R20
悪の華
XS

届かない大空
Squalo14-22
R20
(九代目×S・家光×S ほか)

冷血


(スクアーロ20)



6



 
ザンザスが凍ってしまってから、6年がたった。
突然姿を消した御曹司の存在は、最初からなかったもののように扱われ、
「留学」したまま一度も顔を見せないことに疑問を持つものもいたが、
公の場では決してその疑問を口に出すものはいなかった。

九代目の守護者たちは、「事情」があって秘密の基地で凍ったままになっていることを知っていが、
すべての守護者がそうなったわけを知っているのではなかった。

雷の守護者であるガナッシュは、詳しい事情は知らなかったが、そこには秘密があることには気づいていた。
九代目は、息子であるザンザスを溺愛していた。
身勝手な我がままを許し、いつも機嫌をとっていた。
それなのに、ザンザスは九代目からいつも距離をとっていた。
ザンザスをとりかこむ氷はボンゴレの力の証。
ならばザンザスを凍らせたのは九代目なのだ。
あれほどに甘やかしていたザンザスを理由もなく九代目がそんな仕打ちをするはずがない。
何も語らなくても、ザンザスと九代目を知る者には、何が起こったかは推測できた。

現在はヴァリアーのボス代理を特に暗殺能力に長けているわけではない事務屋肌のオッタビオがつとめている。
ザンザスがいないのであれば、本来ならば剣帝テュールを倒したスクアーロが継ぐのが妥当だ。
しかし、スクアーロはオッタビオの管理下に置かれている。
その他の幹部達もオッタビオの管理下に置かれている。
スクアーロはザンザスの忠実な「犬」だった。
ザンザスだけをボスとし、九代目やその守護者たちに全く敬意を払っていなかった。

ヴァリアーは着実に任務をこなし、
今もってなお、ボンゴレには不可欠の暗殺部隊だ。
スクアーロとはめったに顔を会わすことはないが、
生意気なだけの子どもは、
形だけでも敬語も使えるようになった。
ごく稀にだが、ともに仕事をすることもあった。
黙って動かずにいると、できのよい人形のようなたたずまいなのに、
目の前の敵を捕らえると様子が変わった。
凶暴な鮫のように剣で敵を切り刻み、なぎ倒して行くその姿は、ぞっとするほど危険で美しかった。
いつの間にか背中まで伸びた髪は、
冷たい美貌によく似合っていた。

スクアーロはたまに九代目に呼び出しを受けているようであったが、
それは寛大な九代目が優しい言葉をかけ、
反抗心のないことを確かめているためだと思っていた。
ガナッシュは、何の疑いも持っていなかった。
あの日までは。




それは本当に偶然だった。
それは、冬の寒い日だった。
九代目の欲しがっていためずらしい木の苗を見つけたので、
いつもなら訪れるはずのない九代目の別宅に向かってしまい、
突然の思いつきだったため気づかれないように裏門のそばに車を止め、
訪問を逡巡していた。
その時、九代目の別宅の裏門から出て来たスクアーロを見てしまったのだ。
門から出てきたスクアーロは、沢田家光にひきずりこまれて車に乗せられた。
そのまま、しばらく車は動かず、
ガナッシュは気配を消して様子を伺い続けた。

なぜ、ここからスクアーロが出てきたのか?
ヴァリアーとして普段接するときの雰囲気ではなかった?
なぜ、沢田家光は、スクアーロを車に乗せたのか?
こんな目に着く場所で?
あの、家光のひきこみ方は何だ?
あれは・・・まるで・・・がどわかし・・・。
車が小刻みに揺れているのは何故だ?
バカな?
オレは一体、何を考えた?
きっと、仕事のことで何かトラブルがあって、詰問しているか殴るかしているのだ。
家光とスクアーロの間に何かあるというのか?
スクアーロがここから出て来ること自体おかしな話だ。
九代目はこの館で公務は行われない。
では、何故だ?

心臓が早鐘のように鳴り、手がしびれてきた。
スクアーロは最初から異分子だった。
ボンゴレのものではなく、ザンザスのものだった。
裏切り者を生かす場合、それに見合った罰が与えられる。
罪にふさわしい罰が。
ガナッシュは背筋が寒くなった。







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