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act9*記憶
その夜は激しい雷雨になった。
ゾロは雷雨の中、剣をとって外へ出た。
稲光りが空を明るくし、雷鳴が轟く。
放電の轟音と落雷の地響き。
降りしきる豪雨。
目を開けていられない程の強風。
風に向かい立ち、ゾロは剣をかざす。
こんなところでオレは死にはしねえ。
オレの剣はそんなにやわじゃねえ。
雷に戦いを挑むような姿。
ずぶぬれになりながら目を見開き、剣を振る。
雨を切り裂き。
闇を切り裂き。
ゾロを阻む壁を切り裂く。
かざされる剣。
蘇る記憶。
*
*
「お前達が勝つか、オレが勝つかだ」
その男はそう言った。
オレ達が、ルフィが「海賊王」になるための最後の敵。
オレ達が勝てばオレ達が「海賊王」を名乗る。
やつらが勝てば、やつらが「海賊王」を名乗る。
生きるか、死ぬか。
最期の戦い。
お互いに死力を尽くして戦った。
皆、怪我をし、苦しい戦い。
だが、主戦力のやつらは片付けていた。
ふらふらのウソップ。
怪我をしたサンジ。
オレはその時、まだ浅い傷しか負ってなかった。
雷雨は敵に味方した。
とどろく雷鳴。
落雷はオレ達の船を選んだ。
船が沈もうとしていた。
オレ達のゴーイング・メリー号が。
それはほんの少しの隙だったに違いない。
誰かが、サンジを狙った。
「危ねえ」
オレはとっさにサンジをかばった。
その時だ。
オレは背中に痛みを感じた。
斬られた。
はっきりそう分かった。
「背中の傷は剣士の恥」
二度目の落雷があり、船は大きく傾いた。
滑り落ちる乗り組み員。
水に沈む船。
オレは激しい痛みの中、サンジの手を掴んだ。
離せない。
その想いだけだった。
何があっても。
絶対に。
サンジの手を離さない。
オレの流れ落ちる血は手をも伝う。
遠ざかる意識。
その時だ。
サンジが自分からオレの手を・・・。
手を。
離した。
何故だ。
何故だ。
何故だ。
オレは薄れゆく意識の中で叫んだ。
オレは瀕死の状態だったらしい。
チョッパーがオレを治した。
背中に走ったでけえ切り傷。
オレは傷を残させた。
恥ずかしくなんか、ねえ。
これは証だから。
*
*
ブランカはボスの胸に顔を埋めていた。
雷鳴。
オレはそれが恐い。
恐ろしくて、恐ろしくて。
気が狂いそうだ。
助けて。
助けて。
ボスはしがみついてくるブランカの髪を撫でる。
「サンジ」にはトラウマがある。
消せない傷が。
多分、雷鳴と関係した何かが。
「ブランカ」が忘れたはずの何かが。
「恐れることはない。快楽がお前を助けてくれる」
そう言うとブランカの中を再び犯す。
声をあげて答えるブランカ。
再び雷鳴。
ブランカは激しくボスを締め付ける。
ふ・・・。
この音だけで私のモノを搾り取るつもりだ。
敏感な子だ。
今にも消えそうな蝋燭の明かりだけをたよりに、むさぼりあう情交。
光が気にならないくらいに。
音が消えてしまうくらいに。
快楽の世界に行きたい。
ブランカは狂ったように身体を動かした。
自分から最奥に男のモノを突き立てる。
何も考えられなくなる位になりたい。
全てを忘れたなら。
もう重荷はない。
苦しくはない。
忘れろ。
何も考えるな。
*
*