calling  you

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   ZORO*SANJI

act5*「ゾロ」
 
 
 
 
 
 

あの男が来た。
「ゾロ」
最初、ブランカを見つけた時は血まみれで瀕死の状態だった。
危険な戦いの証拠。
一目で気に入った。
手当てをさせ、療養させた。
言葉が喋れる程に回復するのにかなりの時間を要した。
ブランカは何も覚えていなかった。
だから、名を「ブランカ(白)」にした。

男に抱かれ慣れた身体。
極まると「ゾロ」という名を口走った。
それが愛する男の名だと分かった。

だから全てを忘れさせることにした。
偽りの記憶。
偽りの暗示。

繰り返し、繰り返し、教え込む。
情事を兼ねた、記憶の改竄。

私は美しい抱き人形を作った。
抱かれることを自分の役目と教え込んだ。
やがて、葛藤が現れた。
頭痛という形で。
そして薬を与える。
ブランカは薬に頼り始める。
薬とともにセットにされた淫行。
全てを受け入れ、私の思いのままになるブランカ。
淫らで美しい生き物。
私は彼に夢中だ。

ブランカなしの生活など考えられない。
彼の「ゾロ」はやはり「ロロノア・ゾロ」だった。
敵のない大剣豪。
ならば彼は海賊王のコック「サンジ」なのだ。
薄々気づいたときに、彼の特性は完全に封じ込むための暗示をかけた。
噂に聞く「サンジ」はおとなしく抱かれるような男ではなかったから。
私には「ブランカ」で十分だ。
可愛らしくて良い声で啼けばそれでいい。

手に入れた。
そう思っていた。

だが、あの男が来た。
「ロロノア・ゾロ」
幸い、ブランカはまだ何も思い出していない。
私の暗示は完璧だ。
だから大丈夫だ。

「ブランカ」が「サンジ」と違うと分かったらそれでいい。
精神の壁の前ではあのゾロといえども立ち向かうことはできない。
彼の持つ力は直線的で肉体的な「剣」だけなのだから。
心の檻まで斬ることはできない。
今はサンジは檻の中だ。
最初から彼はいなかった。
そう、私は最初から「サンジ」という心には会ってない。
 
 
 
 
 

「およびですか?」
ドクターが来た。
こやつはブランカを狙っている。
たまに悪戯もしている。
なぜ黙認しているかというと、腕がいいから。
そして悪戯されたブランカが実に愛らしいからだ。
切なそうな表情は決して私には見せない。
それを見るのは楽しみでもある。

少し悪戯させてやろう。
その代わり、より完全な仕事をさせる。
 
 
 

暗示が完全になれば。
「サンジ」の心は死ぬ。
心が死んだらゾロに奪われることもない。
あの男が探しているのは「サンジ」の心なのだ。
 
 

*
*
 

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