calling  you

1
   ZORO*SANJI

act1*海賊王の寄港
 
 
 
 
 

その港は古くから多くの船を見守ってきた。
汽笛。
話声。
女たちの笑い声。
呼び込みの声。
商売人の声。
罵声。
悲鳴。
街の喧噪。
犬や猫の泣き声。
ひっきり無しに運ばれる荷物。
 
 
 

歴史は繰り返される。
誰も時を止めることはできない。
誰も事実を変えることはできない。
それを人は運命と呼ぶ。
 
 
 
 

*
*
 
 

「彼等が来る」
「誰が?」
「知らねえのかい。海賊王さ」
「名前は?」
「モンキー・D・ルフィ。麦わら帽の海賊王だ」
「まだガキじゃねえか」
「オレ知ってるぜ。その仲間の・・・なんてったかな。三刀流の・・・」
「ロロノア・ゾロだろ。そいつはもう海賊王の船にはいない」
「何故?」
「怪我をして船を降りたって話だが」
「海賊王か・・・ちっと拝みにいくか」
「オレたちにもツキのおすそわけがあるかもしれねえからな」
 
 

*
*
 
 
 
 

「ルフィ港だわ」
ナミは船首に座りじっと夕日を見ているルフィに声をかけた。
海賊王、モンキー・D・ルフィ。
人は彼をそう呼ぶ。

夢を手に入れた。
幾度の戦いでも、常に真直ぐ進みつづけた麦わらの船長。
海賊王に、なった。

奇蹟。
奇蹟。
奇蹟。

神の手が彼を選んだとしか思えない。
神に愛されたとしか思えない。

伝説は生まれ、受継がれる。
全ての海賊の頂点に立つルフィ。
相変わらず真直ぐ前を見て、進む。

「メシ?」
ルフィはそう言って笑った。
「さすがね」
ナミも笑った。

毎日繰り返される会話。
だけど。

ここには彼等がいない。
ゾロがいない。
サンジがいない。

ルフィは待っている。
彼等が還ってくるのを。
ふたたび仲間になる日を。

これが夢を叶える代償だとしたら。
安いのだろうか。
それとも、高いのだろうか。
私たちは「仲間」を二人失った。

この夢は叶うのだろうか。
再びみんなでともに航海する夢は。
時は私達を流していく。
流れついた果てには彼等はいるのだろうか。

ねえ、サンジ君。貴男は生きているの?
ねえ、ゾロ。あなたは愛する人を見つけた?
あたし達はあんた達を待っている。

だから。
かえってきて。
ここへ。
かえってきて。
 
 
 
 
 

*
*
2

calling you
地下食料庫
TOP