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サンジはムカついていた。
始めてこの厨房に来て、
試しに料理を作った。
スペシャルアイスドリンクだ。
タージリンティーをベースに、
ちょっと蜂蜜やアルコールなんかも入れてあり、
甘くないがまろやかな味に仕上がったはずだった。
だから試飲してくれるやつを探した。

金持ち特有のバカ広い屋敷をぐるぐると歩いていると、
腹巻き男が寝ていた。
それもガンガン日が照ってるってとこで、
寝ていた。

起こして、
そいつに試飲させた。
愛想の悪そうな男はそれでも、
「イケるな」
と言った。
サンジはそれで満足し、
また厨房に戻る・・・はずだった。
だが、腹巻き男ゾロの通りに言われた道を進むと、
林に出た。
さらに進むと森に出た。
森の向こうには山があり、湖があった。

森に来てようやく、
道が違うことに気づいた。
だが、
ゾロは自信満々に指さしたのだ。
・・・あの、クソ野郎・・・。
今度あったら、オロす。
知らねえなら、知らねえって最初からいいやがれってんだよ。
1時間近くかけて、
やっと厨房に帰って来た。
・・・大体、
こんなにクソ広いのに、
なんでこう人が居やがらねえんだ。
建物はすげえよ、確かに。
だけど人の気配がしねえ。

「ロロノア家がコックを募集してるわ!!」
ナミさんとお別れするのはつらいが、
ナミさんのためだ。
それにひょっとすりゃここには溢れんばかりのメイドさんとか、
ウエイトレスさんとかお姉様がいらっしゃる気がしたんだが・・・。
・・・どうしたわけか、一人もいねえ。
大体、オレがここに来た時は、
執事のミホークってやつがいて、
ちょっと案内してくれただけだった。
作る料理も一人分でいいってか。
御主人様の分だけでいいんだとよ。
肩書きは「ロロノア家料理長」。
なんか泣けてくるぜ。
常駐してるのは執事のミホークと秘書のクロと庭師兼庶務のヤツが3人いるっていってたな。
そこに料理長のオレ。
御主人様とやらを入れても7人?
ちょっとしたテーマパークみてえなこの家に・・・。
まじかよ・・・。

ナミさんが「ロロノア家に入れなくて困ってる」って言ってた訳だ。
ウソップは行商人としてここに入り込む予定らしいけど、
こんなんじゃロクに話も聞けねえ。
今会ったのは執事のミホークと秘書のクロだけだが、
話なんてできそうにねえ感じ。
・・・まいったな。

あーあ。
あの腹巻き男も最近ここに来たにちげえねえ。
ってことは次々人も辞めてんのか?

厨房に帰ると、
もう夕食の支度をする時間だった。
厨房にはミホークがいて、
サンジの帰りを待っていたようだった。
「スタミナのつく肉料理ならなんでも良い。
それから食後には酒のつまみが要る」
どうやら、
ここの御主人様ってのは、
酒は好きらしい。
樽でどっさりと仕込まれていた。
オレは厨房のろくでもねえ食材と調味料を見て確信していた。
前の「料理長」ってのはクソ野郎だ。
あれでロクな料理が作れるわけがねえ。

「御主人様は一人で食事をされる。
我々は別室で作って食べるのでお前も適当に食事をしろ」
てっきり全員の分を作るものと思っていたが、
違うらしい。
・・・一人で食うって?
・・・一人で食えって?

冗談じゃねえ、
陰気くせえ。
サンジはのどまで出かかった言葉を飲み込んだ。
・・・いかん、いかん。
オレは「素敵なスパイ( ナミさんが言ってくれた・ハアト)」
なのだ。
クールにキメてやるぜ。

「ああ、分かった」
勝手が分からない厨房を確認しつつ、
一応夕食を作りあげた。
しかし、ミホーク指定の時間になっても誰もあらわれない。
・・・御主人様は気紛れだから、
それにあわせて食事を出すのが仕事だと、
確かにそう言ってはいたが。

巨大なテーブルの上に料理をセッティングし、
サンジは御主人様が来るのを待った。

豪華な大理石の一枚岩は、
20人くらい座れそうだ。
そこでいつも一人で食事をしているという。
まったく、
金持ちってのは何するか分からねえもんだ。

・・・遅えな・・・。
これじゃ、温めなおさにゃならんな・・・。
あーあ、今日はクソ疲れたな・・・。
そのうちに猛烈な睡魔が襲って来た。
サンジは机にもたれかかるとまぶたを閉じた。
 
 
 
 
 
 
 
 


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