忘却の空
 
 

温室

ワイパー×サンジ
 
 

2
 
 
 
 
 

欲するものは、
いま、ここにある。
 
 
 

戦いとは明らかに異なる高揚感。
常に敵を警戒し、
いかなる時も隙を見せないワイパーの意識がサンジに向けられる。

サンジを見ると、ワイパーは何も考えられなくなった。
まわりの気配も何も感じなくなる。

これまでのワイパーの人生には喜びなど存在しなかった。
戦うこと、
憎むこと、
敵を倒すこと、
それが全てだ。

いくら倒しても空虚。
いくら戦っても空虚。

だが戦わずにはいられない。
じっとしていると苦しくてたまらないのだ。
行き場のない怒りがこみあげてくる。

だが、サンジを見たとたん、
怒りすら忘れる。
苦しみさえ忘れる。
 
 
 

触れて、
抱きしめて、
腕の中の存在を確かめる。

ワイパーが少し力を入れただけで、
簡単にくだけ散るだろう細い身体。
サンジの身体はもうワイパーの手のなかにある。
壊すのは簡単だ。

だが、壊せない。

ワイパーは多くのものを壊してきた。
理想も、
信念も、
信頼も、
もうない。

自分は何も必要として無い。
なのにどうして目の前の少年が欲しいのか。

欲しくて、
欲しくて、
何も考えられないくらい心の中をサンジという色で塗りつぶされる。
 
 
 

最初はただの笑顔しか見せなかった。
そのうちサンジはすねた顔を見せるようになり、
やがて泣き顔まで見せるようになった。

ワイパーを狂わせるサンジの表情と、
抱かずにいられない肢体。

ワイパーはまっしろだったサンジの身体に自分の色を塗り込めた。
禁忌、
そんなものはくそくらえだ。
待って手に入るものなど皆無だ。
だから戦うのだ。
だから人を殺めるのだ。
瞼を閉じると絶えず血が流れていくのが分かる。
自分の血か、他人の血か、判別できない程の大量の血しぶき。

ワイパーは目を開けた。
目の前には怯えたような表情の金髪の少年がいた。
 
 
 
 

サンジ。
お前は誰にもやらない。
 
 
 

ワイパーは目の前の白い身体を強くひきよせ、
力を抜く間もあたえず、
一気に下から貫いた。

「・・・ああああっ」
悲鳴とも嬌声ともつかぬ声をあげ、
無意識にサンジはワイパーから逃れようとした。

お前は、このワイパーのものだ。
逃がさない。
こぼれおちるのは汗と、
唾液と、
互いの精液と。
サンジの目から落ちるひとしずくの涙。

ワイパーを呪縛してやまない存在。
サンジの肉をえぐる快楽と、
生意気な子どもを蹂躙する暗い喜び。

まるで餓鬼だ。
抱いても、抱いても、足りない。
いくら触れても、
いくらサンジの身体の中に入っても、
足りない。

サンジはワイパーの中の鬼を自覚させる。
このまま刺し殺してしまえたら、
楽になるのか?

肉体はサンジの身体を欲し、
精神はサンジの心を欲している。

他の誰であってもだめだ。
今まで誰にも感じたことのない飢餓感。
満たせるのはサンジだけだ。

ここは天国なのか地獄なのか。
目を閉じる瞬間に感じる業火。

今だけは、それを忘れる。
今だけは、サンジを見る。
 
 
 

それは快楽という名の罪なのか?
 
 
 
 
 
 
 

3
 
 

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