Delirious  Blizzard
 
 


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雪の山は冷たく、
空はどこまでも青い。

ただくり返しくり出される歩み。
一歩ずつ、前へ。
一歩ずつ、上へ。

山の頂上には、
まぶしいほどの真っ白な大地と、
じっと見ていられないくらいまっ青な空と、
ここちよく吹き抜ける風。
 
 
 

山を愛する男たちは、
どれほど冷たくても、
その歩みをやめない。

そこに山があるから。
そこに自分をためす場があるから。
そこに自分を満足させる瞬間があるから。
危険と苦しみを乗り越え、
耐えたあとには、
望みが叶う瞬間があるから。
 
 

今日もまた、限界に挑戦する男たちが山にやってくる。
自分を試しに。
自分を確かめに。
 
 
 
 


 
 
 
 

真っ白な銀世界に点のように浮かんで見えるアノラックが少しずつ移動していく。
眩しい光を受けて、目も開けられない程の白。

誰もが無言で苦行のように進む中、
時折、脳天気な話題を出すヤツがいる。

「なあ、これぞバージン・スノウってやつだよな。
レディもこれと同じように真っ白なんだぜ」

ロロノア・ゾロは最後尾を歩いているそいつをちらりと振り返った。
・・・また、アイツだ。
軟派な同級生、サンジ。
大学に入学した時から、ひときわ目立つその金髪。
他人に興味をほとんど持たないゾロの目の前をちらちらするムカつく相手。

「・・・アホか・・・」

ぼそりとつぶやいたゾロの言葉を聞き逃さないそいつは、
急にピッチを速め、ゾロに追い付いてきた。

「あんだと、コラ!!!
レディに文句つけるのか!!!」
線の細い外見から想像もつかないくらい、口が悪い。

「コラァ、てめえら!!!
ぐだぐだいってんじゃねえ!!!」
先頭を歩く部長のスモーカーが怒鳴る。

「あー、分かりました」
サンジは不服そうに最後尾へ戻って行く。

後ろの方から、ウソップに何か言っているのが聞こえる。
「・・・筋肉バカにはつきあってられねえよ・・・。
筋肉がうつったら困るだろ・・」
体力・根性のないウソップをどつきながらも、
何かムカつくことを、べらべら喋り続けている。

これも同じ学年のウソップは、
山岳部に入ったものの、
理由をつけて山に登るのを止めたがる。

歩くのも遅いし、
やる気もない。

「オオオ、オレはこれ以上歩くと、
持病の歩いてはいけない病が・・・」
「あー、そうかよ、ケるぞ、コラ!!!」
最後尾からは絶えず、
ガラの悪い会話が聞こえてくる。

今回、ウソップは部長の命令で、ゾロが脅して山に連れて来た。
ウソップと仲が良いというサンジが最後尾でウソップを歩かせる役目をしている。

あのヤロウ・・・。
またくだらねえことをべらべらと・・・。
ゾロは口数の多いほうではない。
人付き合いを好むわけでもない。
たいていのヤツは、
強面のゾロを見て避けて通る。
学校でもそうだ。

愛想のない鋭い目つきのゾロに進んで声をかけてくる者は皆無といってよかった。
なのに会うだび、意味不明なことを言ってからんでくる金髪。

アイツのことなんざ、
オレには関係ねえ。

ゾロは意識を前方に戻した。

すっかり雪に覆われた峰々が白く輝いている。
 

さあ、これから、
オレは山を制覇する。
山の根にくらいついて、
ねじ伏せて、
頂上に君臨する。

頂点に立った時しか得ることのできねえ快感を得る為に。
どんな快楽もこれを越えるものはねえ。

最高にして、
やりがいのある野望。
それを今から手に入れる。

手に入れる。
それが至福の瞬間だ。
 
 
 
 


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