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エースは所せましと並べられた皿を次々と平らげていた。
釈放されたサンジはあっという間にこれだけの品を作ってみせた。
ここはエースの館だ。

サンジに面会に行ったら、
引き取り人がいればもう釈放できるという。
ゾロは時々サンジに面会に来ていたらしい。
てことはゾロが引き取るはずだが・・・。
だがサンジはゾロでなく自分に「ここから出してくれ」と言った。
良くわからねえが、
まあそう言われたら、
そうすりゃいい。
どうして釈放されたかは良く分からんが、
一応とりあえずの疑惑が晴れたと警察では判断したってことだろう。
「んで、コレからどうする気だよ?」

サンジはテーブルの向かいに座ってタバコをくゆらしている。
「・・・・」
オレはゾロのコックだし・・・。
けどイロイロあるしな。
何でもゾロがオールブルーを警察に預けたらしい。
だから、オレは釈放されるんだと警備しているヤツがいっていた。
警察なら・・・、
ナミさんが情報を掴める。
あとはナミさんがやってくれる。
組織は不透明なものがない。
必ず文書に残るし・・・。
ナミさんは裏のルートから道を辿って行く。
警備システム、警備状態、どこの配置が弱いか、
どこの会社を使っているか、設備的弱点に人的弱点。
ナミさんはそこいらを見抜くのが上手い。
オレに出来ることはもうねえと言っていい。
釈放されたんなら、下手に動かねえ方がいいし。

「オレの所に来いよ」
エースの言葉にサンジはやはり返事を返さない。
・・・どうせ、ゾロのところはいつかはとんずらしちまうんだ。
このままバックレちまった方がいい。
・・・アイツはオレのことが嫌いなんだ。
だから、あんな事をする。

メシなら誰でも作れるよな。
アイツ金持ちだし、
ああ見えてもオトコマエだから、
アルビダお姉様みたいな美人も手に入るしよ・・・。
いいよな、綺麗なお姉様が手に入って・・・。
あーあ・・・、
気が滅入ってきたな。
よし、
ここは!!!

急に立ち上がったサンジをエースは怪訝な瞳で見た。
「オイ、どうした?」
「レッツ、ナンパだ!!!!」
サンジの言葉にエースは溜め息をついた。

「お前、オレが保証人になったってことがどういう事か分かってるのか?」
「へ?」
「お前をサツに突き戻すのはオレ次第ってコトだよ。
勿論、オレの元からお前が逃げ出したりしたら、
このエースの沽券にかかわる事態だから、
そんなことはさせねえ。
分かるか??」
サンジの驚く顔を見て、
エースはちょっとだけゾロが気の毒になった。

おそらくサンジのために宝石を警察に出したのだ。
あの自分の意を曲げることが嫌いなゾロが。
なのに肝心のサンジはこれだ。
まったく分かっちゃいねえ。
ま、オレにはそっちの方が都合がいいけどな。
何も下心がねえなら、
面倒な身許引受なんざするわけねえ。
「で、ゾロにはもうヤられたのか?」

はい?
サンジは自分の耳を疑った。
あの、今、なんて・・・。

「悪い、悪い、オレとゾロって結構好み似てんだよ。
意味、分かるだろ?」

「ななな、なんの事でしょうか?」
急にそわそわしはじめたサンジにエースは興味深そうに身を乗り出した。
勿論、食うのは止めていない。

「で、合意の上で?
それとも不本意?・・・」
 
 
 
 
 
 
 

「ぐだぐだ言ってるんじゃねえ。
帰るぞ、このアホコックが!!!!」
声の方を振り向くと、
そこには恐ろしく不機嫌そうなゾロが仁王立ちでいた。

サンジは弾かれたように立ち上がった。
・・・ゾロ・・・、
久しぶりに見たけど、
目がすわってる。
なんか身体に悪い菌でも回ってるんじゃねえの・・・・。
すげえ機嫌悪そうだし・・・。
 
 
 

「ゾロ。
この際だから、サンジにはうちに来てもらおうと思ってるんだが」
エースの言葉にゾロはぎらりとした目を向けた。
「今、サンジには言ってたとこだけど」
口調は軽いが、
真剣な目つきでエースもゾロを睨み返した。
空気が張り詰め、
緊迫した雰囲気が流れた。

・・・逃げよう。
とりあえず、
逃げよう。

サンジはじりじりと下がり始めた。

「うるせえ、このアホはオレのもんだ」
「オレについて来たぜ」
「だから、今から引き取る」
ゾロとエースは言い争いを続けている。
今だ!!
サンジは隙をついてダッシュで部屋から逃げ出した。
 
 
 

「あっ!!!」
ゾロとエースは驚きの声を上げた。
逃げやがった!!!
逃げるか、普通!!??
 
 
 
 

反応したのは立っていたゾロが早かった。
物凄いスピードでサンジの後を追いかけていく。
エースは追いかけかけて、止めた。
やれやれ・・・。
深追いするのは趣味じゃねえ。
けど・・・苦労するわな・・・あんなの相手じゃな。
だが、ああいうタイプにハマったら抜けられねえだろな。
ゾロと全面対決になるのはどうだかな・・・。
バカでかわいいんだが、
・・・ちっとバカすぎねえか・・・。

庭の方で、
バキバキという音がしている。
人んちでも暴れるのかよ。
・・・イガラムが怒るぞ・・・。

「ぎゃあああああ!!!!」
サンジのわめき声が聞こえてくる。
ゾロの奴、つかまえたか・・・・。

やがて静けさが戻った。
エースはメシを全部平らげ、
ゆっくり茶をすすった。

あいつら・・・行っちまったようだ。
サンジにちょっかいかけるのは楽しいんだが。
ゾロ、切れかけだったよな。
まったく堅物野郎だからな。
そのくせ、自分がどんだけ入れこんでるかもよく分かってねえんだよな。

・・・また、遊んでやろう。
ま、オレは警察認定の「身許引受人」だからな。
いつでもサンジに会っていいってわけだ。
ゾロには悪いが、そういうことだし、
あわよくば漁夫の利って事で。
 
 
 
 
 


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