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サンジは膝を抱えて座っていた。
閉め切られた独房に押し込まれている。

あーあ。
もう出れねえかも。
ナミさん怒ってるかもしれねえ。
だってしょうがねえだろ。

容疑者がつかまれば、
必ず有るかどうかを確認する。
一番重要な所を壊せば、
必ず警察はそこを調べる。
ゾロから情報を引き出せねえから、
警察にやらせればいい。
まさかオレ自らやるとは思わなかったけどな。

あのイヤな目つきのフルボディにさんざん殴られた。
けどオレは何も吐く気はねえ。
それくれえの根性見せてやる。
ずっとニセルフィ盗賊団としてがんばってやるよ。
実際ゾロんとこではそうだったんだからよ。

あいつらはお宝をかっぱらってトンズラすりゃいい。
ナミさんにだって分かってるはずだ。

ミホークはオレがいらねえから逮捕させた。
・・・やっぱ、
ゾロのせいかな。
どうしてだか、
警備装置へ入る部屋の扉が開いてた。
ウソップですらそれまで見つけられなかった場所。
オレはあわてて見た。
だってコソコソ探し回ってたのが映ってるかもしれねえだろ。
そしたら、いきなりヤられてるのが映った。
オレだってあんなの見たらびっくりしちまって、
本当にお宝があるかどうかも確認できねえままにぶっ壊しちまったからな。
あの警備施設はゾロの性に合わねえから、
やっぱクロとかミホークが作らせたんだろう。

ゾロは知らねえよな。
見ねえ方がいいさ、あんなの。

・・・でもきっと、
ずうっと先になっても、
オレは覚えてるんだろうな。

なんであんなひでえ目に会ったのに、
ゾロの事なんて考えてるんだ、オレ。
アイツあんまりアホだからか。
メシの味も分からねえような奴だからか。

・・・なんで、オレ、
アイツにまたメシ作りてえなんて思ってるんだ。
・・・バカみてえだ。
ホント、バカみてえ。
 
 
 
 

不意に扉が開いて、
サンジはそちらの方を見上げた。

こいつ、なんてったっけ。
フルボディとか言ったっけ。
ちょっとサディストみてえなやつで、
オレを殴って喜んでたやつだ。

スモーカーの部下か・・・。
そういや最近の面会はあいつだったから、
つい色々べらべらしゃべったけど、
コイツ相手にしゃべる気はねえな。

「ふん、スモーカー警部には色々と話をしたらしいな。
オレには話の内容を教えてはくれないがね。
・・・警部までたぷらかしたのかね」
嫌な笑い方をしながら、
フルボディはポケットから一枚のディスクを取り出した。

「サンジ、お前は意外にバカだな。
一番壊したいものは残っていたよ。
なかなか刺激的な画像だった」
ひらひらとかざして見せる。
サンジの顔色が変わった。

「てめえ・・・」
「ああ、こっそり盗んでおいたんだ。
警察なんて真面目に勤めていても始まらないんでね。
おまえの取り調べを警部がやるようになってから暇でね。
見たらいいものが映ってたってことさ。
取り引きしねえか。
お前のふざけた行動の原因はこのディスクのせいということにしてやってもいい。
これを元にロロノア・ゾロをおどす。
お前は釈放してやってもいい。
お前がいいコにするならな」

そういいながら、
サンジの髪を柔らかく撫でた。

・・・はい?
いいコって・・・、
そっちかよ!!!

固まっているとうなじを撫でられた。

「ひゃっ」
思わずヘンな声が出た。

フルボディは手慣れた様子でサンジの服の隙間から手を入れて来た。

「離せ!!クソヤロー!!」
サンジが暴れるが、
上から押さえ付けられていては身動きがとれない。

「殴りゃしねえさ。
オレにもいい顔見せてみな」
ばたばたと手足を動かすサンジに顔を近付けてフルボディが笑った。

チクショウ!!
こんな奴、
ひと蹴りでふっとばせるってのに!!!

・・・離せ。
離せってば。
チクショウ!!
離せよ!!!!

誰か!!
ナミさん、
ルフィ、
ウソップ・・・。

誰でもいいから助けろ!!

