calling  you

4
   ZORO*SANJI

act4*「サンジ」



 
 
 

ゾロはそいつが来るのを待っていた。
小男を締め上げて得た情報によるとそいつは今日この辺に来る。
この辺の裏取り引きを仕切る男の「愛人」。
秘書といいながら殆ど仕事はせず、寝るのが仕事。
たまに書類を運んだりするくらいで、外にはめったに出ない。

ボスは1年程前から「ブランカ」に骨抜き。
ゾロは懐に忍ばせていた絵を取り出す。
あの小男は、「眼鏡かけてるけどよく似ている」と言った。
ずっと肌身離さずもっている絵。
ウソップが描いたたった一枚のサンジの絵。
もうかなり痛んでいる。
大切な絵。

心の中にはいくらでもサンジはいる。
でも形に残るものといったら。
オレにはこれしかねえ。
絵なんてくだらねえと思ってた。
だが、絵を見るたびに愛しさがこみ上げる。
何でこんな絵に。
絵の中からゾロを見るサンジ。
ただ、愛しい。
愛しい。
 
 
 

船が着き、そいつが下りてきた。
あの金髪。
あのスーツ。
あの立ち姿。

間違いねえ。
間違いねえ。

確信。
生きてた。
生きてた。

海の中に沈んだ傷ついた身体。
みなは絶望的だと言った。

だが、死体はどこにもなかった。
オレはあきらめなかった。

探して。
探して。
探して。
 
 

見つけた。
 
 
 
 

「サンジ」
オレの声は震えているだろうか。
サンジは振りかえらねえ。

「サンジ!!!」
もう一度名を呼ぶ。
振り返ってオレを見た。
訝し気な表情。

「誰だ、お前」
サンジはオレを見て言った。
オレが・・・分からねえのか・・・。

「オレはブランカだ。人違いだ。前にも間違えられたことあるぜ、そいつに」
ゾロは目の前の男を見た。
似ている。
別人にしては似すぎている。
オレのサンジに。

「お前・・・」
「悪いな。本当に別人だ。オレお前のこと知らないし」
ゾロは後頭部を殴られたようなショックを受けた。

オレを知らない?

「お前はサンジだ!! オレを忘れたのか!!」
そんな筈はない。
オレは一瞬たりともお前を忘れたことはない。
サンジのカラダの全てをオレは知ってる。
だが、心は・・・。
心はどうだったのか。

幾度となくカラダは重ねたけれど、ココロを重ねたことはなかった。
想いを口にしたことも。
 
 
 
 

誰だろう、この男は。
ブランカは考える。
オレはサンジってのと似ているらしい。
なんでも海賊王の一味だとか。
そんな奴がこんな内陸にいるわけないのに。

オレはこいつのことなんか・・・知らねえ。
なのになんだか離れがたい。
どうしてなんだ。
本当に知らねえのに。
 
 
 

「てめえ、サンジ!!」
思い出せ。
ゾロは剣を抜いた。
斬りかかる。
サンジなら、ここでケリが返ってくる。

だが、目の前の男は避けきれず、ゾロが懸命に止めたが服を少し切ってしまった。
怯えて震える身体。

「わりい・・・」
これは・・・サンジじゃ・・・ねえ。
落胆。
だが、表情が・・・サンジに・・・似ている。
希望。

「頭が痛え・・・。薬を・・・」
頭を抱えてうずくまる目の前の相手。

「ブランカ!!大丈夫か!!」
振り返ると威厳に満ちた権力者然とした男が立っていた。
ゾロは考える。
こいつがボスか・・・。

「君。人違いだ。服だけのようだから、今回は見逃そう」
自信に満ちた男の口調。
「サンジ」を抱えるようにしてゾロの脇を通り過ぎる。

ゾロは動かなかった。
長い間、剣を手にしたまま立っていた。

あれはサンジか?
 
 
 
 
 

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