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スモーカーは頭を抱えたい気持ちになっていた。
あの後サンジには騒乱罪の容疑までつけ加えられた。
騒ぎのせいで、サンジは面会禁止だ。
もともとサンジの担当はフルボディだった。
フルボディの今までのふるまいとサンジを見る目つきに妙な胸騒ぎがする。
スモーカーは己のカンを信じている。
とりあえず、
直接の担当から外し、
尋問もスモーカー自ら行うことにした。
上層部も最重要容疑者に警部自らが取り調べを行う事に関しては異論がない。
それも数々の輝かしい実績を持つ、
たたき上げの警部だ。
最初は料理のことから話を始め、
時間をかけてゾロのことに話を移した。
それから問題の事件の日に話を持って行き、
サンジが壊そうとしたものを言わすために、
粘り強く待った。
時間をかけ、
サンジの心がほぐれるのを待った。
そうしたら、
ついにサンジがその日のことを喋り出した。
「だってよ。
その夜のオレは本当に据え膳なんかじゃなかったんだ・・・。
そう思うだろ、アンタも?」
「・・・」
スモーカーは自分が変な汗をかいていることに気づいた。
「わりいのはゾロじゃねえかよ・・・。
あんなことして・・・」
サンジはそう言いつつ、
口をとがらせぶつぶつ言いながら、
机の上に「の」の字を書きはじめた。
・・・なんだこれは!!!
なんだこれは!!!
このスモーカー、
今までふざけた取りしらべをしたことはない。
手を抜いたマネをしたことはない。
不満や怒りを噴出させるために、
「ゾロに言いたいことはねえか」
と尋ねた。
確かに、
「困ってることはねえか」
とか、
「相談にのってやる」
とも言った。
サンジから出て来た答えは・・・。
ゾロにヤられたから始まって、
どうしたら上手くゾロとやっていけるかという内容だった。
解決方法?
知るわけねえだろ。
こんなものにかかわりたくねえ!!!
これにはかかわりたくねえ!!!
「なあ、ゾロにもうしねえように言ってくれよ」
・・・。
上目づかいにスモーカーの様子を見ながら、
サンジはずっと困っていたことを打ち明けた。
オフレコにするからと言われたし、
どうやらスモーカーはアレを知ってるらしいし・・・。
どうせバレてるんだ。
とにかくゾロとのことを解決しねえことには、
宝石を盗むも何もできやしねえ。
現に、泥棒らしいことはあの館ではさっぱりやってねえ。
やましいことはしてねえんだからよ。
「オレはあんなことしねえアイツならメシ作ってやってもいいんだからよ」
・・・・。
スモーカーは意味のない取り調べに呆れ果てていた。
こういうことはオレの理解の範疇を越えている。
・・・答えられん。
数時間かけて聞いたことは、
ゾロにヤられて困っているということだけだ。
あとはひたすらゾロへの文句・・・・。
大体コイツは自分の置かれている立場を分かってるのか・・・。
ルフィ盗賊団と認定されれば終身刑だ。
分からねえ。
だが、ただのコックにしちゃタフすぎるし、
確かに度胸がありすぎる。
フルボディに痛めつけられて、
これだけダメージを見せねえ。
分からん。
確かに、
警備装置を壊したのは痴話喧嘩の延長の結果のようだ。
どうやらゾロはかなりコイツに入れこんでいるようだ。
まあ黙ってりゃ見れねえこともねえ。
小奇麗な奴だ。
しかし、悪食だな。
変わった趣味だ。
・・・宝石の警備装置。
確かにミホークはそう言った。
「オイ、コック。
お前、あの館に宝石があるのを見た事あるか?」
スモーカーの言葉にサンジは首をかしげた。
「ねえよ。そんな大事なお宝、オレになんか見せると?」
・・・ひっかかる。
宝石の警備装置。
そう言う以上、
宝石があの館にあると言うことだ。
もし、あの館になければ、
サンジの罪はただの器物破損になる。
ということは逆にミホークがあやしい。
サンジの釈放は宝石があの館にあるかどうかにかかっている。
「あの館に宝石がなければ、お前はゾロの元に帰れる。
あれば、やはり宝石盗難容疑のままだ。
分かるか?」
サンジは黙ってうなずいた。
それからぼそりと言った。
「ゾロに聞けよ」
サンジは宝石に関しては本当に何も知らないようだ。
盗む気があるかどうかは別として。
しかし、宝石がなければ、誤逮捕・誤通報となり警察は責任を問われる。
大変な失策だ。
厄介なことになる。
警察の威信に関わる事態だ。
しかも原因は公表できない内容だ。
警察としてはサンジが容疑者なのが都合がいい。
そしてミホークにとっても。
サンジが盗賊団であるにしてもないにしても、
麦わら盗賊団はそこにいる。
オレたちのすぐ側にいて、
様子を伺っているはずだ。
今までの鮮やかな手口。
これで終わりではないはずだ。
情報を一から洗い直す必要がある。
どこにいやがる、麦わら。
存在してるんだろ、
てめえらは。
必ず捕らえてやる。
正義の名のもとに。