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スモーカー警部は急な呼び出しを受けた。
かの世間を騒がす麦わら盗賊団から予告状が届いたのだ。

「伝説の秘宝、オールブルーはいただく」
それだけの短い文とおなじみの麦わらのマークの入った短い手紙が、
警察署の署長の机の上に置かれてあった。
神出鬼没の盗賊団で、
スモーカーは盗賊団を追い続けていた。
だが、まだ何の手がかりもない。
麦わら盗賊団を真似た犯罪も多く、
謎のままだ。

オールブルー。
噂にきく、最高の宝石。
持ち主は、大富豪ロロノア・ゾロ。

とにかく、行くしかねえ。
愛用の葉巻きに火をつけると、
集めた情報書類をポケットにねじりこんだ。

ロロノア・ゾロ、19才。
複合企業の社長。
めったに人前に姿をあらわさない変人。
警察のアポにも返答なし。

バカにしやがって。
直接のりこんでやる。
 
 
 
 
 

でけえ屋敷だな。
どうやら門らしきものを見つけ、
呼び鈴のようなものを鳴らすが、反応がない。

かなり待ったが、
まるっきり人の気配がない。

スモーカーは葉巻きを吸い終わると、
おもむろに立ち上がり、
柵を乗り越えて、
庭に入りこんだ。
広大な庭が続いている。

だが人の気配はまるでない。
畑のようなものもあるし、
果樹林もある。
遥か彼方に建物が見える。

あれが、屋敷か。
えれえ遠いじゃねえか・・・。
ってことはあの門は「初めから出る気がねえ」ってことか。
まったくバカにしてやがる。

考えつつ、屋敷の方へ向かうことにした。
あたりの様子を伺いながら歩いていると声が聞こえてきた。
 
 
 
 

「・・・うるせえ!!
てめえと話すことなんてねえだろ!!」
こっそり木陰に忍び寄ると、
金髪と緑頭が見えた。
 
 
 
 

サンジはイラついていた。
あの夜のことは葬りさりたい記憶だ。
あの後、ゾロには好きなようにされた・・・と思う。
途中からの記憶がすっかりないので、確証はないのだが、
聞けるわけがねえ。
圧倒的な力の差。

ガキのころ、世話になったジジイがよく言っていた。
「オトコをヤろうなんてヤツは、自分の強さをみせつけてえだけだ。
だから、サンジ、てめえは強くなれ。
てめえみてえな弱くさいガキはいい対象だからな。
弱いからヤられるんだ。
弱いてめえが悪いんだ」
ガキの頃からよくヤられかけたことがあった。
・・・なら強くなりゃいいんだ。
ヤられるヤツは弱いヤツだ。
オレは負け犬になんてならねえ。

・・・だけど結局ヤられちまった。
ジジイの言う通りだ。
ヤられるってことは、
ケンカで殴られたり、負けたりするよりタチが悪い。
「あれで勝った気になるな!!!」

サンジの言葉に、ゾロは複雑な表情をした。
あれからサンジはゾロを避けまくっていて、
メシの時ですらいない。
やっとこの果樹園で捕まえたのだ。

「あん時ゃ、つい、その、まあ、ちっとヤりすぎたかと・・・」
ゾロとしても少し反省していた。
ヤったことに関しては納得していた。
ヤりたくさせるコイツがいけねえんだ。
ただゾロの場合、本気になってしまうと魔獣状態になってしまうらしい。
完全にキレてたので好き放題した気がする・・・。

目の前をちらつくとムカつくが、
目に入らないと気になってしようがない。
あまりに気になるので、
サンジを探してぐるぐる歩いた程だ。

「なんだ、てめえ、ビビったのか?」
緊張感のないゾロの言葉にサンジが怒鳴り返す。

「てめえ・・・、あんなことしといて!!!!
オレはまだあっちこっち痛えんだ!!!!!!!!」

ゾロはサンジの答えに眉をつり上げた。
「見せてみろ」
「見せれるか!!!!!
こっ・・・このっ!!!!
オレの純潔を返しやがれ!!!!」

「・・・ヤっちまったもんはしょうがねえだろ・・・」
ゾロのだれた答えにサンジはますます怒りをつのらせた。

「据え膳だろ、アレはよ。
それに・・・てめえだって、だんだん慣れて・・・」
「言うなあ−−−−!!!!!!!」
サンジの蹴りが思いっきり入り、
ゾロがスモーカーの方へ吹っ飛ばされてきた。

ドカッ。
ゾロの身体がまともに隠れていたスモーカーに当たり、
勢いでスモーカーは地面に叩き付けられた。
「んあ? 誰だ・・・てめえ」
スモーカーをクッションにしたゾロはすぐに立ち上がった。
 
 
 
 
 
 

「スモーカー警部だ。
オールブルー盗難予告事件を任されている。
警察側から打診をしたが返答がないので直接屋敷を尋ねた」
 
 
 
 

警察だ。
サンジは一瞬我に返った。
ここからが正念場だ。
結局、「体当たり作戦」はひでえ目にあっただけで何一つ分からなかった。

ゾロが漏らすオールブルーの情報こそがナミさんの狙いだ。
「情報は金」
ナミさんの信念だ。
 
 
 
 
 
 

「協力はいらないそうだが、
そうはいかない。
麦わら盗賊団と我々は呼んでいるが、
我々のずっと追いかけている盗賊団だ。
捜査に協力しない場合は、
こちらとしても何らかの策をとらざるを得ない」

「勝手にしろ」

スモーカーはロロノア・ゾロを見た。
それからさっき言い争っていた金髪の男を見た。

「早速だが誰だね、彼は」

「ああ、オレのコックだ」
 
 
 
 
 
 

スモーカーはサンジを値踏みするような目で睨み付けた。
・・・これがコックか?
大体、今の会話はコックとするにしちゃ妙なものじゃねえのか?
「据え膳」とか「純潔」とか・・・。
要注意だな。

「我々は宝石のある場所に最高の警備をしてみせる」
スモーカーは宣言した。

「宝石はどこだ」
「さアな。勝手に探せ」
ゾロの返事にスモーカーはくわえていた葉巻きから盛大にケムリを吐き出した。

「面白い。
見つけて、このスモーカーが守ってやる」
 
 
 
 
 
 
 


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