R20
悪の華
XS

  遠い昨日の記憶  


運命の出会い
Xanxus 5
1





ボンゴレ・ファミリー。
その名を知らぬ者はマフィアではない。
そのファミリーはいつの時代も頂点に居続けた。
誰もがその力にあこがれ、その力の元にひれ伏した。
その力を受け継ぐ者は、すべてを手に入れることができる。
裏の世界を支配する、闇の王。




その少年を九代目の嵐の守護者であるテンペスタが見たのは、
すでに九代目の屋敷に、ただ一人の息子として連れてこられた後だった。

九代目は、一番の側近であるテンペスタにも告げずに、突然、養子を迎えた。

「私の子として育てる」
九代目は、赤い目をしてまわりの者すべてを睨みつけている子どもを手に入れていた。

そうだ。
手に入れたのだ。
テンペストには、ひと目で分かった。
ボンゴレの過去の支配者の幼いころの姿を彷彿させる赤い目の少年。
生まれながらに、目の奥に憤怒の炎を宿している。
それは、ボンゴレの炎のようであるけれど、
赤い目の少年の母である、
狂気をただよわせる黒髪の貧しい女と九代目の間には、何のかかわりもない。
テンペストは知っていた。
九代目には、女性を愛する気持ちがない。
温和でやさしい方だが、偽りの妻さえ持とうとしない。
身体的に不能なわけではない。
若い頃は、ときおり、女性ではないものを相手に欲望を発散されたこともある。
秘密裏に準備した男娼をうまく利用して、女の身体まで子種を運ばせようとしたこともある。
九代目に気づかれてしまい、
周りのことを気遣う方なので、欲望を発散する行為まで自粛されるようになってしまった。
だから、ありえないのだ。
場末の貧しい女が、九代目の子を宿すなど。
あの方の心が一瞬でも、その女に向くことなどありえない。



九代目は何も語らない。
けれど、ボンゴレ二代目の肖像画をときどきぼんやり見つめている様子を見ると、
すべては理解できた。
あなたの心に住んでいるのは、
憤怒の炎を宿すその方なのですね。
あなたは、その方の怒りに触れたいのですか?
憤怒の炎に焼かれて、罰を受けたいのですか?
その方の怒りが、あなたの温和でずっとボンゴレを守りつくすためだけに生き続けている心を解放してくれるのですか?

二代目の生まれ代わりのような姿と、炎を宿した子どもは、
きつい目をしながらも、
九代目の言葉を信じていた。

妄想にとりつかれた狂った母親は、秘密裏に消され、
ザンザスは九代目のただ一人の御曹司といて迎えいれられた。
ザンザス本人も、ボンゴレ十代目を継ぐ者と思っていたし、
九代目の側近たちも、疑わずにザンザスを歓迎した。
九代目自身が一夜のあやまちで、あの女とかかわったことを認め、
ザンザスを大切な息子として扱ったので、誰も疑いを持たなかった。
誰もが、赤い目の少年が、後継者なのだと信じた。

気づいていたのは、テンペスタだけだった。
いつわりの血のつながり。
ザンザスは決して十代目にはなれない。
ボンゴレリングを継承できるのは、ボンコレの血を引くものだけだ。
リングはザンザスを選ばない。
それなのに、九代目は、ザンザスを選んだ。
十代目になれると信じて疑わないザンザスを選んだ。
決して後継者にはなれないザンザスを。







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