメリー号の日常はあわただしい。
サンジはいつものように、
朝食をつくり、
おやつをつくり、
昼食をつくり、
おやつをつくり、
夕食をつくり、
夜食やつまみも時にはつくり、
下ごしらえをして、
片づけをして、
料理の研究をする。
その上に食料が不穏に減らないように警戒も怠らない。
女の子にはやさしく、
野郎どもには適当に。
そうは言っても、
ルフィのためにおやつも作っちまう。
「サンジ!!!!
今日のおやつはプリンか!!!!」
ルフィがキラキラと目を輝かせてやってきた。
「ゾロ呼んでくる!!!」
ルフィはそう言うとキッチンを飛び出していった。
最近、いつもゾロとルフィは一緒にいる。
前はそうでもなかった。
おやつ作っても、
ゾロは寝ててこねえから、
オレが起こしにいってた。
もっとも蹴って起こすんだが・・・。
ゾロは最近、
オレを避けてる。
っていうか、ルフィとべったりだ。
・・・ムカツク。
ムカツク。
なんかすげえ「なかよしこよし」ってカンジ。
なにかというとルフィ呼んでいろいろ話してる。
そりゃオレは後からこの船に乗ってるわけだし、
ルフィとゾロが仲がいいのは知ってる。
・・・ゾロとケンカなんかするのはオレくれえだからな。
気がつくといつもいつもケンカ。
だってムカツクじゃねえかよ。
自分勝手で気が利かねえ体力バカ。
オレの料理をうまいとも言わねえし。
オレをバカにしたこと言うし、
「スキ」とかそういうこともちっとも言わねえ。
なのに、
あーんなことや、
こーんなことはシてる。
この前なんて、
「てめえはなんとなくオレとヤってるんだろ」
ってぬかしやがった。
だから、
「あたりめえだ。誰がスキ好んでやるか」
って言い返してやった。
なんとなく?
きっかけはなんとなくかもしれねえけど、
なんとなくオレが男になんか抱かれるかってえの。
てめえだから、
ヤらせてやってんのに、
人の気も知らねえで。
・・・そりゃ、
オレだって言ってねえよ。
だってよ・・・言えねえよな、やっぱ。
ゾロが「スキ」だなんて。
やっぱゾロも嫌かもしんねえし、
バカにされそうだし・・・。
でも、最近ゾロのことばっかし考えてる。
可愛いナミさんやビビちゃんが目の前にいる間は忘れていられるけど、
レディがいなくなると、
ゾロのこととかいろいろ考えちまう。
「うおーーー!! ゾロ、すげえ!!」
「オイ、ルフィもやってみろよ」
ルフィとゾロの笑い声がキッチンまで聞こえてくる。
・・・ゾロってオレには笑ったりしねえもんなあ。
でもルフィには笑うんだ。
ルフィはいいやつだから、
みんな「スキ」だ。
・・・ゾロも「スキ」なのかな。
オレより「スキ」なのかな。
ズキン。
胸が痛む。
オレはただの性欲処理で、
ゾロの本当に「スキ」な相手はルフィだろうな。
・・・へへ、オレってバカみてえだよなあ。
クソッ。
これって嫉妬ってやつだよな。
あいつらの声を聞くのもイヤだ。
あいつらを見ていられねえ。
だってオレには何もできねえから。
明日はゾロの誕生日だ。
「てめえのためにイヤだけど特別に料理作ってやる。
何がいい?」
オレとしちゃ最大限にへりくだって聞いてやったのに、
ゾロの野郎ときたら、
「メシは作らなくてもいい。
陸で過ごしたい」
なんてぬかしやがった。
あいつにとっちゃ料理なんかどうでもいいんだろうが、
オレに出来ることはこれしかねえんだよ。
オレは誰かの誕生日を豪勢な料理で祝うのが好きだ。
だってみんな幸せになれるじゃねえかよ。
うまいもの食って、
みんなで騒いで、
満ち足りた気持ちになる。
だけど、
ゾロは「オレの料理」はいらねえってことだよな。
この船から離れて一日過ごすってことは。
あーあ、
なんか体が重いよなあ。
クソ。
それでも、オレはルフィのためにプリンを皿に乗っけてやる。
あいつは落ちたものでも食うからどうだっていいんだろうけど、
料理人の矜持っていうやつだな。
とりあえずテーブルセッティングは完璧に。
本当はゾロやルフィを見ているのは嫌だ。
だけどオレは偽りの笑顔を浮かべプリンを作る。
そして完璧に給仕してみせる。
これから先もずっと。
こうするしかねえだろ。
こうするしか。
でもイライラする。
落ちつかなくて、
ムカムカする。
クソ。
どってことねえ。
こんなこと。
「ルフィに嫉妬するサンジ」です。
サンジ独白。
アマノジャクなサンジ。
これでは気持ちが伝わるわけがありませんね。