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ナミは相変わらずビビやたしぎと遊び歩いていた。
だが一向に作戦が進む気配がない。
もうすぐウソップがロロノア家に潜入する。
といっても、サンジが注文する特別な食材を毎日届ける配達人だ。
うまく何かの修理にありつけるといいんだけど。
多分、サンジ君がどこか壊してくれるでしょう。
この前の電伝虫では元気がなかった。
「・・・ナミさんとパーティーでお会いして、
恋の呪文をいただきたかった・・・」
とかなんとかぶつぶつくり返すばかり。
「今、腹巻き男のことは考えたくない」
とか言って、
いつもの悪口オンパレードすら出ない。
サンジ君って、
静かになったり、
無駄口たたかなくなると調子悪い証拠なのよね。
やっぱり何の手がかりも掴んでないようなのよね。
変わったことといえば、
アルビダの機嫌が物凄く悪いみたい。
ゾロが来るところには必ずあらわれるアルビダ。
アルビダほどの女なら、
何か知ってるかもしれない。
今日のパーティーはコーザの家。
何か収穫があるといいのだけれど。
ゾロとサンジはパーティー会場に向かって歩いていた。
最近元気のなかったサンジはうきうきしていた。
久しぶりのレディの集団。
ああ・・・。
忌わしいことは忘れて、
いざ花園へ。
「アルビダおねえさまがいる!!!!」
嬉しそうにアルビダを発見するサンジをゾロは無言でながめていた。
「そういや、このごろ、来ねえじゃねえかよ!!!!」
「てめえ、あの女が好きだな・・・」
「あたりめえだ!!!! 美しいレディはみんな好きだぜ。
かーっ、なんでてめえなんかと!!!!」
「夢に見るくらいだもんな」
サンジはそれがいつかに思い当たった。
「・・・てめえ・・・」
楽し気な表情が一変して険悪な雰囲気になる。
「あん時ゃ、酔ってたんだよ!!!!
大体、よく覚えてねえ!!!!!」
どうみても認めているような発言だ。
ゾロはニヤリと笑って言った。
「オレは酔ってなかったぜ」
反論しようとした時、
アルビダがゾロに近づいてきた。
サンジはゾロを押し退けると、
アルビダに近づいた。
「ああ、おねえさま!!!
お久しぶりです。
今宵、女神のようなアナタにお会いできて、光栄です!!!!
あり?」
アルビダはサンジを無視して通り過ぎ、
ゾロの腕をつかんだ。
「話があるのよ。
こちらへいらして」
あとには取り残されて固まるサンジ。
・・・相変わらずだわ、サンジ君・・・・。
ナミは心から溜め息をついた。
知らない人のふりをしよう・・・。
そして様子を見て、
ゾロとアルビダの会話の聞こえるところへ忍び寄る。
「どういうことなの、ゾロ。
もう来るなって・・・」
「もうお前とヤる気がなくなった」
「あのパーティーの日からよね。
誰か他にオンナができたのね・・・」
「そんなんじゃねえ」
「じゃあ、そのままシてちょうだいよ。
私の目当てはアンタよ。
アンタの財産や宝石じゃないのは知ってるでしょ」
「ああ」
「だったら・・・」
「とにかく、来てもヤらねえから」
「ちょ・・・ゾロっ・・・待ってよ!!」
ナミは背を向けたが、
ゾロはそこにナミがいることを見つけた。
・・・あの女、
やっぱり怪しい。
調べる必要がありそうだ。
会場に戻ると、
大勢の人が歓談していた。
ゾロは無意識に黄色いアタマを探していた。
・・・いねえな。
どうせ、
またオンナについていってるんだろう。
それとも、
オトコか?
しばらく飲んでいたが、
気になるので探すことにした。
しばらく探したが、
どこにもいない。
変だな・・・。
庭の木になんとなく座っている時だ。
人影が動いている。
「ナミさん・・・こんなところで二人きりとは素敵だ!!
今宵の月は二人を祝福してくれているようです!!」
この声、この台詞・・・。
あいつしかいねえ。
バシッという音がした。
殴られたらしい。
「・・・ナミひゃん・・・」
それから、
小声で何か話しているため、
ほとんど内容は聞き取れない。
あの女が色事でサンジを誘ったとは考えられない。
ということは・・・、
仲間か!!!!
最初から馴れ馴れしく話していた。
あまりにも自然だったので、
怪しいのはあの女だけだと思っていたが・・・。
そうか・・・・。
あの女の狙いは・・・、
おそらく「オールブルー」。
そういう目をしている。
ちゃちな宝を盗むようなけちくさい目じゃねえ。
サンジは恐らく、
ナミの仲間。
だが、
オレのコックだろ。
オールブルーか。
あの石は持つ者を選ぶ。
ふさわしいもののところにしかあの石は行かねえ。
盗れるものなら、
盗ってみろ。
ミホークやクロが知ったら、
サンジを即追い出すだろうな。
・・・隠しておくか。
時には秘密も必要だ。