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act7*渇望
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誰かに蹂躙された記憶。
よく覚えてねえ。
記憶なんてオレが認めなければなかったことになる。
そんなちっぽけなもの。
どってことねえ。
たいしたことねえ。
ブランカは汚れた身体を横たえていた。
もう指一本も動かせやしない。
どうだっていい。
オレには何の希望もない。
何の夢もない。
自由なんてないし。
どうだっていいんだ。
どうなってもいいんだ。
望みもない。
オレはボスの言うことだけ聞いてればいいんだ。
そう言ったのは誰か。
分からねえ。
オレはボスのものなんだから。
オレには意志なんてねえ。
誰かがお前は何も考えたらいけない、と言った。
オレには分からねえことだらけだ。
あれは誰だ?
どうして思い出すのか。
分からねえ。
何故あの男を思い出すのか。
オレはもうおかしくなっちまったのか。
それもいい。
ここにはオレの求めるものなんて何一つないから。
開いた瞼からは涙がこぼれおちる。
*
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すすけた宿屋の壁を見ながら、ゾロは考えた。
昼間の「サンジ」。
幻のような不確かな存在。
何故、強奪してこなかった。
誘拐でも何でも、オレは恐ろしくない。
だが、オレは何故それをしなかった。
恐れ。
サンジに拒否されることへの、恐れ。
オレが今していることが全て無に帰すことへの恐れ。
不安。
渇望。
絶望。
だがそれを越えた想い。
会いたい。
会いたい。
胸を掻きむしるような想い。
あいつに会いにいかねば。
そして確かめる。
あいつが本物のサンジなのか。
偽物のサンジなのか。
オレの探してる相手なのか。
*
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