ura-top  地下食料庫  November  Rain
November
Rain
 act 1
all  blue

 
 
 
 

その街は廃虚でうめつくされていた。
あちこちに瓦礫がちらばり、
人の気配のしないしんとした建物がただそこにある。
この街がいわゆる政府の管理が行き届かなくなって久しい。
圧制への反乱。
暴力と混沌の支配する街。

そんな街でも生きている者はいる。
そんな街でしか生きられない者がいる。
 
 
 
 
 
 

さびれた通りの奥にその店はある。
店の名は「オールブルー」。

一歩足を踏み入れると、
そこは混沌とした世界だ。

ぎっしりと人で埋め尽くされたフロア。
アルコールや麻薬の香り、
人いきれでむせ返る店内。
絶え間なく激しい音楽が流れつづけ、
混み合う人を押しのけるようにしないと、
カウンターには近寄れない。

「・・・知ってるか。
ポリスがこの街に潜入してるって話だ」
「見つけたら生かしちゃおかねえさ」
「この街には法なんざ、いらねえのさ。
オレたちノースブルーの天下になるのさ」
「おい・・・ここは、オールブルーだ。
発言は控えな。
唯一の緩衝地帯だからな」
「けっ!!  くだらねえ」
「ここにいるかぎりのんびり酒がのめるってもんだ」

「そういえぱ、サウスブルーじゃ反乱が起きてるそうじゃねえか」
「カスどもも押さえられねえボスじゃ役不足だな。
消される日も近いな」
「ちげえねえ」

「オイ、女がいるってよ」
「どこだ、どこだ!!」
男たちはいっせいに声のする方につめかけた。
ここには女はほとんどいない。
「サウスブルーの幹部の女らしいぜ」
「女見るのも久しぶりだな。
やっぱ違うぜ」
政府すら手出しできない危険な場所。
女はいても誰かのモノとして扱われるか、
娼館につれていかれるか。
運悪くそこで生まれた子供はそこで生きるしかない。
女は少女のころから売買されるからほとんど一目に触れることはない。
めったにお目にかかれない珍しい生き物。
縁遠い存在。

この街の男たちがもっているものは、
憎しみと、
プライド。
それでも仲間を求め、
徒党を組み、
上をめざして戦う。

何も持たない男たちの吹きだまり。
この地でしか生きられない、
この地しか知らない男たち。

ここで生まれ、
ここで死ぬものも多い。
どこからともなく流れ着いて他に行き場のない者たち。
生きているだけで運がいい。
死はつねにそばにある。
今日隣にいた人間が明日は冷たい骸となる。
くり返される毎日。

生きようとする意志は続く。
たとえどんなところでも、
どんなときでも。
それは人の本能。

生きることの意味など必要ない。

重要なのは生きていることなのだから。
 
 
 
 
 
 
 

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