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ロロノア家は、
いつもと変わらない平穏さを保っていた。
美しく管理された館と、
幾何学的につくりこまれた庭。
オールブルー事件により破壊された建物は、
美しく甦り、新しい命を得ていた。
その庭の一番奥に、庭師のためにこの館にはそぐわない粗末な小さな小屋が建っていた。
「クロコダイル国王だってよ」
「社長はオールブルーを持って行ったんだってな・・・」
男が二人、新聞を片手に話し合っていた。
オールブルー事件は、
ロロノア家を変えた。
当主だったロロノア・ゾロが死に、
実はミホークとクロが秘かに育てていたという双子の弟、
ロロノア・ロロという男が現われたのだ。
感情のない、機械人間みたいな男だった。
ゾロが生きていたころにいた使用人や社員はすべて栄転と称し、
より給料のよい働き口を紹介された。
二人を除いてすべての使用人は喜んで転職していった。
一年がたち、二年がたつと、
誰もが新しい環境に慣れる。
しかし、彼らは待ち続けた。
庭師として黙々と仕事をこなし、沈黙を守り続けた。
ガサガサという音がし、
人が来るはずのない場所から、
人が現われた。
その男は、血だらけの刀を手にしていた。
ヨサクは立ち上がった。
ジョニーも立ち上がった。
ロロノア・ロロなら毎日見ている。
・・・けれど、今・・・ここにいる男は・・・。
「アニキーーーーーーーーー!!」
ヨサクとジョニーは泣きながら叫んだ。
「おれたち、きっとアニキは戻ってくると・・・」
涙をすすりながら、二人は汚い自分達のすみかに案内した。
「この館はきれいになっちまったもんで・・・、
おれたち、ここだけアニキ風にしてたんです!!」
ボロい建物の戸を必死で開け、
戸口に立っているゾロを手招きした。
「ミホークさんとクロさんは、
アニキの持ち物をすべて処分しようとしました。
ロロノア家の当主にはこんなものは不要だと言われて・・・。
でも、あっしら、命がけでこれを盗み出しました!!」
「たたみ一畳ほどの小ささで申し訳ないですが、
見てください!!
アニキがこの国に戻ってくると信じていました!!」
二人が指さした先には、小さな部屋があり、
そこには天井までびっしりと緑色のものに埋めつくされていた。
「腹巻きの国にとうとうゾロのアニキが戻って来た!!」
「あっしら、死守してきたかいがあったというものです!!」
頭ががんがんして、
ゾロは頭を押さえた。
ヨサク。
ジョニー。
確かにおれはこいつらを知っている。
腹巻きの国?
なんだ、それは・・・?
あのギンという男は何と言っていた?
サンジさん。
だれだ、それは・・・?
あの男は、そいつのために命をかけて、
おれに挑んできた。
男気あふれるやつだった。
おれに・・・この腹巻きを託した・・・。
サンジさんの腹巻き。
サンジさんを助けてくれ。
助けて・・・?
サンジ。
誰だ?
おれは・・・そいつを知っている。
そいつは・・・おれにとって・・・大切な・・・。
かけがえのない・・・。
たった一人の・・・。