ただ一度の

BIRTHDAY  

CAKE


 

ゼフ・サンジ
 
 
 

■1■
 
 
 
 
 

海上レストランの朝は早い。
ゼフはいつものようにレストランをざっと点検し、
コックたちの様子をさりげなく眺める。
「オーナー、クソおはようございます!!」
威勢のよいコックたちの挨拶があちこちで聞こえる。

コツコツという独特の足音が床に響く。
客のいないレストランはがらんとしている。

・・・あいつは、
いねえのか。
ならば、
あそこか・・・。
目当ての子供は倉庫の隅で寝ていた。

あの飢餓の島からこのガキとはいつも一緒にいる。
いくら夢が同じだったからといって・・・
バカげたことをした、
という自覚はある。
脚が惜しかったのではない。
脚などに意味はないのだ。

どうして、
殺してしまわなかったのか。
どうして、
見捨てておけなかったのか。
まったく、
バカげたことだ。

毎日、一生懸命な子供。
「オイ、チビナス!!!
いつまで寝こけてやがる!!」

まだ幼い子供は目をこすりながら目をさます。
ガキだからって甘やかしちゃならねえ。
人の何倍もがんばらねえと、
大人に追い付いて、
追い抜くことなんてできやしねえ。

「クソジジイ!!
なにしやがる!!」
目をさました子供はわめきはじめる。
足をばたばたさせるが、
ゼフに首根っこをつかまれて、
ずるずると引き摺られる。
まるで、猫の子だ。
・・・今日も、
うるせえことだ。
ま、こいつが大人しくなったら、
つまらねえがな。

そこいら辺に放りなげる。
「とっとと、仕事しねえか!!!」
子供は、悔しそうな顔をして言い返してくる。
「うるせえ!!
やりゃいいんだろ!!」
そして、いつもの料理の下準備にかかる。

子供のくせに、
包丁さばきがうまい。
野菜の皮を次々に器用に剥いていく。

最初は、
雑用から始めた。
だが、
才能もあるのだろう。
すぐに、厨房に入れるようになった。

そろそろ下ゆでや準備をまかすことが出来る。
だからどうしたってんだ。
ゼフは苦笑した。
オレはこのガキを甘やかす気はねえ。

オールブルー。
くだらねえ夢だ。
誰もがバカにするような、
夢。
だが、それは、ただの夢なんかじゃねえ。

こいつは夢を受け継ぐ子供。
なのに今はその夢を追おうとはしねえ。
バカが。

てめえ、
あきらめられるのか。
奇跡の海を。

奇跡を・・・。
この海の向こうに奇跡はある。
オールブルーはある。
 
 
 
 
 

■2■
 
 

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