Delirious  Blizzard
 
 


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サンジはしばらくぼんやりゾロの顔を眺めていた。
目の前には真剣は目つきをした男がムズカシイ顔をして、
自分を見ている。
・・・遭難?
ゾロのくせに真面目なツラしやがって、
何言ってんだ?

皆はどうなったんだ?
そういや、ウソップが雪崩に飲まれそうだったから、
突き飛ばしたんだっけ。
「ウソップは・・・?」

「わからん」
ゾロは眉をつり上げた。
人の心配よりてめえの心配しろっての。

「そういう時はウソでも、多分無事だろうって言うべきじゃねえの」

だんだんと多弁になってくるサンジを見て、ゾロは一安心した。
さっきは作り物の高価な人形みたいな感じがした。
あまりにも生気が感じられず、
一瞬だめかと思ったほどだ。
「・・・言えば信じるのかよ」

「いや、信じねえ。
だけど、心遣いってのは伝わるじゃねえか。
中には間にうけるヤツもいるから、
やっぱり気休めは言っとくべきじゃねえの?」
サンジはゾロにずるずると引きずられながらも、
べらべらと喋り始めた。
元気になったらなったで、
うるせえ奴だな。
おそらくテントをはったらそこからは動けねえ。
この吹雪ぐあいと視界の悪さを考えると、
決めた場所で生死が決まるといっていい。

やはり、あそこしかねえか。

そう思った時、
サンジがゾロが考えていた場所を指さした。
「あそこがいいんじゃねえの」

同じだ。
コイツは何も考えてねえようにみえるが意外にちゃんと見ている。

めざす場所につくと、
サンジは、「オレは荷物じゃねえってえの」、
とかぶつぶついいながらも、
ゾロと一緒に手早くテントを張り始めた。

あたりはうす暗くなりつつある。
一時的な避難用のものは常備しているが、
本格的な宿営道具は持参していない。
おまけにサンジの荷物は雪に流されてしまった。
まだゾロのは無事だったから、
なんとかなる。
とりあえず、
二人はテントの中に入った。

こんな時、
一番危険なのは無意味に争うことだということを知っているので、
無駄口もたたかなかった。

黙々と準備をした。
だが、基本的に暖をとる道具がない。
ゾロとサンジは無言で固形食で夕食を済ました。
この嵐が過ぎても、
夜は気温が下がり過ぎ、
身動きがとれない。
明日まで嵐が続いたら、
この装備では絶望に近い。

準備が出来たら、
ただ夜が通り過ぎるのを待つだけだ。
だが、これで、夜が越せるだろうか。
ゾロはしみ込んでくる冷気をにらみつけた。
現在の一番の敵はこの寒さだ。

だめかもしれねえな。

ゾロはごろりと横になった。
かなり寒い。
自分は体力に自信はあるほうだ。
寒さにも強い。
だが、気温はこれから下がっていく。
冷凍庫の中で過ごすようなものだ。
何か方法はねえか?
何か?
 
 

 風が吹き荒れる音、
テントに雪がたたきつけられる音、
轟々といううなりのような音が絶えず続いている。
夜通し続くであろう、
不安を与えるような音。
 
 

それまでずっと無言だったサンジが、
急にとんでもないことを言った。
 
 

「なあ、すげえ寒いからセックスしねえ?」
 
 
 
 
 
 


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