R20
悪の華
XS

届かない大空
Squalo14-22
R20
(九代目×S・家光×S ほか)

冷血


(スクアーロ15)



2



 
ヴァリアーをまかされているオッタビオは出世して、本部の仕事も兼ねることになり、
ヴァリアーのアジトから、出て行くことになった。

「ししし。王子、あいつ嫌い。
まあ、ここにいたらいつか殺すけど」
ベルが気に入りの菓子をつまみながら笑った。
「ゔぉおおおい、食った後はちゃんと歯を磨くか、見張るぞぉ!!!」
スクアーロが怒鳴り、ベルがそっぽを向いた。
「ゔぉおおい、行くぞお!!」
菓子がなくなった瞬間にスクアーロがベルの首根っこをつかみ、吊るすようにして、洗面所に連れて行く。
「バカザメ、王子が何でお前の言う通りになんて・・・」
「磨かねえと、オロすぞぉ!!!」
洗面所の方からは騒々しい声が聞こえてくる。

「まったく、金にもならないのに、よくやるよ」
マーモンが宙を漂いながら、首をすくめた。
「あらーーー、ベルちゃんが虫歯になったら、仕事にならないもの。
スクったら、がんばってるわ。
いつボスが帰って来てもいいように、気も抜かないしね」
ルッスーリアはため息をついた。
そう、スクアーロは以前と変わらず、元気いっぱいに見える。
でも、何か違う。
ボスがいる時は、あからさまにスクアーロを殴ったり痛めつけたりしていた。
スクアーロは文句を言いながらも、そんなに深い傷を負っている感じはなかった。
今はそれが内にこもってしまった感じなのよね。
仕事は問題なくこなしている。
誰よりも多くの任務を請け負い、休むことなく働き続けている。
スクアーロは私たちに何か隠している。
仕事帰りは、騒々しく帰ってくるくせに、
本部帰りや一人でどこかに行く時は、誰にも見られないようにひっそり静かに帰ってくる。
気配を消して帰ってくるから、きっと誰も知らない。
声をかけられないくらい痛々しい感じで。
だから、私はわざと見て見ぬふりをする。

スクアーロにはボスが要るのよ。
私たちにもボスが要る。
任務だけじゃだめ。
オッタビオなんかじゃだめ。
あの男は私たちを敬っているような言い方をするけれど、目が冷たい。
ぜんぜん食指が動かないわあ。

スクアーロは、ベルと格闘の結果、なんとか歯を磨かせ寝かしつけると、やっと自分の部屋に戻った。
身体は真綿のように重く、疲れている。
ベッドに倒れ込むと、目を閉じた。
オッタビオがヴァリアーのアジトから出て行く。
そう思うとほっとした。

ここを出ていくと決まった時から、オッタビオから「呼び出し」をされることはほとんどなくなった。
言葉ではねちねち嫌がらせをされるが、
「特別任務」も保留になったままだ。

家光がときどき、オッタビオの事を聞いてくる。
オレがやつにやられたのが気にいらねえみたいだ。
何で気づいたのか知らねえけど、知ってるみてえだ。
・・・誰かに見られたのか?
オレには分からねえ。
やられてると、周りの様子を伺う余裕なんてなくなる。
どうでもいいことだ。
済んだことを考えても仕方がねえ。

ザンザスは帰ってくる。
だから、オレが居場所を守らねえと。
どんなことをしてもヴァリアーを守らねえと。






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