ひっ・・・。
駄目だって・・・。
このままじゃヤられちまう。

・・・誰か!!
ゾロ・・・。
・・・ゾロ!!!
 
 
 
 
 

いきなりバキッという音がして、
サンジの上にフルボディが倒れかかってきた。

「じょうだんじゃなーーーーいわよう!!!!!!!!」
そこには見た事もないキテレツな格好をした人のようなものが居た。

サンジはぽかんとした顔でそれを見た。
 
 
 
 
 
 

「何があった!!!」
スモーカーが知らせを聞いてとんでくると、
既にかけつけた警備のものたちで独房は囲まれていた。
中にはサンジにのしかかって倒れているフルボディがいた。
その側には大男のオカマ。
コートの背には「盆暮れ」という大きな字が・・・。

「貴様か、ボン・クレー」
「なによう。スモーカーじゃないの。
相変わらずスカしてあちしに張り合って正義なんて背中に書いてるのね」
「・・・何故ここに・・・」
「アンタがもたもたしてるからあちしが応援に来たのよう。
それより、このコ大丈夫?
ヤられかけだわよう」

スモーカーはやっとサンジの様子に気づいた。
服はあちこち破れ、
ほとんどハダカである。
スモーカーの様子を見ても何をしようとしていたかは明らかだ。
「強姦未遂の現行犯だ。フルボディ、逮捕する」

それからふと落ちている不審なディスクに目を止めた。
拾い上げると、それまでうなだれていたサンジが物凄い勢いで飛びかかって来た。
「よこせ!!!!」
しかし、スモーカーの相手になるものではない。

泣きそうな顔をしてそれを奪おうとするサンジの様子を見て、
スモーカーにもそれが原因となったものだと気づいた。
恐らくあの「証言」を裏付ける「事実」が映っている。
しかし、これは「証拠」だ。
それも盗難事件とも関連した重要な証拠だ。

「チクショウ!!!!
それをよこせ!!!」
暴れるサンジが取り押さえられる。

「お前の話が事実なら、お前は釈放される。
心配するな」

スモーカーの言葉をサンジが遮った。
「そこに倒れてる奴が仲間なんだろ!!!
信用できるわけねえ!!!!
あんたを信用したオレがバカだったぜ!!!!
それを壊せよ!!!!」

「どういうことなのよう・・・・。
よく分からないからあちし踊る事にするわ」

「やめろ!!!!!
こいつらが倒れるだろ!!」
スモーカーが怒鳴った。

「なんでよう。
あちしが踊るとみんな喜びのあまり倒れるのよう。
ここの空気はギスギスしてるから踊ってなごやかにしようとしてるのよう」
それから小声でスモーカーに言った。
とにかくそのコを大人しくさせるしかないのよう。

スモーカーはしぶしぶ頷いた。
確かにその通りなのだ。

「いくわよう!!!!!!
 アン・ドウ・トロワ!!!!!
オラァァァァ!!!!」

ボン・クレーが激しく踊り始め、
見ていたものは気分が悪くなって次々に倒れ始めた。

サンジもつい目をとられた。
恐ろしいものを見ると、
目を離せなくなるものである。
・・・見てはいけないと思いつつ、見た。
目の前を異形のプリマが踊りまくる。
無気味だ・・・。
無気味なのに目がそらせない。
見れば見る程気分が悪くなって来た。

バタリ。
サンジは力なく床に倒れた。
 
 
 
 

「・・・あら、皆倒れたのねい。
まだまだ踊りたいのに・・・・」
嬉しそうなボン・クレーを忌々しそうにスモーカーは見た。
ボン・クレーの特殊な能力である。
踊るだけで敵が倒せるのだ。

それから問題のディスクに目を落とした。
見る事に罪悪感がないことはない。
だが、正義のためだ。
事件解決のためだ。
 

「金髪くんがあんなに嫌がってたのに見るのねい。
アンタってそこんとこ冷血よねい」
そういいつつボン・クレーは目を輝かせている。

・・・こいつと二人で見るのか。
スモーカーは実に嫌な感じがした。

事件解決のためだ。
ぐだぐだ言う暇があれば行動だ。

早期発見。
早期解決。

オレのモットーだ!!
 
 
 
 
 
 


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