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ゾロはサンジの捕らえられている監獄にやってきた。

帰ってサンジの蹴り壊したという部屋も見たが、
いつもより、ちょっとハデに壊したくれえじゃねえか。
たいしたことねえだろ。
警備はクロとミホークに任せてあるので、
どこに何も装置があるのかは口出ししていない。

・・・そんな部屋あったんかよ。
ゾロにとって興味のないことはどうでもいいのだ。

・・・サンジは厳戒体制で警備されているという。
案の定、
受け付けてもくれない。

「あのなあ。
オレがいいって言ってんだから、
釈放してくれねえか」
法律上無理なことは分かっていたが、
一応言ってみる。
 
 
 

「ロロノア・ゾロか!!!」
振り返るとスモーカーが立っていた。
ゾロとはサンジの逮捕以来始めて顔を合わせた。

「コックを連れて帰りてえんだけどよ」
スモーカーは奇妙な顔をした。
普通は・・・。
自分の宝石を狙った容疑者を引き取ったりしねえ。

「保釈金はいくらだ?」
保釈は出来ないことになっていた。
麦わら盗賊団は警察にとっては憎い敵だ。
ただの窃盗や破壊の時とは扱いが違う。
現在容疑者は黙秘を続けている。

「ゾロ、お前がその場にいたらサンジを逮捕させたか?」
「させねえ」
ゾロの即答にスモーカーは苦笑いした。
「だろうな」
保釈に来るくらいなら、
逮捕なんぞさせやしねえ。

だが、ミホークは逮捕させた。
それが意味するものは何だ?

「クロやミホークはあのコックを必要としていないようだぞ」
スモーカーの言葉にゾロは沈黙した。
その通りだ。
ミホークなら逮捕を止められた。
それが加担している。

ゾロが動かなければ、
おそらくサンジは二度と帰ってこない。
だから、来たのだ。
これは彼等の意に反する行為だということは分かっている。

「オレのコックはあいつだけだ」
スモーカーは葉巻きに火をつけ、
大きく煙を吐き出した。

「・・・2.3日したら会わせてやる。
それまで大人しくしていろ。
上層部はオールブルー事件はこれで解決するといっている。
麦わら盗賊団もこれでおしまいだと」
「オレには関係のねえことだ」

スモーカーは帰って行くゾロの後ろ姿をじっと眺めていた。
オレの仕事は犯人を捕まえること。
それだけだ。
別に、今のサンジの状態をゾロに見せたくねえってんじゃねえんだ。
あいつらがどういう関係だろうと、
オレには関わりのねえことだからな。
 
 
 
 
 
 

ゾロは無言でヨサクの作ったメシを食っていた。
不味い。
どうしてだ。
サンジが作ってねえからか。
サンジがいねえからか。

メシ後、しばらく座って手酌で酒を飲んでいた。
それから、屋敷の外れにあるミホークの部屋へ行った。
そこにはクロがいて、何か話をしているようだった。

「オイ・・・。アイツを逮捕させたのはお前らだな」
「ああ。
麦わらの一味と分かれば終身刑だ。
彼等は大衆には支持されているが、
権力者達の恨みを買っているからな」
ゾロの形相が厳しいものになる。

「はっきり言おう。
あんな男と羽目を外すのは、ロロノア家の当主としてふさわしくないからだ」
「羽目を外す? 誰がだ?」
クロは呆れたような顔をした。
自分のやっていることも分からないのか、この当主は。
「よく聞け。今度はチョッパーの酔狂ではすまされんのだぞ」
「何だ、そりゃ?」
ゾロは考えた。
でも何を言っているのか分からない。
「アイツはつれ戻すぞ」
ゾロはそう宣言した。
クロとミホークは顔を見合わせた。

彼等の作戦は失敗に終わった。
まさかゾロがここまで執着していたとは。
いままでのゾロなら寝ている相手が離れたらそれっきりだ。
追いかけもしないし、振り返りもしない。
ちょっと引き離すだけで良かったのだ。
だから、今回も引き離すことにした。
警察という権力を利用して。

なのに・・・。
ゾロは言い出したら絶対に実行する男だ。
「つれ戻す」と言った限り、
どんな方法を使ってもやるだろう。
 
 
 

「ゾロの人生からサンジが削除できないとなると、我々の計画は実現しなくなる」
抹殺すべきか生存さすべきか。
既に一度、削除に失敗している。
恐らく生存していたならば、
ゾロはサンジの存在に引きずられるだろう。

「まったく・・・・。
こんなことになるとは」
ミホークはため息をついた。
 
 
 
 
 
 
 


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