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クロコダイル王の即位にあたり、
王のための王冠が作られる。
その王冠の一番前の目立つところには、
世界一の宝石オールブルーがとりつけられた。

ロロノア家の当主が城に向かい、
自ら王のために世界一の宝石を差し出したということは、
またたく間に国中に知らされ、
人々はクロコダイルをほめたたえた。

王の即位の日は、
年が明けた日とされ、
そこから暦が変わり、
クロコダイル暦が始まる。


即位の日まであと十日。



「ロロノア社長、
道路が工事中で通れません。
申し訳ありませんが、この先に田舎道があります。
今時誰も足を踏み入れないようなエリアを抜けて、
お館に帰らせてもらいます」
「そうか」

運転手は 無表情に書類に目を落とす社長をちらりと見た。
彼の雇い主はこの男ではない。
会社役員のミホークだ。
社長が妙なことをしたり言い出したりしたらすぐ報告するように申し付けられている。
だが、これまでは特に変わったことなどなかった。
社長には、行きたいところがあるわけでもなく、
したいことがあるわけでもなく、
欲しいものや食べたいものがあるわけでもなく、
ただ淡々と仕事をしている感じだ。
無駄なことは一切言わない。

この前は、
ロロノア家の宝、
オールブルーを国王の元に届けに行ったが、
社長は何も感じていないようだった。

この男にとっては、
すべてがどうでもいいことのようで、
何にも関心がないようだ。
文句など一切言わない。
優秀な機械を運んでいるようなものだから、
楽な仕事だ。

運転手は誰も乗り込まないような悪路を進み続けた。
このへんでは少し脇道にそれると、美しい湖や山が見える。



いつもは書類しか見てない社長の目がいつの間にか、景色を見ていた。


この景色には見覚えがある。
・・・確かに、ここには来たことがある・・・。

けれど、
頭の中にずっしり砂が詰まっているようで、
重くて何も考えられない。



突然、車が急ブレーキをかけ、つんのめるようにして止まった。



車の前には、鉄球を持った不気味な男が立っていた。




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伝説の秘宝オールブルー

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