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サンジはゾロの怪力でずるずると引きずられていた。
・・・チクショウ!!!
なんてアホ力だ・・・。
クソ痛えじゃねえか!!!
サンジは再び暴れようとしはじめ、
手足をバタバタ動かした。

「オイ、暴れるんならココでヤっちまってもいいんだぜ」
ゾロの言葉にサンジは固まった。

「ヤ・・・・ヤるって何を?
はははははは」
ヤる。
遣る?
犯る?
ま・・・まさか。
ひぃぃぃ、
く・・・食われる!!!
食われちまう!!!
オレさまの純潔がァ!!!
いや、もう汚されてっか・・・。
だからってスキにしていい訳じゃねえぞ。

汗がだらだら流れていく。

「オレはてめえのコックだろ!!!
メシ食いてえか?
オレ様のメシ食いてえだろ?
っちゅうか、
食いてえはずだ!!!
そうだろ・・・。
メシだ!!!
メシを作ってやる!!!
いや作らせろ!!!
早くメシにしよう!!
な、そうしようぜ、ゾロ!!」

「・・・・」
ゾロはべらべらと喋り続けるコックを不思議なものを見るような目つきで見ている。

「約束だ!!!
オレはてめえのコックだ!!
オレの作ったものはいくらでも食わしてやるが、
オレを食っていいのは、
オレがいいと言った時だけだ!!!
オレが譲歩するのは、
てめえに負けたわけじゃなくて・・・。
オレがてめえより優れて心根が美しいからであって・・・。
てめえのようなバカの虚栄心を満たしてやるオレ様って素晴らしいだろ!!
いや・・・、
そういうんじゃなくてだな・・・。」
動転したサンジは、
ついとんでもないことを口走った。
絶対禁止のはずがいつの間にか許可制になっているのだ。

しかし、それでもゾロの思惑とは微妙に違っていた。
・・・好きな時にヤれねえのかよ。
・・・そいつは困るな。
・・・けど連れて帰らんことにはどうにもならんし。
ゾロは考えた。
一応考えた。
だが、よい策が浮かぶわけもない。
「分かった。
約束だ・・・」
ゾロはとりあえずサンジが折れそうにないので、
同意した。
暴れると帰れねえし・・・。
エースんとこには置いとけねえ。
エースはつまみ食いの名人として知らぬものはない存在だ。
昔、エースに女を食われたことがある。
そん時はどってことなかった。
しょうがねえな、と思い、その女ともそれっきりだった。

「・・・てめえが、嫌なら、しねえ」
今はな。
心の中でつけ加えたが、
とりあえずは黙っていた。

「えっ・・・ホントか?
そっか・・・・。
へへへ・・・。
だったら・・・、
てめえにクソうめえメシ食わせてやるよ」
だったら元通りじゃねえか。
サンジは嬉しそうに笑った。
あー、オレの考え過ぎだったのかな。
ゾロはオレのメシが食えりゃそれで満足だろうからな。
・・・・だったら、
早く帰りてえよなあ。
ヨサクやジョニーはチョッパーやウソップは元気だろうな・・・。

ゾロは急に機嫌のよくなったサンジをじっと見た。
あまりに嬉しそうな様子を見ていると、
ちっとガマンしてもいいかという気になった。

目の前でニコニコしているサンジを見ていると、
最近のイライラが嘘のように感じた。
ムカつきとか、
あせりだとか、
そういう気持ちがなくなっていく。
 
 
 
 
 

サンジは自分をぼーっと見ているゾロに気づいた。
「オイ、帰らねえのかよ?」

車に乗り込むゾロについてサンジも隣に乗った。
ゾロの館に帰れるのがなんだか嬉しかった。
さっきはびっくりしたけど、
またゾロにメシつくってやれるし。
「へへへへ。
てめえさっきオレ様に見とれてただろ。
あまりに魅力的だからってその気になっても知らねえぜ。
いや、もうその気になってるか?」

サンジはべらべら喋りながら、
ゾロの横顔を見た。
ちょっと目つきが鋭くなって、
一瞬、不覚にもカッコイイかも、とか思ってしまった。

「・・・かもな」
ゾロのぼそりとした返事に我に返る。

「だろ!!!
そうだよな!!!」
あわてて取り繕い、
何の話をしていたか、
急いで思い出す。
あり?
・・・今、オレなんて言ったっけ。

「その気になってる?」
思わず聞き返す。

「・・・多分」
・・・ゾロの答えにサンジは滝のように汗が流れるのを感じた。
・・・たたた、多分て。
何でゾロがその気にに?
いや、そもそも「その気」って、「どの気」だ?
ヤる気とか・・・そういうやつか・・・・。
・・・ははは、まさかな。
きっとゾロはカンチガイしているんだ。
脳味噌まで筋肉が詰まっているような奴だからな。
「その気」なんて微妙な言葉、ゾロにはムズカしすぎたんだな。
そうだろ、そうに違いねえ。
ゾロには理解不能なムズカシイ言葉を使ったオレが悪かった。

「その気って意味分かるのかよ!!」
「・・・さあ?」
やっぱり、知らねえのに答えやがった。
これだからアホは困るな。
まあ、オレは心が広いから相手できるけどな、
オロされてもしょうがねえよな。

「つまり、オレ様は最高だと思ってるってことだ。
つまり、てめえは、オレのメシが食いてえわけだ。
それは、つまり・・・。
オレの味に虜になってるってことだよな!!!
食いてえんだろ。」
よせばいいのに、サンジはつい続けてしまう。

ゾロは考えた。
メシか・・・。
確かに食いてえな。
「オレの味」?
・・・てめえ自身のことか。
まあ、それも食いてえな。
「ああ」
 
 
 
 
 

「なら好きなだけ食わせてやっからよ」
言いながら、サンジはちょっと安心していた。
やっぱりゾロにはメシだ。
筋肉優先だからな。
何にも考えていねえ。
やっぱり料理の味のことだったか。
それは当然だ。
オレの料理はちょっとしたもんだからな。

「なら早く帰ろうぜ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 


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