Rain |
act 13 realize |
サンジはタバコをふかしながら、
ゆっくりとゾロに近づいていった。
目の前には鋭い目つきをして刀をたつ男がいた。
体じゅうから殺気を漂わせている。
誰かが言っていた。
「あいつは機械のようなヤツだ」
と。
「あの目見たか。ケモノだぜ」
そうだ、ゾロ。
魔獣になれ。
目の前の獲物を食らうただのケモノになれ。
「コリエシュート!!!」
サンジのケリが空気を震わし、
ゾロを襲う。
凄まじいまでの風圧と威力。
ゾロはとっさのところで蹴りをかわした。
・・・こいつ、やるな。
軟派な見てくれからは信じられないほどの蹴り。
強ええ奴とは戦ってみてえ。
闘争本能がかき立てられる。
戦えば・・・、
どちらかが倒れる。
いや、オレは負けねえ。
躊躇していると、
サンジが身軽に宙を舞い、
ゾロは腹部に激しい衝撃を受けてふっとんだ。
・・・クソ、やるじゃねえか。
「なあ、雨が降りそうだぜ。
11月の雨になんて濡れたらカゼひいちまうだろ。
とっととカタつけようぜ」
能面のような冷たい表情でゾロを見下ろすサンジ。
こんなサンジは見たことがねえ。
ゾロは痛みをこらえながらサンジを見上げた。
「・・・サンジ・・・なぜだ・・・」
呻くゾロの側にしゃがみこんで、
サンジはしばらくゾロの顔を黙ってみた。
それから、
かすかにシャツを開いて自分の胸を見せた。
ゾロがそこに見たのは、
白い肌に残るまぎれもない情事のあと。
自分が絶やすことなくサンジにつけていたものと同じの。
・・・許せねえ。
頭の中が真っ白になった。
そんなゾロを見て、
サンジは艶麗な笑みを浮かべた。
許せねえ。
許せねえ。
サンジがヒトのもんになる。
・・・そんなことは・・・させねえ。
サンジは誰かに抱かれてる。
・・・許せねえ。
コイツはオレのだ。
「とどめさしてやるぜ」
サンジの体が高く宙に舞う。
ゾロは刀をきつく握りしめた。
オレのものにならねえなら・・・、
コロス。
コロス。
「獅子歌歌!!!!!!」
凶悪な殺意とともに剣が降りおろされる。
ぽたり。
サンジの体から血がしたたり落ちた。
バカな・・・。
サンジ、てめえ・・・。
なんで・・・。
・・・なんで・・・。
・・・なんで、よけようとしなかった。