R20
悪の華
XS

マフィアの血
Xanxus24-Squalo22
X×S ほか S受

選ばれし者






2



  ザンザスはきっと帰って来る。
スクアーロにとってはそれが支えだった。
ヴァリアーの幹部たちの支えもその思いだけだった。
ザンザスがどんなことになっているかを「見た」ことがあるのはスクアーロだけだった。
ザンザスの時だけが止まったままであることを知っている者はごくわずかしかおらず、
口外する者は誰もいなかった。

「うおおおお、ボス、ご無事で!!!
この日が来るのをどんなに待ちわびていたことか!!!」
「そうよう。寂しかったのよ!!!」
レヴィが号泣し、ルッスーリアも涙をぬぐった。
「ししし。お帰り、ボス」
いかにも子どもだったのに、それなりに背が伸びて大人びたベルがそこにいた。
「ボス、8年ぶりだね」
マーモンは以前と変わらない口調だったが、興奮を抑えることはできなかった。
ボスが帰って来た!!!!
ザンザスがそこにいるだけで、空気はびりびりとしびれ、別の空間が生まれたように思える。
ボスは恐怖の王。
そして、それにふさわしい実力も持っている。
やつらはボスを解き放ったことで、全てを失う。
今に見ているがいい。
ボスがすべてを支配する時はもうすぐだ。
スクアーロは流れる血をぬぐいもせず、ザンザスを見上げていた。
凍てついた怒りは、まぶしくて見ていられないほどの炎に変わっていた。
氷は溶けたのだ。
ザンザスの憤怒の炎は衰えるどころか、激しさを増し、憎しみに彩られた瞳は煌煌と燃えていた。
ずっと待ち続けていたのは、この時のためだ。
ボスは戻って来た。
ヴァリアーは元に戻った。
この日を待っていた。
この日を待ち続けていた。
叶えられなかった野望はこれから叶えればいいのだ。
邪魔するやつはたたき斬ってやればいいだけなのだ。

ザンザスはスクアーロの髪をつかんだ。
何だこれは?
このずるずると長い髪は何だ?
「ゔぉおおおおい、離せえ!!!!」
確かにこの頭の悪そうな声は記憶にある。

8年ぶり。
ベルはそう言った。
8年も、たっているというのか!!!
怒りのあまり目の前が真っ赤になった。

スクアーロの髪をつかんだまま、ザンザスは自分の部屋に向かった。
その部屋だけは、記憶のとおりのものだった。
「そのままにしてあるぞぉ。
お前が帰ってくるのを・・・、
オレたちはずっと待ってたんだぁ」
スクアーロの声が、遠くから聞こえるように感じた。
ザンザスにとっては、ついさきほどの戦いだったはずなのに、
すべては過ぎ去ったことでしかなかった。
おのれおのれおのれ!!
怒りのため目の前が赤くなった。
ザンザスはスクアーロの髪をつかんだまま、
たてつづけに殴った。
ザンザスの拳は熱く、燃えるようだった。
スクアーロは激しい痛みを感じながら、
朦朧とした意識の中、
自分にのしかかるザンザスを見た。
ボスだぁ。
ザンザスだぁ。
すげえ怒ってる。
身体中から怒りの炎がゆらめき出しているようだぁ。
ザンザスの恐ろしいほどの怒気を近くに感じ、
スクアーロは陶然となった。
戻ってきた。
ザンザスが戻ってきた。
ザンザスは床に倒れ、ぼんやりと見上げてくるスクアーロにのしかかると、
隊服を引き裂いた。
どうにもならない激情に突き動かされ、
スクアーロの身体に押し入った。
「ゔぁあっ!!」
声を上げたものの、ザンザスの昂りはスクアーロの中に簡単に呑み込まれていった。
ザンザスの知っている薄くて硬い身体は、
しなやかで抱かれ慣れた身体に変貌し、
以前よりずっと抱き心地がよくなっていた。
こいつも嘘つきだ。
オレを待ってなどいなかった。
おのれおのれ!!
すべてを叩き潰してやる!!
カスはすべて灰にしてやる!!!
ザンザスは怒りを吐き出し続けた。








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