R20
悪の華
XS

マフィアの血
Xanxus24-Squalo22
X×S ほか S受

選ばれざる者




2



スクアーロはヴァリアー本部でくだらない書類の整理を続けていた。
ボスは、表向きの仕事のため、一般人のパーティーに行っている。
マフィアとは何の関係もない金持ちたちの集まりだ。
危険も低い。
ボスの護衛にはルッスーリアとレヴィが着いている。
ボスはいつもと違い、普通に髪の毛をおろし、マフィアの服ではなく白いスーツを着ていた。
スクアーロが初めてザンザスを見た時にはもう髪を立てていたから、
普通の頭のザンザスを見たのは初めてだった。
全く乗り気でないため無造作なままだったが、実に似合っていた。
「ゔぉおおおい、ボス、かっこいいなあ!!!!」
思ったことを言っただけなのだが、殴られた。
スクアーロもついて行きたかったのだが、書類整理を命じられた。
どこかの社長令嬢がザンザスにぞっこんで、今回はその女を連れて行くのだとルッスーリアが言っていた。
まったく俗世界とつながりがないように見えるのは好ましくないらしい。
ザンザスが女を連れる時、スクアーロは必ず外される。
どこかに女がいるらしいのだが、スクアーロには誰も教えない。
ベルはザンザスの女でも気に入らなければ刺すと公言しているので、やはり外されている。
「ししし。ちょーヒマ。スクアーロ、まだそんなことやってるんだ?
最近、ボスはつまらないとこばかり行ってるから、
今度ボスのパーティーに潜入して騒ぎを起こしにいかね?」
「ゔぉおおおおい、てめえ、また菓子ばっか食いやがって。食ったらすぐ、歯ぁ、磨けえ!!!!」
「そんなこと必要ないんだよ。だって、オレ、王子だし。
それより、今日のパーティー、跳ね馬も出るらしいんだけど」
スクアーロはぎくりとしてベルを見た。
ベルの表情は長い前髪のせいで分からない。
「跳ね馬がセンパイに入れ込んでたってのは、結構広まってるし」
「ゔぉおおおい、ボスには関係ないぞぉ!!!!!」
スクアーロは声を荒げた。
ザンザスにとってスクアーロは手近にある怒りを発散する道具にしかすぎない。
てめえなんて死んじまえばよかった。
てめえなんてどうなってもいい。
ここに戻ってきてからも、何度言われたことか。
どう思われていても構わなかった。
考えるだけ無駄だ。
自分がついていくと決めたのだ。
「はあ? 何それ? ここで待機させられてむかつかないわけ?」
ベルはいらついていた。
ボスがさらに富や権力を手に入れるのは構わない。
どうでもいい女を利用するのも構わない。
そいつが要らなくなったら、王子が消すから。
ボスをオレたちから取り上げる女なんかいらない。
九代目はボスの嫁探しをしているらしい。
ボスの子どもを産む女。
そんなものオレはいらない。
邪魔者は殺せばいい。
「今のボスの女、マフィアの娘だから、ボスと結婚するかもしれないって」
ベルは出任せを言った。
スクアーロとボスの関係は、ベルとのそれとは違う。
ボスはスクアーロに特別に暴言や暴力を浴びせる。
そして性的な暴行を加える。
スクアーロにだけ。
他の誰かにしたということは聞いたことがない。
スクアーロは何も言わない。
ボスがいない8年間も何も言わなかった。
何があっても、口にしなかった。
王子が何も知らないとでも?
スクアーロはボスがいなくなってから、ずっと何かを耐え続けていた。
ボスが戻って来たのに、今も何かを耐えている。
それって、ちょーむかつく。
王子が、こいつに気を遣うなんてありえなくね?
スクアーロはベルの言葉にすぐ返事ができなかった。
でもそれは、あたり前のことだった。
マフィアの男はそれにふさわしい女を妻とするものだ。
そして跡継ぎを産ませる。
「・・・そうかあ・・・」
他に何も言えなかった。
スクアーロはただの部下なのだ。
望むことも拒否することもできない。
ボスがどんな女を選んでも、オレには関係のないことだ。
オレはボスの側にいられたら、それでいい。
いくら殴られても、構わない。
凍てついた氷の中の姿は二度と見たくない。







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