Delirious  Blizzard
 
 


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頂上が近づき、
空は青さを増す。

ゾロは頂上を目指して、
黙々と歩き続けた。

部長のスモーカーは、
時折立ち止まり、
視界の中に最後尾の部員がいるのを確かめて、
ゆっくりと歩きはじめた。

・・・ちっ、
パーティーってのは、
こういうところが面倒だ。
己のペースで突き進みたいゾロはいらいらしていた。

問題は、最後尾の二人だ。
恐ろしく遅れている。

おせえ・・・。
カタツムリか、カメみてえだ。
あの二人・・・。
ホラふきのウソップと、軟派野郎のサンジ。
ろくなもんじゃねえ。

頂上に向かって黙々と歩いていたゾロはいきなり向きを変えた。
登ってきた道をずんずんと戻って行く。

「オイ、ゾロ!!!!
どうしたんだ!!!」
先輩の部員の言葉を無視したまま、
最後尾の二人を目指して歩いた。

どんだけ遅れりゃ気が済むんだ!!!
 
 
 
 

のろのろと進んでくる二人を見て、
ゾロはちょっと意外な気がした。
てっきり、だらだら来ているものと思っていたが、
ウソップがとてつもなく消耗しているようだった。
それをあまりケらずに、
それでも追い立て続けているサンジは、
まだまだ元気が有り余っていて、
無駄に足踏みなどをしていた。

・・・こいつ・・・、
ウソップにつきあってゆっくり来てたのか。
それにしても、
口ばかりで体力のねえ奴だな。
もう歩けそうにねえじゃねえか。
そんな奴に付き合ってられるか・・・。

しようがねえ。
 
 
 
 

ゾロは無言で倒れそうにふらふら歩いてくるウソップを担ぎ上げた。
そして、頂上めざして真直ぐ歩き始めた。

「・・・・てめえ・・・」
サンジは意外に思いながらも、
ゾロの後について登り始めた。

ウソップを担いでいるというのに、
ゾロの歩みは確実で、
しかも早い。

「・・・たたた、助かった・・・ゾロ。
死ぬかと思った・・・」
ウソップが涙を流さんばかりに礼を言っている。

ゾロは物凄いスピードで先に進んだ仲間の元に近づいていた。
ちらりとサンジを見ると、
すぐ後ろから黙ってついて来ている。

・・・なんだ、
コイツでも大人しい時があるんだな。

ゾロの知っているサンジといえば、
女をナンパしているところか、
誰かとべらべら喋っているところだけだった。

かなり速いピッチで進んでいるのに、
サンジはつかず離れずついてきている。

・・・いつも、これくれえのペースで進めりゃいいのによ。
ウソップ担いでたって、
すぐにトロトロいってる連中に追いつけるってえの。
 

スモーカーは速いペースで追い付いてきたゾロを見て苦笑した。
だが、ペースを対して速めるでもなく、
進み続けた。

いらいらしながら、
進んでいた時だ。
後ろから、
声がした。

「なあ、なんで山岳部には女がいねえんだ?」
サンジが小刻みにステップしながら、ゾロの方を見ていた。
・・・こいつも、イラついてんじゃねえか・・・。

とりあえず無視して、ずんずん登る。
しばらくサンジも無言でいた。
だが、そのうち、またゾロにしゃべりかけてくる。

「オイ、部長ってぜってえ年ウソついてるよな。
免許見たら、22って書いてあったけど、
本当は10才はサバよんでるよな」

・・・なんで部長の免許なんて見たことあるんだ、この金髪は・・・。
ちらっとゾロは考えた。
だが、それよりもゾロですら疑問に思っていた問題だったので、
つい反応してしまう。
「・・・22はねえだろ・・・」

・・・こんな22才がいていいはずがねえ。

「それが22なんだぜ。
オカシイだろ。
納得できるか、てめえ」

「・・・いや」
どこから見ても、
泣く子も黙りそうな立派なおっさんにしか見えない。

「レディで22才ったら、ピチピチだ。
なのに野郎で22は、アレだぞ。
おかしいだろ!!!
間違ってるだろ!!!」

サンジはべらべらと喋っている。
ゾロにはサンジが何を言いたいのかよく分からなかった。

やっぱりヘンな奴だ。

いつの間にか、
先行していた仲間に追い付き、
最後尾をまたゆっくりと進んでいく。

「・・・・だからよ!!!
・・・だよな。
・・そしたら・・・
・・・そう思うだろ?」
サンジがしきりに何か喋っている。
ゾロは適当に相槌をうちながら、
登り続けた。

・・・ヘンな奴だ、こいつは。
意味不明なことばかり言いやがって。
しょうがないので、
「ああ」
と相槌をうつと、
サンジは嬉しそうに話を続けた。

鬱陶しいはずの絶えまない喋り。
なのに、気にならねえ。
何か、喋らせておいてもいいかって気になる。

「・・・んでよお、
そん時のそいつのツラときたら!!!
・・・でさ!!
・・・だから言ってやったわけだ!!」

聞こえ続けるサンジの声。
 
 
 
 
 

そのままかなりの時間登り続け、
やがて、
空の青がどんどん広さを増していった。

視界をさえぎる白い山がどんどん真っ青な空に変わって行く。
頂上に近づくたびに、
空は大きくなり、
身体が空に近づいていく。

「なあ、オレはこん時が一番好きだな」
背後からサンジの声が聞こえ、
ゾロは思わずサンジを振り返った。

・・・同じだ。
オレも、そうだ。

サンジは嬉しそうに空を見上げていた。
「あー、ウズウズすんなあ。
速くてっぺんにいきてえなあ」

ゾロはサンジの視線の先を見た。
遥かなる空。
どこまでも続く、青。
決して下界では見ることのできない、
青い青い空。

そこには果てがなく、
はじまりもない。
 
 
 
 

青い空が音もなく広がっていた。
 
 
 
 
 
 
 


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