R20
悪の華
XS

届かない大空
Squalo14-22
R20
(九代目×S・家光×S ほか)

冷血


(スクアーロ17)



4



 

スクアーロの髪はますます長くなり、肩を越えた。
けれどザンザスの時は止まったままだった。

ヴァリアーはボンゴレの誇る最強の精鋭暗殺隊として活躍し続けていた。
この地球上で最も強い暗殺部隊だと誰もが認めていた。
時として危険な任務もあったが、だいたいは簡単に片をつけることができた。

久しぶりに大きな任務があり、
幹部は揃って仕事に出かけた。
ボンゴレに逆らうマフィアを一気に壊滅するのだ。

オッタビオは少し後ろにさがり全体の指揮をとっていた。
幹部の殺人能力の高さには毎回驚かされる。
明らかに常人のレベルを越えている。
ベルのナイフはあらゆるものを切り刻み、
ルッスーリアは笑みを浮かべながら敵を打ちのめしている。
殺人機械のように彼らは戦い続けている。
まともではない。
戦いの先陣に、
水を得た魚のように剣を振り回し、
ターゲットの間を飛び回るスクアーロがいた。
鬼人か死神のごとき禍々しい雰囲気で、次々に敵を倒して行く。
見事なものだ。
いくら目の前の敵を切り開いても、どうにもならぬというのに。
オッタビオは冷たい笑みを浮かべた。

スクアーロは、ひたすら剣を振り回し、目の前の敵を切り刻み続けた。
全てを壊し、
全てを倒して、
切り開いていくだけだ。
強さを手に入れて、前に突き進むだけだ。
何も考えずに戦っている時だけが、自由だった。
戦っている時だけが、楽しい。
敵をなぎ倒していくと、壮快な気分になった。
だが、そのうち、戦う敵は誰一人としていなくなり、スクアーロは血まみれの戦場に取り残された。

「ゔぉおおおおい、もう終わりかあ?
誰かいねえのかぁ!!!」
スクアーロは誰も動かなくなった戦場を歩き回り、必死で敵を探し続けた。
たたっ切らねえといけねえ。
何もかも壊してやるんだ。
全部切り刻むんだ。
そしたら、限界も切り開けるはずだ。
切らねえと!!!!

「スクアーロぉ、何してるのよーーー、帰るわよぉーーーー」
いつまでたっても剣を手にしたまま、戦場から離れようとしないスクアーロを見かねたルッスーリアが大声で叫んだ。
最近のスクアーロは、度を越しているように見える。
もともと好戦的で強い相手が好きだったけれど、あえてひどい戦いに身を投じているような・・・。
今だって、もう敵なんていないのに、必死で敵を探し続けている。
もう、戦う相手はいないというのに、まだ探している。

「むっ、まだ敵を探しているのかい。
けど、しょうがないね。
スクアーロは、今しか息抜きが出来ないんだよ」
マーモンが宙にさまよいながら言った。

「ししし。まあ王子も同じだけどね」
「ベル、君は僻地まで殺しに出かけてるじゃないか。
おかげで今、イタリアには殺し屋がいないって噂になってる」
ベルはため息をついた。
やっぱり、ボスがいないとつまんねーし。
籠の鳥みたいになって、大人しく言う事を聞くなんて、王子の性に合わないし。
スクアーロは相変わらず、うざくてうるさいけど、たまに何か思い詰めた顔をしてぼんやりしている。
そんなのバカザメらしくねーじゃん。

「ご苦労さまです。そろそろ撤収しましょうか」
様子を見ていたオッタビオが、何食わぬ顔をしてスクアーロに近づいた。
スクアーロは血にまみれて立っていた。
オッタビオは眉をひそめた。
全身血だらけになりながら、ぎらぎらした目でオッタビオを睨んでいる。
ぞくりとするような凶暴な目だった。
私が今は手を出せないことを知っているからか。
ヴァリアー幹部は、少し離れたところにいて、スクアーロとオッタビオの来るのを待っている。
オッタビオはハンカチを出し、鼻と口を覆った。
屍があちこちに転がっている生々しい戦場は苦手だ。
スクアーロは、私が血のにおいや死臭のような醜いものが嫌いなことを知っている。
だから、わざと血を浴びた。
嫌な子どもだ。
私に触れさせたくなくて血を浴びるような、愚かな子どもだ。
汚れがなく、美しいままで仕事を終えていたら、久しぶりに罰を与えてやろうと思ったのに、いまいましいことだ。

「スク先輩血だらけじゃーーん。
王子、お前についた血なんていらないからね」
「うるせえぞぉ!!!!」
スクアーロが怒鳴り、ルッスーリアはため息をついた。
みんなぴりぴりして、不安なのよ。
ボスがいなくなってから、3年。
ヴァリアーはちゃんと私たちが守っているけれど、先が見えないの。
まだ私たちは自由に動けない。
そうね、これは罰なんだから、しょうがないかもしれないけれど・・・。
ストレスたまって大変よ。
私もいい男さがしに励むしかないわあ。
ボスの後はオッタビオが引き継いでいるけれど、実際に力があるのはスクアーロだから、本部からの呼び出しも多い。
スクアーロは、九代目や九代目の守護者たちともたびたび顔を会わせるようで、気苦労も多いみたいなのよね。
いや・・・気だけだったらいいんだけど・・・。
私の思い過ごしであってくれたらいいんだけど。








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