R20
悪の華
XS

届かない大空
Squalo14-22
R20
(九代目×S・家光×S ほか)

冷血


(スクアーロ20)



7



 
沢田家光は、九代目の私邸の裏門で事に及んでしまったことに気づき、舌打ちをした。
スクアーロがここを訪れたあと、送るのは家光の役目だ。
鈍い運転手でも、何のためにスクアーロがここに来ているのかを気づいてしまうからだ。
知らないことは良いことだ。
疑心暗鬼になることもない。
九代目の呼び出しの後、スクアーロの防衛能力は著しく低下する。
それなのに、差し伸べる手を拒否する。
拒否されると、屈服させたくなる。
屈服させると、気丈にふるまっていても屈辱に震え、許しを乞う。
家光は運転しながら、後部座席でぐったりして倒れている姿を確認した。

ゆりかご事件から、もう6年が過ぎた。
スクアーロの髪は長く伸び、背もずいぶん伸びた。
身体もずいぶんたくましくなったが、抜群にスタイルが良く、しなやかな美しさはそのままだ。
幼かった顔だちも、すっきりとし、研ぎすまされ凛とした美貌を見せるようになっていた。
ザンザスの時は止まったままなのに、スクアーロはゆっくりと成長し、光と闇を内包する存在に変わっていた。
ただの子どもだったのになあ。
マフィアに憐憫や同情などは禁物だ。
それも主殺しを狙った罪人に。
処刑人が生温い罰の快楽に染まってはいけない。
冷酷に突き放し、優位に立ち続けなければならない。
そうしないと、この子どもは牙を向けてくる。
何一つ学習せず、その名の通り傲慢で泳ぎ続けることしかできない鮫。
スクアーロの牙は、ボンゴレの敵にだけ向けさせればいい。
6年は長い。
九代目はザンザスを忘れてはいない。
そして、今でも滅ぼすつもりはない。
感情と肉体はついてくる。
九代目の欲しがっているのは、何なのか?
あの方の望みは、我々の望み。

スクアーロは、揺れる車の中で意識を取り戻した。
久しぶりにクソジジイに呼び出されて、
「仕事」が終わって帰ろうとしたら、
家光にひきずりこまれた。
ジジイと家光はセットになっているくせに、一緒にヤることはほとんどない。
笑えるじゃねえか。
とりすましたジジイが興奮してる姿だなんて。
汗臭いオヤジが獣みたいにのしかかってくる姿も。
こいつらは殴りはしないが、何食わぬ顔をして仕事を取り上げたり閉じ込めたり無理な指令を出したりして、
うす笑いを浮かべて嫌なことばかりする。
いろんな奴を苦しめといて、自分は何一つ悪いことはしてませんてツラしてやがる。
ああ、これがザンザスだったらなあ。
猫なで声など虫酸が走る。
ボスになら、殴られてもいいのに。

スクアーロは、外を眺めた。
外は冷たい風が吹いていた。
ちらちらと雪が舞い、
雪雲に覆われ、大空は見えなかった。
雨は凍り付き、
いつまでも解けないままだった。
スクアーロの大空は、
どこにも存在していなかった。

でも。
たとえ可能性が1%でもあれば。
ザンザスは生きていないけれど、死んでもいない。
あの炎が消えるはずはない。
どんな氷の中からでも、いつかきっと甦る。
まぶしく全てを焼きつくす憤怒の炎。
それがいつかこの白くくすんだ世界を変える。
世界を赤く染め上げ、
そこから全てが変わる。
今に見ていろ。
いつかきっと、ボスは帰って来る。
その日まで、オレは待つ。
ボスの帰って来る場所を守って、待ち続ける。







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